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DATE/ 2016.01.29

上司に「ご苦労さま」は失礼?気をつけたい敬語の使い方

 「お疲れさまです」さわやかに挨拶すると、笑顔が返ってくるのかと思いきや、「疲れてないよ」というしかめ面。こんな経験はないだろうか。

 働く上で切っても切れないのが言葉遣いの問題。敬語は特に難しい。相手に不快感を与えないよう気を付けて使っていても完璧に使いこなすのはなかなか難しい問題である。

 「お疲れさま」の使用について明確な答えは出ていないが、多くの辞書に「ご苦労さま」は目上に使うべきではないとする一方で、「お疲れさま」は使用可だと書いてある。

 では、本当は使うべきではないとされる根拠はどこにあるのか。それは、昔、殿のために働く者はあっても、決して下のもののために殿が疲れるようなことはない、というところから、現代にいたるまでこれといったねぎらいの言葉ができなかったことにあるらしい。

 昔とは違って、今は格式を重んじる人が減った。先生と生徒、上司と部下の距離感は近くなり、ある意味で希薄にもなった。言葉は均一化され、微妙なニュアンスの違いも平たくなっていった。それは悪いことではない。しかしまだしっかりと区分けされていたころの人間にとっては、違和感をおぼえることがあるようだ。今回は、そんな挨拶の言葉についておさらいしておきたい。

気をつけたい言葉

・お疲れさま

 この言葉を使っていいかどうかについては、会社の方針、また上司による。ただし、取引先などでは使わない方が良いだろう。「お疲れさま」に代わる言葉がないということで、こういった使い方をおすすめしたい。

 いつもの挨拶……「おはようございます」
 自分が帰るとき……「お先に失礼いたします」
 上司が帰ってきたとき……「お帰りなさいませ」

・了解しました

 「了解です」「了解しました」は、「かしこまりました」「承知しました」に置き換えることができる。

・すみません

 目上の人に対しては「申し訳ありません」が適切。また、話しかけるときには「恐れ入ります」。

・こんにちは、こんばんは

 実は敬語としてふさわしいものではない。とはいえ、「おはようございます」をずっと使い続けるわけにもいかないときは、「どうも」が良いとされるようだ。しかし、省略語のため印象が良くない。「おはようございます」は、もともとは「朝」という意味でなく、「お早いお着きですね」という意味を含むところから、統一して使っても良いかもしれない。

気にしすぎてはいけない

 挨拶言葉のマナーは受け取り方の問題もあり、本当に難しい。上下関係から「すみません」と言ってはいけないからといって、「申し訳ございません」を心もなく連呼していては、むしろ口先だけと伝わる可能性もある。特に大事なことは、言葉のルールを気にしすぎることなく、相手の受け取り方に留意し、誠意が伝わりやすくすることをまず心がけたい。
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