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DATE/ 2016.04.04

イチローも使っている?仕事に役立つ「陰陽論」の考え方

 ヨーロッパでは今、東洋の「陰陽論」という考え方に注目が集まっているそうです。いったい、なぜでしょうか。

 「陰陽論」とは、あらゆるものは「陰と陽」、つまり太陽のように輝きを放ち外に向かって発展させていくものと、日向のように陰とはなるけれども内に向かって充実させていくものから成り立っているということ。老荘思想研究者:田口佳史氏によれば、両者は、対立する存在ではなく、互いを補いながら同時に一つの物事をかたちつくっているという考え方なのです。

 これは、西田幾多郎が唱えた「絶対矛盾の自己同一」という考え方にも通じるようです。う~ん、四字熟語が2つもあって難しいそうですね。そこで、田口氏が、身近なものに例えて分かりやすく教えてくれました。

 皆さん、アサヒビールの「スーパードライ」をご存知ですよね。あのキャッチコピーは、「コクもあるけどキレもある」です。どちらが欠けてもビールはおいしくない。どちらも同じくらい大事、ということです。

「コストダウンかサービスアップか」

 この考え方をビジネスに当てはめると、「コストダウンかサービスアップか」という問題を上げることができます。この二つは、二者択一すべきではなく、両立させるべきだと田口氏は言います。

 でも、果たしてそんなことができるのでしょうか。

 ありました、実現させているものが!それは、宅配便会社の「時間指定」というサービスです。「時間指定」は、宅配便会社から見れば何往復もかかっていた人件費やガソリン代が軽減されるため、大変なコストダウンになります。一方、お客さんから見れば、家にいるときに届けてくれるということで「コストダウンとサービスアップの両方」を実現しているサービスになっているわけです。

イチロー選手の考え方にも影響を与えている

 この考え方、実はすでにアメリカでも使われていました。今年42歳になるイチロー選手は、かつてメジャーリーグでのインタビューで「あなたはどうして、第一線の大リーガーとしてそこまで続けてこられたのですか?」という質問を受けたとき、「それはスランプがあったからです」と答えたそうです。

 イエスかノーか、右か左かの二元論を提示する西洋の考え方は今、政治的にも経済的にも行き詰まっています。だからこそ、両者を補い合う「陰陽論」という東洋の考え方が、今、必要とされているのかもしれません。

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