社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
うどんはダメ?なぜ年越しは「そば」なのか
年越しといえば、「そば」。当たり前のように口にする私たちですが、その理由について深く考えてみたことはありませんか。「行事だから」「決まり事だからなんとなく」やっているその行為は意外な始まり方をしていることがあります。今回は「そば」のしきたりについて、調べていきたいと思います。
さて、では年を越すのにそばを食べるようになったのはなぜなのか。これについては、歴史が深いだけに諸説あるようです。新島繁氏は『蕎麦の辞典』で6つの説について解説しています。
1:鎌倉時代、博多の承天寺にて年を越せない貧しい町人に「世直しそば」としてそば餅を振る舞い、翌年から運が向いてきたので毎年「運そば」また「福そば」として食べる習慣ができたという説
2:室町時代に関東長者の一人である増渕民部が毎年大晦日に蕎麦はめでたいものだという歌を歌い、そばがきを食べたのがはじまりとする説
3:そば切りがよくのびるので、延命長寿を願うために。一方でそばが切れやすいため、それまでの労苦をばっさり切り捨てる、という意味をこめてという説
4:金銀細工師から散らかった金粉を集めるのにそば粉を使うので、金を集めるという縁起から始まった説
5 人見必大によって江戸時代に書かれた書物『本朝食鑑』に、「気を流し腸を緩くし、胃腸によく効く」とあり、体内をきれいにするものだということで毎年食べられるようになったという効能説
6:植物のそばは雨風に当たっても、翌日陽が差せばおきあがる、というところから、来年こそは、と奮起を願ってのこと
こんなにも由来があるのですね。「細く長く」はよく言われていることですが、切れやすいから悪い物を取り去る、という見方もたしかにできますし、健康に良いからというのもうなずけます。
それなら、「なおのこと、うどんでもいいのでは」「そばの方が切れやすいのになぜ?」という疑問がわきます。そこには、前述した「労苦を断ち切る」という意味でとらえることができるから、と答えられると思います。
『日本人の「食」 その知恵としきたり』(永山久夫著、海流社)では、商家に毎月末にそばを食べる「三十日そば」という風習があったため、大晦日にそばを食べるようになったとあります。
ということで、やっぱり年越しには、うどんよりそばのほうが合っているのかもしれませんね。
由来がいっぱい
いわゆる今の形の「そば」の原型になったものができたのは、江戸時代のことですが、蕎麦そのものの歴史は奈良時代にまでさかのぼります。定かではありませんが、もっと昔からあったという説もあります。もっとも、このころは麺ではなく、「蕎麦(そば)を原料とした食べ物」ということだったのだそうです。さて、では年を越すのにそばを食べるようになったのはなぜなのか。これについては、歴史が深いだけに諸説あるようです。新島繁氏は『蕎麦の辞典』で6つの説について解説しています。
1:鎌倉時代、博多の承天寺にて年を越せない貧しい町人に「世直しそば」としてそば餅を振る舞い、翌年から運が向いてきたので毎年「運そば」また「福そば」として食べる習慣ができたという説
2:室町時代に関東長者の一人である増渕民部が毎年大晦日に蕎麦はめでたいものだという歌を歌い、そばがきを食べたのがはじまりとする説
3:そば切りがよくのびるので、延命長寿を願うために。一方でそばが切れやすいため、それまでの労苦をばっさり切り捨てる、という意味をこめてという説
4:金銀細工師から散らかった金粉を集めるのにそば粉を使うので、金を集めるという縁起から始まった説
5 人見必大によって江戸時代に書かれた書物『本朝食鑑』に、「気を流し腸を緩くし、胃腸によく効く」とあり、体内をきれいにするものだということで毎年食べられるようになったという効能説
6:植物のそばは雨風に当たっても、翌日陽が差せばおきあがる、というところから、来年こそは、と奮起を願ってのこと
こんなにも由来があるのですね。「細く長く」はよく言われていることですが、切れやすいから悪い物を取り去る、という見方もたしかにできますし、健康に良いからというのもうなずけます。
なぜうどんではなく、そばなのか
さて、「そばが長くのびるなら、うどんでもいいのでは」という疑問を持たれる方もいるのではないかと思います。新島氏によれば、縁起をかつぐ地方では「太く長く」ということで、「運どん」(うどん)を食べることもあるといいます。それなら、「なおのこと、うどんでもいいのでは」「そばの方が切れやすいのになぜ?」という疑問がわきます。そこには、前述した「労苦を断ち切る」という意味でとらえることができるから、と答えられると思います。
『日本人の「食」 その知恵としきたり』(永山久夫著、海流社)では、商家に毎月末にそばを食べる「三十日そば」という風習があったため、大晦日にそばを食べるようになったとあります。
ということで、やっぱり年越しには、うどんよりそばのほうが合っているのかもしれませんね。
そばを食べきってから年を迎えよう
こうして、年越しそばの由来を見てみると実にさまざまな説がありますね。そして、いずれも納得いく理由ばかりで、うなづいてしまいます。いずれにしても、年を越す前に食べきることが大事だといいます。おいしくいただいて、良い年を迎えましょう。
<参考文献>
・『蕎麦の辞典』(新島繁著、講談社学術文庫)
・『<日本人の「食」 その知恵としきたり』(永山久夫著、海流社)
・『蕎麦の辞典』(新島繁著、講談社学術文庫)
・『<日本人の「食」 その知恵としきたり』(永山久夫著、海流社)
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
自分を豊かにする“教養の自己投資”始めてみませんか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
「私をお母さんと呼ばないで」…突然訪れた逆境の意味
逆境に対峙する哲学(2)運命・世界・他者
西洋には逆境は神が与える運命という考え方があり、その運命をいかに克服するかを考えたのがストア派だった。しかし、神道が説くように「ヒトもカミ」であれば、それに気づく瞬間は逆境の中にこそ存在するはずである。「他者で...
収録日:2025/07/24
追加日:2025/12/20
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
2025年8月、米露、米ウクライナ、EUの首脳会談が相次いで実現した。その成果だが、中でもロシアにとって大成功と呼べるものになった。ディール至上主義のトランプ政権を手玉に取ったロシアが狙う「ベルト要塞」とは何か。事実上...
収録日:2025/09/24
追加日:2025/12/21
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
渡部昇一氏には、若き頃に留学したドイツでの体験を記した『ドイツ留学記(上・下)』(講談社現代新書)という名著がある。1955年(昭和30年)から3年間、ドイツに留学した渡部昇一氏が、その留学で身近に接したヨーロッパ文明...
収録日:2021/08/06
追加日:2021/10/23
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣と羽柴…二つの名前で語られる秀吉と秀長だが、その違いは何なのか。また、これまで秀長には秀吉の「補佐役」というイメージがあったが、史実ではどうなのか。実はこれまで伝えられてきた羽柴(豊臣)兄弟のエピソードにはか...
収録日:2025/10/20
追加日:2025/12/18
ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想
平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由
かのジャン=ジャック・ルソーも平和問題を考えた一人である。個人の「自由意志」を尊重するルソーは、市民が直接参加して自分の意思を反映できる小さな単位を基本としつつ、国家間紛争を解決する手段を考えた。「自由の追求」に...
収録日:2025/08/02
追加日:2025/12/16


