インテリジェンス・ヒストリー入門
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ケンブリッジ大学はソ連のスパイを養成していた
インテリジェンス・ヒストリー入門(11)スパイの養成
中西輝政(京都大学名誉教授/歴史学者/国際政治学者)
冷戦期のケンブリッジ大学は、ソ連のスパイを養成する大学だった。歴史学者で京都大学名誉教授の中西輝政氏が、自らの留学経験を振り返り、日本人の若い公務員留学生に警鐘を鳴らす。たとえアメリカであっても、インテリジェンスの世界に同盟国は存在し得ないのだ。(全11話中第11話)
時間:9分51秒
収録日:2017年11月14日
追加日:2018年7月1日
カテゴリー:
≪全文≫

●ケンブリッジ大学は知る人ぞ知るスパイ養成大学だ


質問 イギリスのインテリジェンスについて、お話ください。

中西 イギリスの場合、一番典型的なのは、MI5やMI6などの情報部です。情報部員がソ連の実はスパイだったということも多いです。例えば、キム・フィルビーがそうです。

 日本にとっても教訓的なことですが、非常に重要なことは、ケンブリッジ大学は知る人ぞ知るスパイ養成大学だということです。私はたまたま京大の大学院からケンブリッジ大学に留学しました。

 ケンブリッジ大学はMI5もMI6も直結していますし、私のついた国際政治学の指導教官ハリー・ヒンズリー教授は、もともとはイギリス情報部の本家本元MI6で働いていた人です。戦時中、戦時動員で大学院生のままイギリス情報部に入り、ドイツ語がよくできるので、ドイツの暗号解読部局に所属しました。そして大活躍をして、大西洋を越えてくるアメリカの輸送船をドイツのUボートから守り切ったのです。最近になって、こうしたことが分かりました。

 ヒンズリー教授は、ドイツ海軍が飛ばすUボート向けの暗号を全て解読する、系統的な手段を開発したのです。戦後は、アメリカ人ではないのにハリー・トルーマン大統領から国家最高勲章をもらっています。若干30歳ぐらいでの大活躍でしたから、大変な功績でした。彼が亡くなったのは98年ですが、99年頃になって彼の一番のお弟子さんが、ケンブリッジ大学の同窓会の会誌にこうしたことを発表するのです。われわれみんな腰を抜かしてびっくりしました。何十年も付き合いがあったのに、ヒンズリー教授自身は一言もしゃべらなかったのです。


●ケンブリッジには、ソ連のリクルーターがいた


中西 あの時代のケンブリッジには、そういう人がたくさんいました。ヒンズリー教授はいわゆるプロのスパイではありませんが、本職のスパイになったケンブリッジ出身のキム・フィルビーやドナルド・マクリーン、いわゆるケンブリッジファイブという5人組もいます。彼らは大学時代にリクルートされています。ケンブリッジには、ソ連のリクルーターがいるのです。

 卒業生が将来のエリートになるという有名大学には、必ず敵性国家のリクルーターがいます。イギリス人でその国の有名教授が、リクルーターなのです。彼らを一手に差配していたのが、ロンドンにいたオットー・カッツというコミンテルンの大立者です...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
遊女の実像…「苦界?公界?」江戸時代の吉原遊郭の真実
堀口茉純
「武士の誕生」の真実(1)10世紀の東アジア情勢と「王朝国家」
「王朝国家」と「武士」が誕生した理由は大唐帝国の解体
関幸彦
ローマ史と江戸史で読み解く国家の盛衰(1)父祖の遺風
なぜ「父祖の遺風」がローマと江戸に共通する価値観なのか
本村凌二
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
歴史の探り方、活かし方(6)江戸時代の藩校レベルを分析
史料読解法…江戸時代の「全国の藩校ランキング」を探る
中村彰彦
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通