インテリジェンス・ヒストリー入門
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ケンブリッジ大学はソ連のスパイを養成していた
インテリジェンス・ヒストリー入門(11)スパイの養成
中西輝政(京都大学名誉教授/歴史学者/国際政治学者)
冷戦期のケンブリッジ大学は、ソ連のスパイを養成する大学だった。歴史学者で京都大学名誉教授の中西輝政氏が、自らの留学経験を振り返り、日本人の若い公務員留学生に警鐘を鳴らす。たとえアメリカであっても、インテリジェンスの世界に同盟国は存在し得ないのだ。(全11話中第11話)
時間:9分51秒
収録日:2017年11月14日
追加日:2018年7月1日
カテゴリー:
≪全文≫

●ケンブリッジ大学は知る人ぞ知るスパイ養成大学だ


質問 イギリスのインテリジェンスについて、お話ください。

中西 イギリスの場合、一番典型的なのは、MI5やMI6などの情報部です。情報部員がソ連の実はスパイだったということも多いです。例えば、キム・フィルビーがそうです。

 日本にとっても教訓的なことですが、非常に重要なことは、ケンブリッジ大学は知る人ぞ知るスパイ養成大学だということです。私はたまたま京大の大学院からケンブリッジ大学に留学しました。

 ケンブリッジ大学はMI5もMI6も直結していますし、私のついた国際政治学の指導教官ハリー・ヒンズリー教授は、もともとはイギリス情報部の本家本元MI6で働いていた人です。戦時中、戦時動員で大学院生のままイギリス情報部に入り、ドイツ語がよくできるので、ドイツの暗号解読部局に所属しました。そして大活躍をして、大西洋を越えてくるアメリカの輸送船をドイツのUボートから守り切ったのです。最近になって、こうしたことが分かりました。

 ヒンズリー教授は、ドイツ海軍が飛ばすUボート向けの暗号を全て解読する、系統的な手段を開発したのです。戦後は、アメリカ人ではないのにハリー・トルーマン大統領から国家最高勲章をもらっています。若干30歳ぐらいでの大活躍でしたから、大変な功績でした。彼が亡くなったのは98年ですが、99年頃になって彼の一番のお弟子さんが、ケンブリッジ大学の同窓会の会誌にこうしたことを発表するのです。われわれみんな腰を抜かしてびっくりしました。何十年も付き合いがあったのに、ヒンズリー教授自身は一言もしゃべらなかったのです。


●ケンブリッジには、ソ連のリクルーターがいた


中西 あの時代のケンブリッジには、そういう人がたくさんいました。ヒンズリー教授はいわゆるプロのスパイではありませんが、本職のスパイになったケンブリッジ出身のキム・フィルビーやドナルド・マクリーン、いわゆるケンブリッジファイブという5人組もいます。彼らは大学時代にリクルートされています。ケンブリッジには、ソ連のリクルーターがいるのです。

 卒業生が将来のエリートになるという有名大学には、必ず敵性国家のリクルーターがいます。イギリス人でその国の有名教授が、リクルーターなのです。彼らを一手に差配していたのが、ロンドンにいたオットー・カッツというコミンテルンの大立者です...

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