インテリジェンス・ヒストリー入門
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
杉原千畝はものすごいインテリジェンスオフィサーだった
インテリジェンス・ヒストリー入門(10)情報官・杉原千畝
中西輝政(京都大学名誉教授/歴史学者/国際政治学者)
かつての外務省には、情報という仕事に驚くほど熱心に取り組んだ人びとがいた。杉原千畝は命のビザで有名だが、むしろ彼は戦前の優れたインテリジェンスオフィサーだった。歴史学者で京都大学名誉教授の中西輝政氏が、情報官・杉原千畝について解説する。(全11話中第10話)
時間:7分23秒
収録日:2017年11月14日
追加日:2018年6月27日
カテゴリー:
≪全文≫

●地域に全身全霊をかけてコミットする外交官が減った


質問 今と昔で日本の外交官、大使はどう変わったのでしょうか?

中西 今では大使というと、事務処理係の責任者にすぎません。しかし、戦前の外務省には赴任国に5年も6年もいて、現地の言葉で人びとと付き合っているような人がいました。いわゆる口頭試験を受けて外交官になったいわゆる「科挙組」とは違う、叩き上げの外交官です。

 今では試験制度も変わりましたし、そうした人は減りました。地域専門官や、昔で言う中級試験の人、あるいは語学研修から上がった人でも、国家公務員Ⅰ種を通過した人と変わりません。みんな、どこかサラリーマンの事務処理係みたいになってしまっていて、地域のことに全身全霊をかけてコミットしている人は減りました。日本の外務省はそうした意味で、戦前の方がやはり力があったでしょう。こうした人材が日本を大きく支えていたのだと思います。


●杉原千畝はものすごい情報官だった


質問 かつての外務省には、インテリジェンスがたくさんいたのですね。

中西 非常にレベルの高い人がいました。もちろん陸軍にもいたでしょう。彼らの情報という仕事にかける熱心な取り組みには、驚かされます。

 例えば、杉原千畝はもともとハルビン学院出身の語学外交官です。彼が偉いのは、命のビザといったことだけではありません。あれは一時の話です。むしろ本当に見るべきところは、彼がものすごい情報官だったということです。情報のインテリジェンスオフィサーです。そもそも終戦で日本に帰ってくる時に、ソ連を通って帰ってくるでしょうか。彼だけ遅れて、単身で大陸を横断しているのですが、普通はそんなことはできるはずがありません。戦前に満州国の外交官として、東支鉄道の買収などでソ連外務省と丁々発止にわたりあい、関東軍の情報部でも機密情報の面で軍と協力していました。

 彼はコーカサスの分離独立運動にまで関わっていたのです。ソ連の人民の敵です。そんな人が、いくら敗戦国になったからといって、ソ連を通過して無事に日本に帰ってこられるはずはありません。ところが正式のビザで通ってくるわけですから、不思議です。

 しかも戦後、あれほど早い時期にモスクワに何カ月も滞在していますが、もし札付きの戦犯だったら普通、商用ビザは下りません。しかし戦犯にもならないし、ソ連代表部もGHQを通じて逮...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
中国史概説~『皇帝たちの中国』を読む(1)なぜ「中国史はつまらない」のか?
驚きの中国史~「中国史はつまらない」という通説の裏の波乱の真実
宮脇淳子
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
昭和の名将・樋口季一郎…キスカ・占守島編(1)キスカ島撤退作戦
5200人の将兵を救え…米軍も称賛した「キスカ島撤退作戦」の奇跡
門田隆将
イスラエルの歴史、民族の離散と迫害(1)前編
古代イスラエルの歴史…メサイア信仰とユダヤ人の離散
島田晴雄
戦史に見る意思決定プロセス~日本海軍の決断(1)日本海海戦・東郷平八郎
なぜ東郷平八郎はバルチック艦隊を対馬で迎え撃ったのか?
山下万喜
「三国志」の世界とその魅力(1)二つの三国志
三国志の舞台、三国時代はいつの・どんな時代だったのか?
渡邉義浩

人気の講義ランキングTOP10
日本の財政の真実を検証する(2)なぜ財政危機は起きていないか
なぜ財政危機は起きていないのか…国債の金利のトリックを読み解く
宮本弘曉
AI大格差~最新研究による仕事と給料の未来(1)最新研究から見えてくる未来像
AI大格差…なぜ日本の雇用環境では「ショックが大きい」のか?
宮本弘曉
中国史概説~『皇帝たちの中国』を読む(1)なぜ「中国史はつまらない」のか?
驚きの中国史~「中国史はつまらない」という通説の裏の波乱の真実
宮脇淳子
老子の神髄(3)アンチフラジャイルと上善如水
アンチフラジャイル…老子の説く「道」とは「肝っ玉母さん」である
田口佳史
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か(4)情報と教養の違い
教養がおろそかな人の限界…「教養は頭の中に、情報は頭の外に」
橋爪大三郎
概説・縄文時代~その最新常識(12)多数合葬・複葬墓の意義
多数合葬・複葬墓は縄文時代のモニュメントだった!?
山田康弘
ラカンの精神分析~心の謎を解き明かす(7)ベイトソンの学習理論とコンテクスト
ダブルバインドとは?ベイトソンの学習理論から解き明かす
斎藤環
これから必要な人材と人材教育とは?(1)人手の供給不足とマクロ経済への影響
ごく一部の人手不足が「致命的」になる…Oリング・セオリー
柳川範之
ポスト国連と憲法9条・安保(4)自衛隊と憲法改正の問題
「憲法9条に自衛隊を書き込む」という改憲案は「姑息」
橋爪大三郎
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎