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不良とは「損を覚悟の人生を送ることができる人」

崇高と松下幸之助(5)不良性とコンプレックス

概要・テキスト
「不良性」とは悪い意味だけではない。また、今の時代の金髪でロックンローラーはなぜ不良とは言わないのか。時代によって変わるそれぞれの価値観について、19世紀のヴィクトリア朝と明治の日本について考察を加えながら解説する。(全8話中第5話)
※インタビュアー:神藏孝之(公益財団法人松下政経塾 副理事長)
時間:12:39
収録日:2019/02/06
追加日:2019/04/17
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≪全文≫

●不良性は柔軟性


執行 (話は変わりますが)不良性とは悪い意味ではありません。不良性というと悪いみたいな印象があるが、不良性は柔軟性なのです。

 定義としては、「損を覚悟の人生を送ることができる人」です。今の人は皆、そこのところを勘違いしています。昔僕も不良でしたが、不良とは何かというと「損することが分かっていてやる人間」です。だから形がどうこうではありません。

 昔の学生服だと、ボタン外してホック外しているのが不良みたいな印象がありますが、あれは日本人皆が真面目で学生服をきちんと着ていた時代だからなのです。帽子も被っていたのを、取っただけで、僕は立教高校ですけど、池袋に先生がいて三回捕まったら停学です。まだそんな時代でした。だから、帽子を被らないで、ホックをとると不良になります。それは損と隣り合わせです。

 だから今は、悪い格好して、茶髪に染めてロックンロールをするのは「優等生」だと僕は言っています。ロックンロールをしていると女性にモテてしまうから、優等生です。

 今の時代の不良とは、僕が高校生ならやると思いますが、革靴履いて、ホックを閉めて、学生服を着て、帽子を被って革の鞄、こういうのが不良だと思っています。まずモテません。まずモテないのも損害ですからね。損するのはお金だけではありません。だから昔は不良というのは評判が悪くて、成績も悪くされる、先生から点を引かれる。それでやっていたから不良なのです。

執行 今の時代は不良というのは学生服をきちんと着ている学生です。だから僕が大学に入った年は、ちょうど昭和45年ですが、大学に入った年は、サリンジャーという人の『ライ麦畑でつかまえて』を皆読んでいて、これさえ読めば、女にモテると言われていました。僕は死ぬほどの読書家なのですが、普段本を読まない人もみんな『ライ麦畑でつかまえて』を読んでいました。そして本当にモテてました。僕はこれさえ読めばモテると聞いたのですが、これも断じて読んでいません。今まで。これが不良なのです。これさえ読めば幸福になる、これさえ読めば何とか、例えば出世できるなど、そんなものを読むのが卑しい豚なのです。

―― それは反骨精神ということですね。

執行 当たり前です。それを本当に死ぬまで通せるかどうかです。僕は六十八歳になって、あとは死ぬまで通さなければいけないので、大変です。自分...
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