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松下幸之助は、成功しすぎて身動きがとれなくなった

崇高と松下幸之助(4)偉大すぎた松下幸之助

概要・テキスト
偉大になりすぎた松下幸之助は、国家の看板になり、「良い人」としてしか振舞うことができなかった。一方で、「崇高」を求めた彼は、孤独でもあった。そのことは、松下幸之助と魂で触れ合うことができる執行先生にはよくわかる。「良い人」とはどのような人なのか、なぜ魂で触れ合うことができるのかについて執行先生が語る。(全8話中第4話)
※インタビュアー:神藏孝之(公益財団法人松下政経塾 副理事長)
時間:12:11
収録日:2019/02/06
追加日:2019/04/14
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≪全文≫

●松下幸之助の不幸


執行 松下幸之助は僕に言わせるとかわいそうです。頭が良過ぎたからです。成功のしすぎです。成功はしすぎたら、身動きが取れなくなるのです。かわいそうでした。

―― 成功しすぎて、身動きがとれなくなってしまうのですね。

執行 身動きがとれなくなったのが、松下幸之助の晩年です。僕は身動きがとれる範囲なので、大暴れして好きにやっています。まだできる範囲にいる訳です。

 松下幸之助のレベルになると実業家といっても国家の「看板」ですから、身動きがとれないでしょう。だから僕は自分の手が届かなくなるところはやりません。宣伝やメディアなども、なるべく抑えています。自分の責任の範囲の終わるところでやっています。

―― 松下幸之助の晩年は、執行社長が『悲願へ―松下幸之助と現代―』(PHP研究所)で書いている通りだと思います。家族の中で孤独でした。崇高さを求めていくと最後には理解されないからで、それでも「良し」としていくから、その覚悟があるから、崇高さを求められる訳ですね。

執行 もちろんです。崇高を求めるのに、一番重要なことは名誉を捨てる、金銭を捨てる、幸福を捨てる、そういうことです。それは全ての人に言えます。これは自分が捨てない限りは出来ません。もちろん僕も捨てています。皆にそう宣言もしています。

 人間は弱いですから、そのためにそう宣言しています。だから僕の本でも今の意見が書いてあります。僕の本の読者のファンが毎週、毎日遊びに来るけれど、本に書いてあることが一行でも僕自身の生活と人生と違ったら、その場で腹を切る、とみんなに言っています。そのくらい言わないと人間ゆるんでしまいます。

 崇高というのはそこまでして求めなければなりません。緊張感というか、自分が真の人間だという誇りです。今度出す松下幸之助の思想を語った『悲願へ―松下幸之助と現代―』(PHP研究所)という本では、幸之助が人間であることの「誇り」を書きました。つまり、人間とはどういうものかということです。僕もそう思っているので、全部分かります。

―― 松下幸之助と岩波茂雄はまさにこの系譜は同じなのですね。

執行 あのような価値観の高いことをやった人は同じです。そして僕もその一員になろうとしています。

 たぶん、石門心学などのあの当時の大阪商人の徹底的な洗礼を受けています。商売の洗礼を受けているの...
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