崇高と松下幸之助
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実業家が「志」を実現するためにやっているのが商売
崇高と松下幸之助(7)自由度と幸福
考察と随想
執行先生は「商売を何のために始めるのか」について深く考え、その志を実現させるために商売を行うべきだと指摘する。松下幸之助も執行先生と同じように高い志があったが、松下幸之助の場合、商売が大きくなりすぎたため、「自由度を失う」という結果を招いてしまった。(全8話中第7話)
※インタビュアー:神藏孝之(公益財団法人松下政経塾 副理事長)
時間:9分10秒
収録日:2019年2月6日
追加日:2019年4月23日
カテゴリー:
≪全文≫

●不合理と科学


執行 楠木正成の生き方が、僕は武士道の頂点にあると思います。

―― 楠木正成は、無謀な戦いを後醍醐天皇に命じられても、恨むなという感じで行くわけですね。

執行 だからあれがやっぱり本当の生き方です。合理的な人ほど、本当の合理を捨ててしまいます。僕はすごく不合理で生きてきている人間です。武士道は不合理ですよね。僕はそのような不合理なものを信じ、不合理を愛して生きてきているので、すごく合理的なのです。これはどんな社員と話をしていても、そうです。科学的というか、不合理な人間だからこそ、科学がよく分かります。科学的と言われている人は逆に駄目です。それは科学の盲信者ですから。

 要は、迷信家です。だから科学文明や科学を信じている人は、科学の迷信家に成ってしまいます。僕は武士道という不合理が好きで、科学はくだらないものだと思っているから、正確に見ることができます。だからすごく科学的です。みんなびっくりします。

 だから、私の商売もずっと儲かりっぱなしで、三十五年間下がったことが一回もありません。無借金で、お金は借りたこともありませんし、今もお金はざくざくです。誰かに頼ったこともありませんし、人にものを頼んだこともありませんし、関連会社もありません。全部自分で研究して、特許をとって作って売り、在庫もゼロです。売れる分しか作らないのです。

 資本主義の原初の形態です。マニュファクチュアの資本主義の原初段階が我が社だとみんな言っています。この資本主義が全てごまかしで無くなってしまったのが現代です。アメリカあたりが二十世紀初頭に「大会社」をつくった頃からおかしくなってきました。

―― 自分で作って自分で売っているわけですから、一番わかりやすいですね。

執行 会社もずっと儲かりっぱなしです。なんとかここまできて、後ここからいくと、変に世の中に組み込まれるのが一番怖いです。だからそこの舵取りが大変です。

―― 敢えて大きくしないから、自由度を保っている訳ですね。


●商売の自由度


執行 僕は商売を始めたときに言っていますが、商売は何のために始めたのかということです。うちの場合は、商売は僕が立てた「志」を実現するためで、実業家が志を実現するためにやっているのが商売なのです。だから、その志が駄目になるところがどこかということの見極めが大切ですね。職種に...