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「行動コスト」に注目することで、行動は変えられる

人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(5)行動コスト

島宗理
法政大学文学部心理学科教授
概要・テキスト
目標を立ててもなかなか実行できないという問題に対して、行動分析学ではどのような方法が考えられるのか。その一例として行動したことを記録に残すのもよいのだが、島宗氏は少し環境を変えるという簡単な方法で、行動は変えられるという。そこでポイントとなるのが「行動コスト」と呼ばれるもので、自身が行ったウクレレの練習を例に説明する。(全7話中第5話)
時間:07:38
収録日:2019/02/21
追加日:2019/09/12
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≪全文≫

●問題解決の基本は「逆をいく」


 そこで、前回お話しした、人間でも難しい「ちりも積もれば山となる型」そして、「天災は忘れた頃にやってくる型」の問題に、どうやったら挑めるかということになりますが、こういう問題に対してもいろいろな解決策、介入の方法を編み出しているのが行動分析学です。

 実は答えを言ってしまうと割と簡単です。どちらの問題も行動と環境の関係性が累積的だと難しいし、あるいは確率が低いと難しいわけですから、逆をいけばいいのです。行動と環境の関係性が1対1で対応していて、1回1回の行動をするとこういう結果があるということがはっきり分かるような随伴性だと、行動は制御されやすいということです。また、1回の行動に対して、必ずこの結果が生じるというように確率を上げてやれば、行動は変わりやすいのです。


●行動を記録し、行動強化のポイントを把握する


 ですから、どういうことをするかというと、一例としては行動したことを記録に残すということです。記録に残すということは、記録自体、必ず生じるということですから、低確率の問題はそこでパスすることができます。それでも効果がなければ、記録をした上でそれに何か自分の行動を強化するような後続事象を追加してやるようなこともできます。

 よく私の担当の学生さんが自分実験で使うのは、自分で自分にごほうびをやるということです。例えば、ゲームが好きな学生さんは英会話の勉強をするとき、勉強を30分したらゲームが10分できるということを、自分で決めて課したりします。

 そうすると何が起こるかというと、介入をする前は、英会話の勉強をするとちょっとは学べるけれども、すぐに大きな変化は起こりません。それが短期的な行動随伴性です。けれども、1週間、1カ月、1年間と積み重ねるとTOEICの点数が上がったり、英語の検定が通ったりするなど、就職に有利になるということに学生さんは価値を置きますから、その点で行動の強化があります。それをいかにして短期的な結果に持ってくるかというのが重要になってくるのです。ただ、それは意志の力だけではうまくいかないので、30分英語の勉強をしたら10分間ゲームをするという、短期的な結果を追加することによって行動を変える、ということをしたりします。

 もちろん、これがうまくいくかどうかというのは、やってみないと分かりません。行動分析学の場合...
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