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非核化と平和体制の構築は同時に進められなければならない

北朝鮮の脅威と日本の国益(4)非核化と平和体制構築

小原雅博
東京大学名誉教授
概要・テキスト
現在のトランプ政権周辺は、北朝鮮への制裁を支持する強硬派が影響力を強めている。しかし、こうした手段は北朝鮮の徹底抗戦を導いてしまう。実際に金正恩氏が求めているのは経済的繁栄である。それゆえ非核化を引き換えにした経済的基盤の提供が、問題解決の糸口となる。(全9話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(10MTVオピニオン編集長)
時間:09:24
収録日:2019/08/21
追加日:2019/10/25
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≪全文≫

●現代のアメリカでは強硬派が影響力を強めている


―― これはまさに、リビアもそうですし、北朝鮮も同様ですね。1990年代には、「悪の枢軸」という言葉をブッシュ政権が使いました。これも結局、「悪人の論理」と「弱者の論理」につながる話です。「弱者の論理」の場合は、「彼らは弱者なんだから、その立場を保証してやれば棄てるだろう」という、リベラル的な見方です。もう一方、アメリカのタカ派の側としては、「いやいや、あんな体制が残っていたら、人民の人権を抑圧しているし、かえって人民は不幸せだ」ということになります。

小原 まったくそうですね。

―― こうした体制を叩きつぶさないと、本当の意味での平和はやってこないという議論もあります。その両方のバランスは本当に難しい話ですね。

小原 難しい。だけど、今のホワイトハウス、つまりトランプ政権の周りでは強硬派がかなり強く出ていますね。ジョン・ボルトン補佐官は今言ったような、いわゆるレジームチェンジ(体制転換)をはっきり主張しています。イランの問題でもそうなんです。「こういう相手と交渉しても結果は良くない。だから、力づくでこの体制を倒してしまわない限り駄目だ」という考えです。


●制裁を続ければ徹底的に抵抗することが予想される


小原 ただ、問題は制裁というものをどういった目的、目標と絡み合わせていくのか、それによって制裁がどれだけ効くかということなんです。例えば、制裁の目標がイランの体制を倒すことだとします。あるいは、今の金正恩政権を倒して民主化することだとします。その場合、相手は絶対その制裁に対して、「ああ、参りました」「譲歩します」とは言えないでしょう。

―― もう完全に敗北を意味するわけですね。

小原 そうです。それを避けるために、徹底的に抵抗するでしょう。だから、そうした制裁というのは実は効かないんです。われわれも随分研究してきましたが、過去の制裁で成功してきているものは、ある程度向こうが受け入れ可能なような目標を追求するものです。そうでない限りは、その制裁は効果的じゃないんです。これはもう、はっきり歴史が示しています。

 だから、ボルトン氏が北朝鮮の政権転覆まで考えているようであれば、この制裁は北朝鮮からすれば、絶対「分かりました」と認められるようなものにはならないと思いますね。


●核廃棄と体制保証を引き換えに...

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