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プラトンの「アカデメイア」から受け継がれる大学の意味

哲学から考える日本の課題~正しさとは何か(5)対話の場所

概要・テキスト
「正しさ」というものを養っていくための教育機関として、古代ギリシャにはプラトンがつくった「アカデメイア」があった。そこは、さまざまな問題について言葉を自由に使いながら議論を交わす対話(ダイアローグ)の場として機能したが、それが1つのモデルになり、中世の大学ができ、現代の大学へと受け継がれていく。(2019年10月26日開催・テンミニッツTV講演会「西洋哲学と東洋哲学から考える日本の課題」より全11話中第5話)
※司会者:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:06:56
収録日:2019/10/26
追加日:2020/03/09
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≪全文≫

●「正しい人」をいかに育てるのか?


―― それでは次に、なかなか難しいのですが、どうやってそれ(「正しさ」というものを養っていくための教育)を実現するかということについてお聞きしたいと思います。例えば、古代ギリシャでも古代中国でも、教育機関など社会的なものがあったと思います。また、昔の「正しい」というのは、「正しい人」になることを目指すものだったのであれば、おそらくそれをいかに養成するかについての知もあったかと思います。具体的な例としては、こうしたものはどのような形で考えられていたのでしょうか。

納富 「正しい」とは、基本的に市民になるということで、それは普通の社会でもいろいろな場で行われるわけですが、前回私が言った2段階の教育でいうと、第2段階目が問題なのです。第1段階は、ある意味で健全な社会であれば機能します。親が子どもに対して「正しい行為を見習いましょう」ということをちゃんと教育をするというものです。特に伝統的な社会では、これは機能します。

 しかし、2段階目のところは難しく、これが形骸化してしまうと、「正しい」といわれているものが「昔からそうなんだ」という形で、やや抑圧的な形で働くこともあり得ます。これは宗教も同じだと思います。そこで、問いがきちんと機能するような場所を確保することが重要になっていきます。


●プラトンの「アカデメイア」から受け継がれる「大学」という場の意味


納富 これについては、人類があちこちで文明を築き、そうした場所をつくってきました。インドや中国も、それぞれそういった場をしっかりとつくってきたということが、大きな意味をもってきたと思います。ギリシャの場合、プラトンが最初につくった「アカデメイア」という学校があります。900年ぐらい続いたのですが、これが1つのモデルになり、中世の大学ができ、現代に至るわれわれの教育ができました。これはやはり前回、中島さんがおっしゃった「問う」ということと一緒に行われていったのだと思います。

 「対話」と訳すと少し軽く感じてしまうかもしれませんが、哲学には基本的に「ダイアローグ」という形で、問い、問われることを一緒に行う方法的なプロセスが必要です。そして、それは当然1人ではできないので、相手と一緒に行うことになります。その場合、相手を厳しく批判したり論駁したりしながら、場合によっては2人とも妥協す...
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