●女性が得意な伝達、不得意な伝達
―― 東横インでは女性が大変活躍されていますが、普通の会社ですと、どちらかというと男性が多く、女性が半分を超える職場は少ないかもしれません。ですので、どうすれば女性が活躍できる社会、会社になるのか、よく分からないという方も残念ながらいらっしゃると思います。そんななか、女性として、女性が活躍している会社に入られて思ったこと、感じられたことをお聞きしたいと思います。
まず、女性が活躍する職場の面白さ、特徴というのは、どういうところにありますでしょうか?
黒田 そうですね。私自身は、ずっと女子校育ちで、他の会社に就職したこともないため、女性だけの職場にあまり違和感がないのです。
―― 女子校には独特の文化がありますよね。
黒田 そうですね。ただ、社外の取締役から「女性ならではなのかもしれないけれど、横への情報の伝達が速いね」と言われたことがあります。
―― なるほど。
黒田 横に情報が伝達しやすいということは、例えば支配人たちがやってよかったことを横展開できるので、その点はとてもよいと思っています。一方で、「上から下への情報伝達が下手だね」と言われたこともあります。支配人同士、うわさもひっくるめて、うわーっと情報が集まるのですが、本社が言ったことが支配人、末端のスタッフまで伝わっているかという部分に課題があります。お恥ずかしながら、お客様の方から「もうこういうサービスに変わっているよ」と教えていただくフロントもいたりするものですから。
―― 組織に対する考え方も忠誠心なども、女性と男性では違う部分があると思います。例えば最近はだいぶ変わってきていると思いますが、共学校では、昔は男性が部長をやって、女性が副部長とかマネジャーをやるというようなイメージがあります。
黒田 そうですね。
●女性のおしゃべりには理由がある
―― 一方の女子校の場合、当然、部長から何から全部女性でやるというかたちになります。トップをやる人もいれば、世話役、補佐役をやる方も出てくる。黒田社長はずっとその世界で生きてきたということですが、上の言うことを聞く縦の関係性というよりは、仲間意識があるため、横への連絡はうまくいくというように、人の付き合いを大事にするところが、女性にはあるのでしょうか。女性にとっての組織観についてはどう感じていますか?
黒田 組織観とまで言えるか分かりませんが、私がいる本社の部長は男性と女性が半分ずつぐらいです。男性の部長の仕事を見ていると、緻密で一生懸命やってくださる。自分の仕事、任された仕事を集中してやっていると感じます。しかし、自分と同じように部下もやってくれるだろう、「自分の背中見て仕事をしてほしい」というところがあるため、部員に目が行き届いているかといえば、そうでもありません。
一方、女性の部長は、一生懸命やっていないわけではないのですが、ともすると「遊んでいるのかな」と思われるくらいにおしゃべりが多い。ただ、実際は、そうしながら部下の様子をうかがっていたり、モチベーションを高めるようなことをしていると感じています。
―― 「おしゃべり」と見えてしまうようなものでも、相手の状況をよく捉えるという意味で、目配りになっているのですね。
黒田 そうですね。あとは女性の方が上司にモノを言います。ある意味、女性の方が、出世よりも今の職場の環境をよくすることに重点を置くのかもしれないですね。
―― 「自分」をどうするというよりも「周り」をどうするか、環境をどうよくするか、チームをどう円滑に回していくか、そのあたりの感覚が非常に研ぎ澄まされているということですね。
黒田 そうですね。周りがよくなければ自分もよくならない、居心地が悪いというようなところが、あるのかもしれません。ですから、私に対しても「こうだったらいいのに」と女性は言ってきますね。もちろん彼女たちも言葉を選んでいますが、男性社会ではない女性だからこその感覚で、本社に言ってきてくれていると思っています。
―― そのあたりをどう生かすかというのは、1つのポイントですね。
黒田 声を挙げてくださるからこそ、私も次の一手を打てるということはあります。
●被災時に生きた! 女性ならではの「グループ」
―― あと、学校の教室では、派閥、グループができるイメージがありますが、女性だけの組織の場合、派閥はどうなるのでしょうか。もちろん、男性の組織でも派閥はありますが、女性特有のようなものはあるのでしょうか。
黒田 一匹狼ではいられない、グループに入らなければならないという気持ちは、もしかしたら女性の方が強いかもしれないですね。
ただ、派閥といっても、政治家の派閥ではありませんが、そこに入れば引き上げてもらえるとか、派閥...