●受賞の決め手は「女性活躍」
―― 本日は、株式会社東横イン代表執行役社長の黒田麻衣子さんに女性活躍についてお話を伺いたいと思います。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
黒田 よろしくお願いします。
―― 黒田社長は、1999年に聖心女子大学を卒業されて、2002年に立教大学大学院の文学研究科、博士課程前期を修了されています。第一次世界大戦期のドイツの歴史を専攻されたそうですね。
黒田 はい、そうですね。
―― その後、2002年にお父様で、創業者の西田憲正さんが経営される東横インに入社され、2005年にいったんご結婚とご出産で東横インをご退社。2008年に再び今度は副社長として東横インに入られて、2012年から社長をお務めになっています。
黒田社長は、これまでいろいろな賞を受賞されていて、「JAPAN WOMAN AWARD 2016」のリーダー輩出部門のグランプリを受賞、「エイボン女性年度賞2017」の教育賞、2020年の1月に「第40回毎日経済人賞」を受賞――。これはいずれも「女性活躍」が注目されての受賞ということになりますでしょうか。
黒田 そうですね。
―― 各ホテルの支配人様の97パーセントが女性という点に注目が集まっていますね。ただ、皆さん、いろいろな土地で東横インを利用されていると思いますが、そこまで多くの女性支配人がいるということは、ご存じない方も多いかもしれません。
黒田 はい。
―― 現在、全国にいくつぐらいのホテルを展開しているのでしょうか?
黒田 2019年末で310ホテル、6万6,887室となっています。
―― 東横インはビジネスホテルですが、ビジネス客と一般客の割合は、だいたいどのくらいになるのですか?
黒田 ビジネスホテルとして誕生して、それを自負してまいりましたが、最近は、観光でいらっしゃる方の需要も大きく、「ビジネスプラス冠婚葬祭」と「観光」で、ちょうど半々ぐらいですね。
―― 半々ぐらいになっているのですね。
黒田 そうですね。15年以上前だと稼働のピークは平日で、土曜日、日曜日は閑散期でした。
―― ビジネス客、出張の方がお泊まりになるイメージですね。
黒田 そうです。ただ、今は土曜日が最も稼働が高くなっています。
―― なるほど。そうなると、今後ホテルの仕事もずいぶん変わってくると思いますが、東横インは日本国内だけではなく、海外にも展開していますが、どのあたりに進出しているのでしょうか?
黒田 最も多くの店舗があるのは韓国です。韓国には13店舗ありまして、ドイツ、フランス、フィリピン、カンボジア、モンゴルとホテルを構えています。
●女性活躍のきっかけは「飲み屋のママ」
―― 今後は国内、国外ともにいろいろと姿を変えながら展開されることになりそうですね。ところで、先ほどお話が出ました、支配人の方々の97パーセントが女性というように、女性を積極的に登用されたのは、なぜなのでしょうか?
黒田 それは創業期からで、まさに1号店から女性の支配人でした。
―― 1号店からなのですね。
黒田 その当時、父が祖父から継いだ仕事は、電気工事の会社だったものですから、男性ばかりの会社でした。そこから父はデベロップの仕事、ビルの企画をするような仕事を始めて、ひょんなきっかけからホテルをやることになったのです。ただ、電気工事の会社ですから、ホテルの仕事をできる人が誰一人いないということで、父の行きつけの飲み屋のママさんに頼んで、ホテルの1号店をオープンさせたのです。
―― なるほど。
黒田 たまたまママさんが、田舎に戻ろうかなとおっしゃるタイミングで、「それだったら手伝ってください」という経緯でしたので、最初から「支配人は女性でいこう」と決めていたわけではありませんでした。実際、2号店目は男性の支配人だったのですが、1号店と2号店の稼働率にかなりの差が出てきてしまったのです。「これはなぜだ?」と現場に行くと、女性が支配人をやっている方は、とてもきれいで居心地がいいのです。一方の2号店はなんとなくタバコ臭いし、暗いし汚いということで、これは女性に向いている仕事かもしれないと思ったそうです。そこで、社員は女性にしていこうとなっていきました。
―― そこから、伝統的に女性が支配人になるケースが増えていったのですね。
黒田 そうですね。
●未経験でも支配人を募集する理由
―― 支配人になる方法、道筋ですが、どういうかたちで社員登用をされているのでしょうか?
黒田 今でこそフロントから入って支配人にステップアップする方もいますが、ほとんどの場合が中途で、支配人として採用しています。
―― 「今度、ここの駅にできるホテルの支配人を募集します」と募集されるのですね。
黒田 そうです。「未経験で構いません」ということで呼びかけて募集しています。まもなく創業3...