●新型コロナウイルス対策で次にどのような手を打つかが一番のポイント
―― 皆さん、こんにちは。本日は、東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻の橋本英秀樹教授に、新型コロナウイルスの問題についてお話いただきたいと思います。よろしくお願い致します。
橋本 お願い致します。
―― 今般、非常に厳しい形で感染が広がっています。まず、総論的に先生からお話をお伺いしたいと思います。ここまでの日本の対応は、全体として総括した場合、どのように評価されていますでしょうか。
橋本 今(収録日)は2020年3月27日(金)でおよそ1週間後にこの動画が配信されているとすると、その頃には、状況もいろいろと変化していると思います。具体的には、ロックダウン、いわゆる封鎖措置が取られている時期だろうと想定しています。皆さん、いろいろなメディアで感染ピークの図をよく目にしたと思いますが、日本は今、ロックダウンに入ろうとする状況にもかかわらず他国に比べて、感染ピークが低めに出ていました。こうした状況になっている点については批判もあるのですが、私は全体的に見れば、日本はここまでかなりうまくやってきたと思います。その理由については後ほど触れます。問題は、これまでうまくやってきたからといって、今後もうまくいくわけではないということです。むしろ、ここまではうまくいき、時間が稼げた分、次にどのような手を打つかをじっくり考えて動く必要があります。ここが一番のポイントです。
●保健所の存在が感染者の増加を抑えている
―― 日本は欧米諸国に比べると、比較的早くから新型コロナウイルスの症例が出ました。しかし、蔓延のスピードははるかに遅かった。その理由としては何が一番大きいポイントでしょうか。
橋本 これに関しては、科学的に説明しきれない状況です。一部では、検査を行っていないため、実際の感染者数が見えていないという見解もあります。その部分も確かにあるのですが、全般的に見た際、感染者数が低い一番の要因は、幸いにして日本が島国国家で、人の移動が非常に少なかったことが挙げられます。移民の数も限られていますし、海外の動向、特に中国の動向を見て、観光客もさあっとひいていきました。その分、しばらく耐えることができたことが一番大きい理由だと思います。
もう1つは、保健所の存在です。幸いにして日本には、保健所を中心とし...