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10分でわかる「カーボンニュートラル経営」

武器としての「カーボンニュートラル経営」(1)カーボンニュートラルと日本の実状

夫馬賢治
株式会社ニューラルCEO/経営・金融コンサルタント/信州大学特任教授
情報・テキスト
『武器としてのカーボンニュートラル経営』 (夫馬賢治著、ビジネス社)
近年、環境問題への意識や気候変動への危機感が高まる中、注目を集めているのが「カーボンニュートラル」経営だ。CO2の排出量削減に関するこの取り組みの一つとして、モノを循環させる「サーキュラーエコノミー」という概念が浸透しているという。世界的に脱炭素社会実現を目指す中、日本はどのような動きをしているのか。その現状と課題を解説する。(全4話中第1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
≪全文≫

●モノを循環させる「サーキュラーエコノミー」


―― 皆さま、こんにちは。本日は夫馬賢治先生に「カーボンニュートラル経営」について講義をいただきたいと思っております。先生、どうぞよろしくお願いいたします。

夫馬 よろしくお願いします。

―― 夫馬先生は、『武器としてのカーボンニュートラル経営』がビジネス社からご発刊されていらっしゃいます。それから、講談社+α新書で『超入門カーボンニュートラル』『ESG思考 激変資本主義1990-2020、経営者も投資家もここまで変わった』という本を出していらっしゃいます。カーボンニュートラルやESG投資等の第一人者として、いろいろなご発言、ご提言をされています。今日はゆっくりとお話を伺いたいと思っております。

夫馬 よろしくお願いします。

―― 最初に、カーボンニュートラル経営についてお聞きしたいと思います。テンミニッツTVでも以前、猪瀬直樹先生にカーボンニュートラルについてご講義いただいたことがございました。猪瀬先生がおっしゃっていたのは、「もう日本は大変だ。とんでもなく遅れている」というお話だったのですが、夫馬先生からご覧になっても、やはり日本は今、完全に取り残されているイメージなのですか。

夫馬 そうですね。少なくとも、まずG7といわれる先進国の中では、産業転換が一番遅れていると思いますし、最近では、G20まで広げても、新興国にどんどん抜かれてきているというような状況ですので、産業状況としてはかなり深刻さを増してきているかなと思います。

―― ちょうど先日、台湾の中小企業庁のシンポジウムにも出られたということでございましたが、どんな雰囲気でございましたか。

夫馬 台湾の中小企業庁、政府が企画をしてやっているものは、カーボンニュートラルを宣言しています。そこで、まさにカーボンニュートラルの一つの策として「サーキュラーエコノミー」という概念が、台湾でも浸透してきているのです。

―― サーキュラーエコノミーというと、どういうエコノミーですか。

夫馬 サーキュラーエコノミーは、日本では「循環経済」ともいわれます。循環型社会や循環型経済という言葉は、日本でも古くからあります。3R(編注:Reduce・Reuse・Recycleの3つのRの総称)などといわれますけれども、資源を使う量を減らして、削減をして、できればリユースをして、最後はリサイクルしていくというものです。これをもっと強化していこうということで、今あらゆるものをモノとして使い続けるのです。

 日本では、今までリサイクルの大半は燃料としてのリサイクルなので、結局、最後は燃やしています。それでもいいじゃないかという声もありましたが、結局、燃やしてしまうとまた新しいものを作らなければいけません。モノとして循環させることが今、サーキュラーエコノミーの真骨頂の概念になっています。台湾では、これを中小企業庁が中小企業向けに発信していくということで、先進的な中小企業も一緒に登壇をして、いかにこれが実現できるのか、中小企業にとってチャンスなのかという話をします。なので、おそらく日本以上に台湾のほうが中小企業向けにも話が進んでいます。そんなタイミングかと思います。

―― なるほど。


●世界的に遅れている日本のカーボンニュートラル事情


―― モノそのものを循環させるというのは、なかなかイメージしづらいかもしれません。これはぜひ、深掘り講義でお話をお伺いできればと思いますが、日本の場合、環境への取り組みについては比較的早くから各企業が力をいれていました。

夫馬 そうですね。

―― 猪瀬先生の講義の時もそうでしたが、頭の中では日本のほうが環境立国だというイメージがあったり、あるいは「もうやっていますよ」と思っていたりする方もいると思うのですが、何が違うのですか。

夫馬 日本でも温暖化について、CO2を減らそうという動きは、京都議定書といわれていたものがありますが、1990年代後半から2000年代に非常に話題にもなっていたし、関心も高かったことは、当時お仕事されていた方で記憶に残っているかと思います。

 当時、例えば日本やヨーロッパは、CO2を数パーセント減らしましょうということで、どれだけ節約できるか、いろいろな機械のエネルギー効率をどれだけ上げられるか、この競い合いだったのです。

 でも今、皆さんもカーボンニュートラルということはご存じだと思うのですが、数パーセント削減するどころか、2030年まで、あと10年弱で30~40パーセントの削減という話が出てきています。2050年に向けてはゼロにしていくのだという、これまでとは全然違う議論になっているのです。

 そうすると、積み上げ型の努力というよりは、もう抜本的に製品、あるいは技術を変えてしまわないと達成できない...
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