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創造の「4段階説」、ひらめきには準備が必要

認知バイアス~その仕組みと可能性(2)創造のバイアス〈前編〉

鈴木宏昭
元青山学院大学 教育人間科学部教育学科 教授
概要・テキスト
創造には「ウォーラスの4段階説」があり、何か見た途端、いいアイデアがパッと出たというのは創造とはいわないという。ではどういったプロセスをたどるのか。認知科学で行われている創造の研究について解説する。(全7話中第2話)
時間:10:44
収録日:2022/05/26
追加日:2022/10/18
カテゴリー:
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≪全文≫

●創造の基本図式「ウォーラスの4段階説」


 創造におけるバイアスについて、これからお話ししようと思います。

 創造についてお話しするときに、いろいろな人が最初に参照するのが、スライドに書いてある、グレアム・ウォーラスという人の唱えた創造の基本図式である「4段階説」です。

 彼の考え方によると、最初は「準備」の段階といいます。何か見た途端、パッと出たというのは創造とはいわないわけです。創造するために、「こうじゃないか、ああじゃないか」と相当に苦しむわけです。そのことを「準備」といっています。私たちの研究の領域では「インパス」(日本語で「行き詰まり」)という言葉を使ったりします。そうやって苦しんで、どうやってもうまくいかない中で作業をしている段階です。

 そうすると、ウォーラスの考え方では次に「あたため」という段階があるということです。あたためというのはどういうことかというと、一生懸命取り組んでいる作業とは別の作業を行うことです。休憩を取ることでもいいし、お茶を飲むことでもいい。お風呂に入ることでもいいかもしれません。そのように、今苦しんでいる作業とは別のことをやっている段階です。

 そうすると、そういう段階を経て、あるときに突然パッと「ひらめき」が訪れるというのです。

 そして、ひらめいた後は、そのひらめきが本当に適切なものなのか、正しいものなのかということの「検証」が続くと、ウォーラスは考えています。

 分かりやすい例として、どのくらい本当かはよく分からないのですが、アルキメデスは王様に「王冠が純金でできているのか、それとも混ぜ物になっているのか、ちゃんと調べろ」と言われて、どうやっていいかよく分からず苦しんでいました。これが「準備」の段階になります。それで疲れ果ててお風呂に入りました。これが「あたため」の段階です。そうするとお風呂の水がザーッと出て、そこで突然「ひらめき」が訪れるということになります。こういう例がイメージされるといいかと思います。

 「検証」もすごく大事なのです。科学的な研究というと、本当の意味で研究のレベルでやると、ひらめきだけで問題が解けるということはまずありません。それが本当にそうなのかということを実験とか、観察とか、計算をやって検証していかなければいけないのです。ただ、私...
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