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バイトよりも安い?「固定残業代」の落とし穴
近年、長時間労働が大きな問題として取り上げられるようになりましたが、それでもまだ長時間の残業をしている方は少なくないでしょう。そんな状況のなか、サラリーマンにとって特に気になるのは、やはり残業代ではないでしょうか。
「固定残業代」(定額残業代)という言葉がありますが、厚生労働省の「規制改革推進会議人材WG御説明資料:求人申込書記入上の留意点」によると、固定残業代とは「名称によらず、一定時間分の時間外労働、休日労働および深夜労働に対して定額で支払われる割増賃金」のことを指します。つまり、これくらい残業するだろうということを想定した上で、あらかじめ残業代を決めておくということです。
残業なしでも残業代が出るということで、働く人のやる気が出て、効率アップを狙えるというものなのですが…。
そもそも、「固定残業代」を採用するには、厳しい条件をクリアしなくてはなりません。先述の厚生労働省の資料によると、条件として以下を提示しています。
1.基本給には含まないこと(他の賃金と区分されていること)
2.時間外労働があってもなくても、固定の残業代が支払われること、また規定時間を超えただけ働いた場合、その超過分が追加で支払われること
3.何時間を超えたら残業代が出るのかを明記すること
これらの条件を満たした上で認められるのが「固定残業代」という制度です。この制度は、企業が生き残っていくための「残業代節約術」ともいわれるものなので、働く人によっては大打撃となってしまうこともあるのです。たとえば、正社員の場合、残業が多いのに支払われる額は決まっているため、アルバイトよりも時給が低いという状況まで生まれてしまうからです。
また、求人に出す際、基本給に固定残業代を組み込んでいるため、給与が高いように見えて実際は割が悪いという落とし穴もあるとのこと。そうなると、気が付いたときにはとんでもない時給で働いていた、ということもあり得るのです。
たとえば、仮に基本給20万円+固定残業代10万円=月給30万円という求人内容で、固定残業代には月の残業時間200時間まで含まれるとあったとします。その場合、月の平常の労働時間160時間だけなら時給は1875円ですが、それに残業時間が最大200時間あり合計で360時間労働となると、時給は833円まで下がってしまうのです。そうなると、結果的に最低賃金を下回る可能性がある、つまり「とんでもない時給」で働いていた、ということになるわけです。
また、先述の3条件がそろったからといって必ずしもいいというわけではありません。少し古いですが、2014年6月17日のYahoo!ニュースに「約8割が違法? ハローワークが指導に乗り出した『固定残業代』に気をつけよう」という記事が出ていました。記事では、いくら分が固定残業代なのかはっきりしている、何時間分の手当なのかはっきりしている、超過分の固定残業代が支払われるといった条件を満たしても、「最低賃金や法定割増率を下回っている」場合は「法令に違反する内容の求人」になる、とありました。実際、残業ありきでしか考えられないほど基本給の低いところが存在するということなのでしょうか。こんなことでは、働く気をなくす人が増えていくことになります。
こうした点から考えてみると、「固定残業代」は、制度自体の良し悪しというよりも、制度をどう使いか、使い方の問題ともいえます。トラブルが多いなら、見直さなければなりません。もちろん就活中の人も、会社選びをする際には「固定残業代」を十分に知っておく必要があるということですね。
「固定残業代」(定額残業代)という言葉がありますが、厚生労働省の「規制改革推進会議人材WG御説明資料:求人申込書記入上の留意点」によると、固定残業代とは「名称によらず、一定時間分の時間外労働、休日労働および深夜労働に対して定額で支払われる割増賃金」のことを指します。つまり、これくらい残業するだろうということを想定した上で、あらかじめ残業代を決めておくということです。
残業なしでも残業代が出るということで、働く人のやる気が出て、効率アップを狙えるというものなのですが…。
時給換算がアルバイトよりも低くなる現状
この「固定残業代」という制度、どうやら社員にとって都合のよろしくないことも多いようです。会社で決められていることなのに、いったいなぜなのでしょうか。そもそも、「固定残業代」を採用するには、厳しい条件をクリアしなくてはなりません。先述の厚生労働省の資料によると、条件として以下を提示しています。
1.基本給には含まないこと(他の賃金と区分されていること)
2.時間外労働があってもなくても、固定の残業代が支払われること、また規定時間を超えただけ働いた場合、その超過分が追加で支払われること
3.何時間を超えたら残業代が出るのかを明記すること
これらの条件を満たした上で認められるのが「固定残業代」という制度です。この制度は、企業が生き残っていくための「残業代節約術」ともいわれるものなので、働く人によっては大打撃となってしまうこともあるのです。たとえば、正社員の場合、残業が多いのに支払われる額は決まっているため、アルバイトよりも時給が低いという状況まで生まれてしまうからです。
また、求人に出す際、基本給に固定残業代を組み込んでいるため、給与が高いように見えて実際は割が悪いという落とし穴もあるとのこと。そうなると、気が付いたときにはとんでもない時給で働いていた、ということもあり得るのです。
たとえば、仮に基本給20万円+固定残業代10万円=月給30万円という求人内容で、固定残業代には月の残業時間200時間まで含まれるとあったとします。その場合、月の平常の労働時間160時間だけなら時給は1875円ですが、それに残業時間が最大200時間あり合計で360時間労働となると、時給は833円まで下がってしまうのです。そうなると、結果的に最低賃金を下回る可能性がある、つまり「とんでもない時給」で働いていた、ということになるわけです。
グレーゾーンの中で苦しむ人たち
「こんなやり方、違法なのでは?」と言いたくなる方もいるでしょう。残念ながら、求人に対する法律上の規制はまだ確立されていないのが現状で、何が無効になるか、という判例を重ねて判断していくことになるそうです。また、先述の3条件がそろったからといって必ずしもいいというわけではありません。少し古いですが、2014年6月17日のYahoo!ニュースに「約8割が違法? ハローワークが指導に乗り出した『固定残業代』に気をつけよう」という記事が出ていました。記事では、いくら分が固定残業代なのかはっきりしている、何時間分の手当なのかはっきりしている、超過分の固定残業代が支払われるといった条件を満たしても、「最低賃金や法定割増率を下回っている」場合は「法令に違反する内容の求人」になる、とありました。実際、残業ありきでしか考えられないほど基本給の低いところが存在するということなのでしょうか。こんなことでは、働く気をなくす人が増えていくことになります。
こうした点から考えてみると、「固定残業代」は、制度自体の良し悪しというよりも、制度をどう使いか、使い方の問題ともいえます。トラブルが多いなら、見直さなければなりません。もちろん就活中の人も、会社選びをする際には「固定残業代」を十分に知っておく必要があるということですね。
<参考サイト>
・厚生労働省:規制改革推進会議人材WG御説明資料「求人申込書(フルタイム・パートタイム)記入上の留意点」
https://www.hellowork.go.jp/dbps_data/_material_/localhost/doc/koteizangyo2803.pdf
・厚生労働省 職業安定局:求人票における固定残業代等の適切な記入の徹底について
http://bktp.org/wp-content/uploads/2014/06/2014.4.14付け-求人票における固定残業代等の適切な記入の徹底について.pdf
・一般財団法人 日本職業協会:職業紹介をめぐる法的な問題等について
http://shokugyo-kyokai.or.jp/shiryou/shokugyo/01-12.html
・厚生労働省:規制改革推進会議人材WG御説明資料「求人申込書(フルタイム・パートタイム)記入上の留意点」
https://www.hellowork.go.jp/dbps_data/_material_/localhost/doc/koteizangyo2803.pdf
・厚生労働省 職業安定局:求人票における固定残業代等の適切な記入の徹底について
http://bktp.org/wp-content/uploads/2014/06/2014.4.14付け-求人票における固定残業代等の適切な記入の徹底について.pdf
・一般財団法人 日本職業協会:職業紹介をめぐる法的な問題等について
http://shokugyo-kyokai.or.jp/shiryou/shokugyo/01-12.html
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