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DATE/ 2017.04.28

迷走する「屋内禁煙」の行方は一体どうなる?

 2020年の東京五輪・パラリンピックを機に「屋内禁煙」を推進しようという法案が検討されています。屋内禁煙は、受動喫煙防止対策にとっての要。なかでも飲食店の原則禁煙化の動向は、誰にも身近な問題です。二転三転する状況について、これまでの経緯をまとめておきましょう。

「屋内禁煙」は受動喫煙防止の切り札

 「屋内禁煙」問題を手がけているのは、厚生労働省。他人のたばこの煙にさらされる受動喫煙対策を強化する健康増進法改正案の策定に向けて、最初の「たたき台」を作成したのは2016年10月のことでした。

 たたき台によると、多数の人が利用し、他の施設と代替することが難しい官公庁や社会福祉施設などは「建物内禁煙」。そして、未成年者や患者などが利用する学校や医療機関はより厳しい「敷地内禁煙」を提案しています。

 話題になっているのは、利用者側に他の施設を選ぶ機会のある飲食店などのサービス業施設や、職場のオフィスなど。これらには煙が外に流出するのを防ぐ喫煙室の設置を認め、「建物内禁煙(喫煙室設置可)」を進めようというものでした。

国を挙げての「スモークフリー元年」を急ぐ厚労省

 たたき台作成のひな形について、厚労省では「イギリス型を目指し、日本の『スモークフリー元年を確実に実現』するため、韓国の制度との混合型を導入する」と書いています。

 イギリス型と韓国型ではどこが違うのかというと、「屋内禁煙」に例外があるかないかです。イギリスでは、官公庁や医療機関を始めサービス業や事務所など公共施設のすべてに「建物内禁煙」の指示がなされています。 ただし、ルールがあれば「抜け道」があるのは大人のマナー。イギリスの場合、建物内は禁煙ですが、屋外は全面的に喫煙可。歩きタバコも一般的です。「外はマル、中はペケ」、分かりやすいですね。

 日本がほぼ全面的にならうことにした韓国では、A:敷地内禁煙、B:建物内禁煙、C:建物内禁煙(喫煙室設置可)の3段階方式を取り入れています。違うのは医療機関を「敷地内禁煙」、大学を「建物内禁煙」の対象としたことでした(韓国では、医療機関は建物内禁煙、大学は建物内禁煙(喫煙室設置可)。

悲鳴をあげる飲食業者よりも国際的メンツ

 発表された強化案に対して、「小規模店の喫煙室設置は、場所の確保や費用の面で難しい」と最初に声をあげたのは全国生活衛生同業組合中央会、全国飲食業生活衛生同業組合連合会、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会、大阪外食産業協会、日本フードサービス協会の5団体でした。

 一律禁煙ではなく分煙に向けて、業界で自主的に取り組むから理解・支援してほしいと訴えましたが、塩崎恭久厚労相からは「日本が今後、大勢の外国人を呼び込む中で、『日本には受動喫煙はない』といえる国に変えていく使命がある」と、額面通りの返事があったのみでした。

 風向きが変わったのは、2017年2月。自民党内の本格的な議論が始まった途端「五輪のためなら東京だけでやれ」「喫煙の自由を認めろ」などといった反対論が噴出したといいます。もちろんその間の反対攻勢も強く、「タバコ業界からの政治献金」が表沙汰にされたり、「飲食店の売上は禁煙でアップする」論説が発表されたり、2月25日にはガン患者団体や医療系学会など約150団体から「屋内全面禁煙」の要望書が提出されました。

小規模店をどうするか、罰金は妥当か?

 こうした波乱を経て、厚労省からリニューアル案が用意されたのは、2017年2月末です。「屋内禁煙(喫煙室設置可)」を一律適用としていた「飲食店について」の項目は、以下のように変えられました。

「ただし、飲食店のうち、小規模(30平米以下)のバー、スナック等(主に酒類を提供するものに限る)は、喫煙禁止場所としない(管理権原者が喫煙を認める場合には、受動喫煙が生じうる旨の掲示と換気等の措置を義務付け)」 

 たたき台からは一歩後退した形ですが、悪質な違反者に対しては「30万円以下の過料」という罰則規定も盛り込まれ、議論は再燃しました。「30平米が広いか狭いか」「30万円が高いか安いか」の問題もありますが、当初の「バー、スナック等」に今度は「居酒屋、焼き鳥屋、おでん屋」などを例外として認めるべき、との声が出てきたのです。

 3月7日、自民党の「たばこ議員連盟」(野田毅会長)より、厚労省案への「対案」が提出されました。「飲食店は『禁煙』『分煙』『喫煙』から自由に選べ、表示を義務化する」と、分煙に戻ることを示唆するものでした。

受動喫煙政策をめぐる迷走は、「時代遅れ」の一言?

 3月11日、日本禁煙学会は「自民党たばこ議連17/3/7臨時総会の出席議員及びタバコ販売&耕作者政治連盟からの6年間の献金額」をHPにアップします。さらに3月31日には、産経新聞社とFNNの合同世論調査による「厚労省案賛成37.6%、対案賛成60.3%」というアンケート結果について、調査方法にも報道にも問題がある、と申し入れを行なっています(朝日新聞世論調査では厚労省案に賛成64%、反対25%)。

 4月11日、閣議後の記者会見で塩崎恭久厚労相は「(自民党)部会で説明する機会をいただきたい」と、党厚労部会の開催を求めました。7日に世界保健機関(WHO)の部長が来日、公共の場での禁煙を求める手紙を手渡したことが大きいようです。

 WHOによると、2014年時点で世界49カ国が屋内の公共の場所が全面禁煙。日本の受動喫煙政策をめぐる迷走は、「時代遅れ」以外の何物にも見えないようです。喫煙についても世界基準に従うのか、それとも独自の線引きができるのか。見守りたいところです。

<参考サイト>
・厚労省「受動喫煙防止対策の強化について」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000153190.html
・毎日新聞 「屋内禁煙」骨抜き危機…小規模バーなど喫煙OK
https://mainichi.jp/articles/20170209/k00/00m/040/116000c
・毎日新聞 受動喫煙 厚労相、自民に異例注文 対策巡り「部会開いて」
https://mainichi.jp/articles/20170412/ddm/005/010/152000c
(10MTV編集部)

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