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DATE/ 2017.06.08

そのツアーは企画旅行?手配旅行?その違いとは

 「タイ4泊5日、25,000円!安いな、予約しよう!」。ネット上の格安ツアー比較サイトで検索すると、驚くほどリーズナブルなツアーが数多くあります。夏休みシーズンに旅行を予定している人も多いことでしょう。ところで、旅行は大きく分けて2つの種類があることをご存じですか?ぱっと見は同じようでも、困った時に大きな違いが出るのです。

パッケージツアー?オーダーメイド?それとも…

 その2種類とは、企画旅行と手配旅行。そしてさらに細分化すると企画旅行は募集型、受注型の2つに分けることができます。旅行業法によりそれぞれ定義が定められており、募集型企画旅行とは「いわゆるパッケージツアーまたはパック旅行といわれているもの。旅行者が宿泊や運送を自ら個別に手配・予約する手配旅行とは異なり、旅行会社が自ら企画し販売する商品であることから、主催する旅行会社は、旅程管理を行わなければならないほか、会社の責任として旅程保証、特別補償、損害賠償の3つの責任を負う」(「JTB総合研究所 観光用語集 募集型企画旅行」)ものです。わかりやすく言い換えると、ハプニングなどが起きても旅行会社ができるだけ計画通りサービスを提供する義務があり、条件によっては補償や賠償をする責任も生じます。

 受注型企画旅行も旅行会社が負う義務に関しては募集型企画旅行と同様ですが、「受注型」の名前通り、旅行者の希望に合わせてスケジュール等を設定します。パッケージツアーではなく、オーダーメイドツアーとでも言えば良いでしょうか。

 一方、手配旅行の定義を先ほどと同じく「JTB総合研究所」の観光用語集で見てみると、「旅行者が旅行会社に交通や宿泊などの予約・手配だけを依頼すること」。こちらは旅行者に代わり旅行会社が移動や宿泊を手配するだけで、旅行スケジュールの進行に関しては責任を負いません。

 と、定義だけである程度のボリュームになってしまいましたが、どんな時に差で出るのでしょうか?例えばオーバーブッキングなどにより宿泊するホテルがランクダウンした場合、企画旅行なら一定額が補償されますが、手配旅行の場合はそういった措置はありません。

キャンセル料に大きな違い!返金ないケースも

 また、キャンセル料の面でも大きな違いがあります。企画旅行の場合、海外旅行は出発日の前日からさかのぼり30日目以降は20%以内、前々日からは50%以内のキャンセル料が発生します。逆に言えば旅行代金を振り込んだ後でも、出発の前日から31日以上前に取りやめればすればキャンセル料は発生しないわけです。ですが手配旅行に関してはそういったルールは設定されていないため、仮に出発日が一か月以上先だったとしてもキャンセルした場合全額パーになってしまうこともあり得ます(具体的なパーセンテージの設定は旅行会社次第です)。

 やっかいなのはツアーの見た目だけでは企画旅行か手配旅行か判断できないこと。当然約款であったり、詳細ページには記載されているのですが、旅行会社はわざわざ「手配旅行ですよ!アクシデントがあっても補償しませんよ!」と声高にアピールはしません。そこを見分けるのは旅行者の自己責任となるわけです。

 ここまで手配旅行の悪いところばかり書き連ねてきましたが、もちろんメリットもあります。旅行会社が取り次いでくれるだけあって、航空券やホテルを旅行者が自前で注文するよりは安くなることが多いです。手配旅行であるからこそ成立するような驚きの金額設定もあるわけで、デメリットも理解した上で選ぶのであれば魅力的なプランだって少なくないのです。違いを見極めたうえで、楽しい旅行にしましょう!

<参考サイト>
・JTB総合研究所 観光用語集
https://www.tourism.jp/tourism-database/glossary/
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今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授