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有名人の結婚相手?ネット社会の誤報の拡がり方
今年の流行語大賞候補になりつつある言葉に「忖度」があります。誰かの心中を推し量り、その望みを勝手に実現させようとすることですね。官僚の世界ではめずらしくないと聞きますが、ネット社会においては忖度よりもタチの悪い現象がしばしば起こっています。裏付けを取らない「事実誤認」や「憶測」。そして、事実無根の誤報の拡散です。
ことの始まりは、2016年11月15発売のFLASH誌上。長年独身を通し、「お見合い歴30回以上」を誇ってきた彼女が、結婚宣言を放ったとの報道があったのです。お相手は、「定年になる13年まで慶大教授を務めた6歳年上のS氏」。
これは、慶應大学の現役教授で、阿川さんとは5歳差の曽根氏のプロフィールとはまるで違っています。同じなのは「S氏」「慶大教授」というキーワードだけです。
慶應義塾大学の教員名簿の中から、イニシャルSで比較的年齢の近い独身者を検索したのでしょうか?それでも彼女は「13年に定年になった」と言っているので、曽根氏が現役教授であることを知っている人なら、間違いようのない話です。
お相手が「一般人」であることに配慮して、阿川さんははっきりと身元を上げるようなことをせず、「69歳の一般男性『S氏』」として、「2、3年前に妻とは離婚」「趣味はゴルフと『数独』」などと断片的な情報を漏らすに留めたのです。これが「憶測」への引き金となりました。
彼女がこの手記の中で、実名という肝心な情報を開示していないことから、「兄の阿川尚之と元同僚」である曽根氏への「憶測」が広がったのだろうと、曽根氏自身は「推論」しています。
曽根氏自身は、ゼミのOB・OG会できっぱりと否定されたほかには、これまで特に対策は取ってこられませんでした。ネット上で何か発言をしても「火に油を注ぐだけ」という、雑誌の編集長だった知人の意見を取り入れたためです。
新聞や雑誌などで報道された場合と違って、ネット上で拡散していく誤報に対しては、相手が不特定多数のため、損害賠償や名誉毀損などを訴えることは難しくなります。また、芸能人ならともかく、大学教授が私生活にまつわる誤報についての記者会見を行うのもおかしな話です。
曽根氏があえて10MTVオピニオンの講義のテーマとして、この問題を取り上げたのは、身に覚えのない誤報の拡散が、誰にとっても他人事ではなく、食い止めたり対処したりすることの難しい問題だからです。
ある日突然、有名人の結婚相手と名指されたら?
政治学者で慶應義塾大学大学院教授・曽根泰教氏は、ある日突然、自分がエッセイストで作家の阿川佐和子氏の「お相手」に名指されていることに気づきました。両氏の間に接点は一切ありません。ことの始まりは、2016年11月15発売のFLASH誌上。長年独身を通し、「お見合い歴30回以上」を誇ってきた彼女が、結婚宣言を放ったとの報道があったのです。お相手は、「定年になる13年まで慶大教授を務めた6歳年上のS氏」。
これは、慶應大学の現役教授で、阿川さんとは5歳差の曽根氏のプロフィールとはまるで違っています。同じなのは「S氏」「慶大教授」というキーワードだけです。
慶應義塾大学の教員名簿の中から、イニシャルSで比較的年齢の近い独身者を検索したのでしょうか?それでも彼女は「13年に定年になった」と言っているので、曽根氏が現役教授であることを知っている人なら、間違いようのない話です。
「一般人」に配慮した手記が、ますます波紋を広げた
曽根氏としては、まさか記者会見をして否定するわけにもいきません。阿川さん本人による「(今更ですが)私、結婚しました」と題する独占手記が2017年5月18日発売の週刊文春に掲載されてからは、事態は収束するどころか、かえって拡散するばかりとなってきました。お相手が「一般人」であることに配慮して、阿川さんははっきりと身元を上げるようなことをせず、「69歳の一般男性『S氏』」として、「2、3年前に妻とは離婚」「趣味はゴルフと『数独』」などと断片的な情報を漏らすに留めたのです。これが「憶測」への引き金となりました。
彼女がこの手記の中で、実名という肝心な情報を開示していないことから、「兄の阿川尚之と元同僚」である曽根氏への「憶測」が広がったのだろうと、曽根氏自身は「推論」しています。
ネット上での否定発言は「火に油を注ぐだけ」?
FLASHの発売以降、曽根氏の元へは、身近な人からの問い合わせが相次ぎました。弟子たち、同僚の教授たち、関係する組織の事務局長などなど。いずれも、もし本当だったらお祝いをしなければならないとの善意が先立ってのことでしょう。曽根氏自身は、ゼミのOB・OG会できっぱりと否定されたほかには、これまで特に対策は取ってこられませんでした。ネット上で何か発言をしても「火に油を注ぐだけ」という、雑誌の編集長だった知人の意見を取り入れたためです。
新聞や雑誌などで報道された場合と違って、ネット上で拡散していく誤報に対しては、相手が不特定多数のため、損害賠償や名誉毀損などを訴えることは難しくなります。また、芸能人ならともかく、大学教授が私生活にまつわる誤報についての記者会見を行うのもおかしな話です。
曽根氏があえて10MTVオピニオンの講義のテーマとして、この問題を取り上げたのは、身に覚えのない誤報の拡散が、誰にとっても他人事ではなく、食い止めたり対処したりすることの難しい問題だからです。
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