社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2017.06.28

コスパ最高の「もやし」に栄養はあるのか?

 一見栄養なんてなさそうに見える野菜、もやし。一方で「栄養たっぷりで家計の味方!」なんて評価もあります。その真実の姿はいったいどちらなのでしょうか?

「豊富」派の主張は…様々な栄養素あり

 もやしは栄養豊富派の主張から見てみましょう。「もやし生産者協会」のホームページでは「もやしはいろいろな栄養素をふんだんに含んだヘルシーな食品です」と紹介。もやしに含まれる栄養素としてカルシウム、カリウム、葉酸、ビタミンB1、ビタミンC、食物繊維、アスパラギン酸を挙げ、「心臓機能や筋肉機能を調節」「便秘や糖尿病、大腸ガンといった生活習慣病を予防・改善する」「カゼの予防にも最適」「スタミナをつけたり疲労を回復させる効果」などそれぞれの効能も詳細に説明しています。

 その他にも、もやしの栄養効果を主張するホームページは数多くありますが、共通しているのはもやしに様々な栄養素が含まれていることは書かれているものの、その量についてはあまり触れていないこと。様々な栄養素が含まれ、それが体にいいことは確かですが、豊富というからには分量が多いかどうかも非常に重要です。

小松菜と栄養素対決!果たしてその結果は

 では、その分量を文部科学省のサイト「食品成分データベース」で見てみましょう。もやしは大きく分けて緑豆もやし、だいずもやし、ブラックマッペもやしの三種類ありますが、スーパーなどでよく見かける緑豆もやし(生)の場合、100gあたり14kcal、カルシウム10mg、葉酸41μg、ビタミンC8mgとなっています。

 この数字だけでは栄養豊富かどうかぱっと見よくわからないと思うので、他の野菜と比較してみましょう(全て100gあたり)。カルシウムが豊富なことで知られる小松菜は170mg。もやしの17倍です。ちなみに小松菜は葉酸110mg、ビタミンC65mg。どれももやしに圧勝です。

 残念ながらもやしが栄養豊富とは言いづらい結果が出てしまいましたが、最も手に入れやすい緑豆もやしより比較的栄養が多いのはだいずもやし。たんぱく質、カリウム、カルシウム、葉酸など緑豆もやしの2倍以上の数値を誇ります。

 そして「家計の味方」かどうか、これは間違いなくイエスと言えます。一袋は300~400gほど入り、20~30円で買えることがほとんど。安売りだと20円を切るスーパーもあるかもしれませんね。もやしが何よりも優秀なのは一年間を通して値段のブレがほとんどないこと。上に挙げた小松菜を始め、野菜は季節や天候によって値段が大きく変動しますが、もやしは室内で育てられるためそうした外部要因に左右されないのです。

 お財布に優しい一方で、2017年3月にもやし生産者協会が「上がり続ける『生産コスト』、上がらない『販売価格』」と窮状を訴え話題にもなりました。いつでもお手頃価格でもやしが手に入ることは消費者にとって大変ありがたいことですが、生産者にとって適正な価格にしていくことも忘れてはいけないですね。

<参考サイト>
・もやし生産者協会 もやしの栄養
http://www.moyashi.or.jp/nutrition/
・食品成分データベース
https://fooddb.mext.go.jp/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか

葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか

葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化

浮世絵を中心に日本画においてさまざまな絵画表現の礎を築いた葛飾北斎。『富嶽三十六景』の「神奈川沖浪裏」が特に有名だが、それを描いた70代に至るまでの変遷が実に興味深い。北斎とその娘・応為の作品そして彼らの生涯を深...
収録日:2025/10/29
追加日:2025/12/05
堀口茉純
歴史作家 江戸風俗研究家
2

なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために

なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために

エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如

現代社会にとって空海の思想がいかに重要か。AIが仕事の仕組みを変え、超高齢社会が医療の仕組みを変え、高度化する情報・通信ネットワークが生活の仕組みを変えたが、それらによって急激な変化を遂げた現代社会に将来不安が増...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/12
3

ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害

ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害

内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害

高度成長のために頑張った日本は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の評価を得たが、その後の日本企業の凋落、競争力の低下を考えると、その弊害を感じずにはおられない。読書人口が減っている現状をみると、いつのまにか「世界...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/12/01
4

なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る

なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る

学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち

たかが「1」、されど「1」――今、数の意味が理解できない子どもがたくさんいるという。そもそも私たちは、「1」という概念を、いつ、どのように理解していったのか。あらためて考え出すと不思議な、言葉という抽象概念の習得プロ...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/10/06
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
5

日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは

日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは

歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本

「歴史を探索していく」とは、どういうことなのだろうか。また、「歴史を活かしていく」とはどういうことなのだろうか。歴史作家の中村彰彦氏に、歴史を探り、活かしていく方法論を、具体的に教えてもらう本講義。第一話は、歴...
収録日:2025/04/26
追加日:2025/11/14