社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2017.10.01

やっぱり安定?公務員の平均年収とは

 2015年10月に共済年金制度が廃止され、年金が一本化されたことで「官民格差」はずいぶん縮まった印象があります。そんな中、12月になると聞こえてくるのが、「人事院勧告」の実施状況です。国家公務員の月給とボーナス(期末・勤勉手当)の動向は、政府の給与関係閣僚会議と閣議を経て、通常国会で定められるのです。税金の納め手としての私たちは、やはり公務員の年収から目が離せません。

やっぱり強い! 「親方日の丸」の実情

 三段階の審議を経て決められる国家公務員年収。平成27年度の給与改定を受けた「平成29年国家公務員給与等実態調査の結果概要」が平成29年8月にまとめられています。

 全職員の平均給与月額は416,969円で、前年より425円(0.1%)減少したと報告されています。実際には、これに月給の4.2カ月分の夏冬ボーナスが加算されます。国家公務員の平均年収は675万5千円程度と計算できます。

 国税庁「民間給与実態統計調査」(平成27年分)によるサラリーマン全体の平均年収は420万円(男性521万円、女性276万円)、1世帯あたり所得の中央値は428万円(厚労省国民生活基礎調査)ですから、年収でおよそ1.5倍。業績に振りまわされる不安もなく、安定性は他業種に類をみません。

国家公務員を「超えている」地方公務員は?

 国家公務員の場合ほど注目されることなく、給与も手当も条例によって決められる地方公務員はどうなっているのでしょう。

 総務省発表の「地方公務員給与実態調査」(2015年度版)データをみると、全自治体の平均年収は590万円。都道府県では、1位は東京都730万円、2位は大阪府704万円、3位は滋賀県698万円(47位は沖縄県643万円)。市町村の高給取りは、それを上回ります。1位は同額で武蔵野市と厚木市の737万円、3位は東京都中野区733万円(ワーストは大分県姫島村415万円)です。

「地方消滅」の危機を感じさせない公務員の安定ぶり

 一時期、地方公務員の給与が国家公務員を上回る「逆転現象」が問題とされ、総務省の指導がなされました。それでも現在、国家公務員が来年もらえる675.5万円を超える年収のあった地方自治体は、集計対象となった1786自治体のうち119が該当します。

 「東京一極集中」に頭を痛め、このままでは「地方消滅」さえ起こりかねないと危惧されている地方都市で、公務員の地位だけは安泰に推移するのでしょうか。

国家公務員より高給取りの独立行政法人って?

 独立行政法人とは、国際協力機構(JICA)や理化学研究所(RIKEN)、造幣局(MINT)など、「公的」な目的の実現のために設立された法人のこと。総務省の調査では平均年間給与676.8万円(平成26年)と発表されましたが、これは事務・技術職員の平均値。独立行政法人には研究職員が多く、その平均年収は905.5万円にのぼっています。

 さらに全国の独立行政法人の年収トップ5をみると、すべて病院医師に締められます。1位は国立長寿医療研究センター1501.1万円、2位は国立精神・神経医療研究センター1481万円、3位は国立がん研究センター1452.9万円、4位は国立成育医療研究センター1422.3万円、5位は国立病院機構1391.6万円などです。

 ちなみに、サラリーマンの平均年収420万円を下回る公務員は、全国でも大分県姫島村(415万円)と新潟県粟島浦村(417万円)だけ。500万円以下の年収に甘んじているのは全国57自治体に過ぎません。

<参考サイト>
・平成29年国家公務員給与等実態調査の結果概要
http://www.jinji.go.jp/kyuuyo/index_pdf/koumu_jittai.pdf
・平成28年地方公務員給与実態調査結果等の概要
http://www.soumu.go.jp/main_content/000391686.pdf
・最新!「公務員年収ランキング」トップ500
http://toyokeizai.net/articles/-/169297
・最新!「公務員年収ランキング」ワースト500
http://toyokeizai.net/articles/-/169489
・独立行政法人における役職員の給与水準の公表について
http://www.soumu.go.jp/main_content/000439925.pdf
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
自分を豊かにする“教養の自己投資”始めてみませんか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み

なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み

何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み

なぜ「何回説明しても伝わらない」という現象は起こるのか。対人コミュニケーションにおいて誰もが経験する理解や認識の行き違いだが、私たちは同じ言語を使っているのになぜすれ違うのか。この謎について、ベストセラー『「何...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/02
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
2

「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方

「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方

戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題

保守的な軍国化によって、内戦への機運が高まっているアメリカだが、MAGAと極左という対立図式は表面的なものにすぎない。その根本に横たわっているのは白人とユダヤ人という人種の対立であり、それはカーク暗殺事件によって露...
収録日:2025/09/24
追加日:2025/11/06
東秀敏
米国大統領制兼議会制研究所(CSPC)上級フェロー
3

『孟子』に学ぶ、リーダーが過酷な境遇に追い込まれる意味

『孟子』に学ぶ、リーダーが過酷な境遇に追い込まれる意味

徳と仏教の人生論(5)陰陽と東洋思想を知ることの意味

宇宙や人生の本質について考察を深めていく今回の講義。前回に続く、宇宙がもう1つの宇宙のような存在をつくりたくて人間を創造したという話は非常に興味深い。陰陽(陰と陽)の両面を理解し、自然の摂理に根差した東洋思想を深...
収録日:2025/05/21
追加日:2025/11/07
4

ソニー流「人材の活かし方」「多角化経営の秘密」を学ぶ

ソニー流「人材の活かし方」「多角化経営の秘密」を学ぶ

編集部ラジオ2025(26)ソニー流!多角化経営と人材論

「人的資本経営」という言葉が、よく聞かれるようになりました。端的にいえば、「人材=コスト」ではなく「人材=資本」として捉え、人を大切にしていこうという考え方です。

「人を大切にする」というのは別に新しい...
収録日:2025/09/29
追加日:2025/11/06
5

職場への不満は6割以上~ポイントは隠蔽、心理的安全性…

職場への不満は6割以上~ポイントは隠蔽、心理的安全性…

組織心理学~「不満」を生かす(1)不満・相談・予防

「職場に不満を持っている人が6~7割いる」というデータがある。経営者にとっては衝撃的なデータだが、実はリーダーのリーダーシップによってその割合は大きく変わるという。いったいどういうことなのか。不満にも妬み同様「い...
収録日:2023/06/21
追加日:2023/12/08
山浦一保
立命館大学 スポーツ健康科学部 教授 博士(学術:広島大学)