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DATE/ 2024.05.06

日本人でも知っておきたい世界の「タブー」

 世界にはさまざまな習慣、そして犯してはならない「タブー」があります。日本ではごく当たり前の行為でも、外国人から見たらひんしゅくを買うこともしばしば。しかし裏を返せば、タブーを知ることで宗教、文化、習慣の違いの理解につながるともいえます。

 海外旅行の時はもちろん、多様化していくこれからの時代に対応していくためにも、ぜひ世界のタブーを知っておきましょう。

食べ物のタブー

 無意識に神社で手を合わせるように、宗教は人びとの生活に根ざしているものです。その宗教の特色をあらわす顕著な例が、食のタブーといえるでしょう。

 そこで食に関するタブーについて、宗教別で見ていくことにします。

キリスト教(欧米、ロシア、オーストラリア、南アフリカなど)

 特別なタブーがあるのは一部のみ。「食事中に音を立てない(すすらない)」といった洋食の一般的なマナーはありますが、食べ物の制限はあまりないようです。

 ただし末日聖徒イエス・キリスト教会(モルモン教)は飲食に関して戒律が厳しく、酒やコーヒー、紅茶は口にできないなど、独特の制約があることが知られています。

イスラム教(東南アジア、中東、北アフリカなど)

 ハラールであればOK。豚肉・酒はNG。法にのっとったもの、あるいは規定された方法でのみ調理されたもの(ハラール)しか食べることができません。特に豚は穢れた動物であり、豚肉を食すことはもちろん、触れることさえも禁忌です。牛肉食はOKですが、ハラール指定でなければNGです。

 飲酒も禁止です。敬虔な教徒のなかにはアルコール成分を原料に使ったものや、アルコール除菌や消毒もタブーとする人もいます。

 そのためイスラム教徒の人へのお土産に醤油(醸造過程でアルコール成分が生じる)やみりん、洋酒の入ったお菓子などは選ぶべきではないでしょう。

 ちなみにイスラム教と神を同じくするユダヤ教にもハラールに似た「コーシェル」があります。禁忌が細かく厳格な戒律があることで有名なユダヤ教ですが、コーシェルであればワインは口にすることが可能です。

・ヒンドゥー教(インド、ネパールなど)

 牛肉NG。直箸や回し飲みも厳禁。牛は神聖な生き物とされているため、食べることはおろか、追い立てることも禁じられています。

 また人が口をつけたものも不浄として避けられます。そのため日本でいう「直箸」で食事を分け合ったり、箸をつつきあう鍋料理には、非常に抵抗感があるそうです。

 「ちょっとちょうだい」と他人の皿に手を出す、回し飲みをするなどは、旅先でうっかりやってしまいがちです。特に人口の80%がヒンドゥー教徒というインドでは、控えるべき行為でしょう。

 以上、ここに挙げたタブーはほんの一部です。すべてのタブーを把握するのは困難ですが、信者の信仰心を逆なでするような言動は最低限、慎むべきと心得ましょう。

行為、しぐさのタブー

 海外でやってしまいがちな、何気ない行為がタブーとなるパターンをご紹介します。

・ピースサイン

 手のひらをカメラに向けている通常の形は問題ないですが、手の甲を向けるポーズは要注意。特にイギリスやカナダ、ニュージーランドでは性的侮辱を表すとされています。

・OKサイン

 フランスでは「無価値」「ゼロ」という意味です。ギリシャやトルコ、中東、ロシア、ブラジルなどでは「おしりの穴」を想起させ、嫌悪の対象となります。

・指さし

 他意はなくとも、海外では相手に対する侮辱・侮蔑だと考え不快になる人がほとんどです。ついやってしまいがちな人は気をつけましょう。

・靴を脱ぐ、靴を贈る

 欧米だと土足で生活するイメージがありますが、日本と気候風土の似た朝鮮半島や、北欧、カナダの一部などでは靴を脱ぐ習慣があります。

 また、アラブのモスクに入る時は靴裏を合わせて持って行くことが習わしです。下足という点では日本人よりも嫌悪し、タブー視している風潮があるため、靴のプレゼントは御法度となります。

さいごに

 世界のさまざまなタブーをご紹介しました。いかがでしたか?

 他国のタブーを知ることは、異文化コミュニケーションの第一歩。タブーに対する理解を深め、自分の人生をより彩り豊かなものにしていきましょう。

<参考文献>
・『世界のタブー』(阿門禮著、集英社新書)
・『90分でわかる!ビジネスマンのための「世界の宗教」超入門』(井上順孝編著、東洋経済新報社)
・『一冊でわかる イラストでわかる 図解宗教史』(塩尻和子、津城寛文、吉永千鶴子監修、成美堂出版編集部、成美堂出版)
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