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地方活性化のため「にぎわい」をデザインする方法に注目
人口減少が進行するなか、政府は「地方創生」を掲げ、地方都市は変革が求められています。しかしながら、なかなかうまくいっていないのが現状です。どうすれば、地方は「にぎわい」を取り戻すことができるのか。『地方都市を公共空間から再生する 日常のにぎわいをうむデザインとマネジメント』(柴田久著、学芸出版社)をもとにご案内します。
本書の著者・柴田久氏は福岡大学工学部社会デザイン工学科教授で、景観設計、公共空間のデザイン、まちづくりが専門です。これまで国内外のたくさんの地方活性化のプロジェクトに取り組んできました。
「N」とは「日常性」のことで、「『日常性』こそにぎわいを支え続ける根本」であり、「いかに普段から使われる場所となり得るか」がポイントとのこと。
「H」は「波及性」のことで、その主旨について「整備された公共空間だけで人の動きや消費活動が完結しないこと、それらの施設を拠点としながら、周辺への回遊が促される工夫を十分検討しなければならない」と述べています。
「K」は「継続性」のことで、これには2つの意味が込められています。一つは文字通り、「施設の継続的運用」のことです。もう一つは、整備を進めるうえで、それぞれの地域の「愛すべき、生かすべき、場所や空間の履歴」、「市民の愛着」をできるだけ継承していくということです。
「にぎわいをつくるためには、そこが居心地の良い場所であることは必須の条件といえる」とも述べており、居心地を考える手すりとして、景観工学における「プロスペクト・リフュージ理論」を紹介しています。これは「人は生態的に自分の身を隠しながら、自分の視界が確保される場所を好み、そうした場所に居心地の良さを感じる」というものです。この理論を提唱したイギリスの地理学者ジェイ・アプルトン氏によると、この感覚は「狩猟民族」だったころに培われた本能なのだそうです。
わかりやすい例では、施設内の座席の設置位置をデザインする際に活用できるということです。この理論をもとに考えると、例えば、どんなに広い空間においても、いくらスペースが空いているからといって、空間を埋め尽くすような座席の設置をしてはいけないことが分かります。そうすると、居心地の良さが失われ、結果的に「にぎわい」が失われることになるのです。
一方でデメリットも指摘しています。第一に、世界遺産に登録後、観光という点にばかり注目が集まり、「本来重視すべき地道な景観保全活動や住民に対する説明、活性化施策などの積み重ねが軽視される危険性がある」ことです。第二に、「世界遺産登録の審査で除外された地域に対する価値意識の低下」です。これは、除外されたエリアの価値が低い、あるいは価値がないかのような錯覚を起こしてしまう危険性があると言い換えることができます。第三に、観光効果の「恩恵を全く受けない、むしろ人が増えることで迷惑を被る可能性のある人たちがいることを忘れてはならない」という点です。第四に、道路など社会基盤の整備が観光客の利便性を優先した形で行われることにより、「本来の伝統的風景が壊されてしまう可能性」があることです。
地域の活性化に一つの正解はありません。それぞれの地域がそれぞれの答えを発見していかなければいけません。柴田氏は「美しく魅力的な景観には人が笑顔で居心地よく過ごしている様子が不可欠である」と述べ、いかに「より多くの人々の笑顔」を引き出すことができるかを大切にしているのだそうです。やはり、人の「にぎわい」をとても重視しているのです。
そういう意味では、柴田氏の発想は、地域の活性化に限らず、人が交わるあらゆる「場づくり」に通じているといえます。家庭や職場やクラブ活動など、日常に「にぎわい」が不足しているなと感じたら、「N・H・K」や「プロスペクト・リフュージ理論」を取り入れてみてはいかがでしょうか。
本書の著者・柴田久氏は福岡大学工学部社会デザイン工学科教授で、景観設計、公共空間のデザイン、まちづくりが専門です。これまで国内外のたくさんの地方活性化のプロジェクトに取り組んできました。
地方活性化のためのN・H・Kとは
柴田氏は、地方活性化のため「N・H・K」という3つのポイントを紹介しています。「N」とは「日常性」のことで、「『日常性』こそにぎわいを支え続ける根本」であり、「いかに普段から使われる場所となり得るか」がポイントとのこと。
「H」は「波及性」のことで、その主旨について「整備された公共空間だけで人の動きや消費活動が完結しないこと、それらの施設を拠点としながら、周辺への回遊が促される工夫を十分検討しなければならない」と述べています。
「K」は「継続性」のことで、これには2つの意味が込められています。一つは文字通り、「施設の継続的運用」のことです。もう一つは、整備を進めるうえで、それぞれの地域の「愛すべき、生かすべき、場所や空間の履歴」、「市民の愛着」をできるだけ継承していくということです。
狩猟民族の頃に培われた本能
前述のとおり、柴田氏は景観設計が専門です。その立場から「N・H・K」を活用する技術として「景観デザイン」の有効性を指摘しています。これは言い換えれば、「にぎわい」を視覚的にデザインするということでしょう。「にぎわいをつくるためには、そこが居心地の良い場所であることは必須の条件といえる」とも述べており、居心地を考える手すりとして、景観工学における「プロスペクト・リフュージ理論」を紹介しています。これは「人は生態的に自分の身を隠しながら、自分の視界が確保される場所を好み、そうした場所に居心地の良さを感じる」というものです。この理論を提唱したイギリスの地理学者ジェイ・アプルトン氏によると、この感覚は「狩猟民族」だったころに培われた本能なのだそうです。
わかりやすい例では、施設内の座席の設置位置をデザインする際に活用できるということです。この理論をもとに考えると、例えば、どんなに広い空間においても、いくらスペースが空いているからといって、空間を埋め尽くすような座席の設置をしてはいけないことが分かります。そうすると、居心地の良さが失われ、結果的に「にぎわい」が失われることになるのです。
世界遺産登録の功罪
地域のブランドづくりに取り組むうえで、世界遺産登録は大変なインパクトがあります。2017年、「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」が登録されて大きな話題になりました。柴田氏も「世界遺産登録というブランドを獲得することで、住民の郷土に対する誇り、愛着の促進や、観光客の増加といった地域の活性化が目論まれいることは言うまでもない」と述べています。一方でデメリットも指摘しています。第一に、世界遺産に登録後、観光という点にばかり注目が集まり、「本来重視すべき地道な景観保全活動や住民に対する説明、活性化施策などの積み重ねが軽視される危険性がある」ことです。第二に、「世界遺産登録の審査で除外された地域に対する価値意識の低下」です。これは、除外されたエリアの価値が低い、あるいは価値がないかのような錯覚を起こしてしまう危険性があると言い換えることができます。第三に、観光効果の「恩恵を全く受けない、むしろ人が増えることで迷惑を被る可能性のある人たちがいることを忘れてはならない」という点です。第四に、道路など社会基盤の整備が観光客の利便性を優先した形で行われることにより、「本来の伝統的風景が壊されてしまう可能性」があることです。
地域の活性化に一つの正解はありません。それぞれの地域がそれぞれの答えを発見していかなければいけません。柴田氏は「美しく魅力的な景観には人が笑顔で居心地よく過ごしている様子が不可欠である」と述べ、いかに「より多くの人々の笑顔」を引き出すことができるかを大切にしているのだそうです。やはり、人の「にぎわい」をとても重視しているのです。
そういう意味では、柴田氏の発想は、地域の活性化に限らず、人が交わるあらゆる「場づくり」に通じているといえます。家庭や職場やクラブ活動など、日常に「にぎわい」が不足しているなと感じたら、「N・H・K」や「プロスペクト・リフュージ理論」を取り入れてみてはいかがでしょうか。
<参考文献>
『地方都市を公共空間から再生する 日常のにぎわいをうむデザインとマネジメント』
(柴田久著、学芸出版社)
http://book.gakugei-pub.co.jp/mokuroku/book/ISBN978-4-7615-2660-3.htm
<関連サイト>
福岡大学 景観まちづくり研究室
http://www.tec.fukuoka-u.ac.jp/tc/labo/keikan/home.htm
『地方都市を公共空間から再生する 日常のにぎわいをうむデザインとマネジメント』
(柴田久著、学芸出版社)
http://book.gakugei-pub.co.jp/mokuroku/book/ISBN978-4-7615-2660-3.htm
<関連サイト>
福岡大学 景観まちづくり研究室
http://www.tec.fukuoka-u.ac.jp/tc/labo/keikan/home.htm
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