社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2018.01.07

気付いたときには遅すぎる…「隠れ疲労」とは?

 日々の疲れ、きちんとリセットできていますか?なんとなく疲れがとれない、睡眠時間は確保しているのにぐっすり寝た気がしない…そんなぐったり感の原因は「隠れ疲労」にあるかもしれません。電車に乗って座るとすぐ寝落ちてしまう、夜中に何度も起きてしまう、体にヘルペスができてしまうといった症状は隠れ疲労によるものである可能性も。今回はこの「隠れ疲労」について紹介しましょう。

疲労のメカニズム

 『隠れ疲労 休んでも取れないグッタリ感の正体』(梶本修身著、朝日新書)によると、疲労の原因は自律神経が活性酸素に攻撃されるためだということが、最近の研究で明らかになりました。そこで、まず疲労のメカニズムから説明します。

 私たちの体は日々活動するときに筋肉や脳を使っていますが、これには大量の酸素を消費しています。そしてそのうちの1~2%は、細胞を酸化させる力を持つ活性酸素に変化してしまいます。私たちがからだに命令する司令塔の立場にある自律神経系が活性酸素によって消耗することで疲れを感じるようになっているのです。

疲れが隠れ疲労になってしまうのは

 この消耗に対して、人間の体には細胞を守るシステムも当然備わっていますが、過度な活動によって活性酸素が大量に発生してしまい、修復が追いつかなくなってしまうと、疲労状態が継続してしまうことになります。すると体は「休んでほしいと」いう信号を出しますが、脳が興奮や幸福などの状態になったことでこの信号を無視してしまうことがあるのです。こうなってしまうと、本来であれば休まなければならないタイミングで休めずに疲労が蓄積していってしまい、最悪の場合は過労死に至るケースもあります。

疲労に対抗する2つの方法

 充分な睡眠時間、規則正しい生活をすることが病気の対策ではありますが、模範的な生活を送るのはなかなか難しいもの。そこで疲労に対抗するために重要なポイントをおさえておきたいですね。

 疲労の最大の対策は「良質な睡眠」です。自律神経の修復が間に合わないと疲労が蓄積しますが、睡眠中は活性酸素の活動が抑えられるため、体にとって修復のための時間となります。ただし、寝ているときであっても睡眠時無呼吸症候群であったり、部屋の温度によっては体温調節が必要になったりすると、自律神経は働かなくてはならなくなります。睡眠時には心身がリラックスできるように快適な環境を作ることが大切です。

 また疲れたとき、効果的に自律神経の修復を促してくれる成分に「イミダペプチド」というものがあります。これは活性酸素の酸化と細胞の機能低下を抑える性質があるとされ、とりのむね肉などに多く含まれています。1日に必要な摂取量はコンビニで売っているサラダチキンひとつでまかなえるので、疲れがちな方は食事に取り入れてみるのもいいのでは。ちなみにイミダペプチドは熱に強く水に溶けやすいので、さまざまな調理法をしても摂取することができます。

日本人の真面目さがあだになる

 責任感を持ってキツくてもやり遂げることを美徳とする日本人は、どうしても無理をしすぎる真面目な人が多いのですが、何事も体が資本です。もし疲労に気付けないまま体が限界を迎えて、過労死ということになってしてしまったら元も子もありません。忙しい日々に追われてしまいがちですが、時には自分の体と心に耳を傾けて、きちんと休息をとる日を設けるように心がけることが大切です。

<参考文献>
『隠れ疲労 休んでも取れないグッタリ感の正体』(梶本修身著、朝日新書)
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム

デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム

デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム

初めて会った人なのになぜか好意を抱いてしまうことがある。だが、なぜそうした衝動が生じるのかは疑問である。デカルトが友人シャニュに宛てた「愛についての書簡」から話を起こし、愛をめぐる精神と身体の関係について論じる...
収録日:2018/09/27
追加日:2019/03/31
津崎良典
筑波大学人文社会系 教授
2

『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割

『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割

何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制

「バイアスがかかる」と聞くと、つい「ないほうが望ましい」という印象を抱いてしまうが、実は人間が生きていく上でバイアスは必要不可欠な存在である。それを今井氏は「マイワールドバイアス」と呼んでいるが、いったいどうい...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/09
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
3

偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動

偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動

内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解

アメリカの大転換はトランプ政権以前に起こっていた。1980~1990年代、情報機器と金融手法の発達、それに伴う法問題の煩雑化により、アメリカは「ラストベルト化」に向かう変貌を果たしていた。そこにトランプの誤解の背景があ...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/11/11
4

「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方

「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方

戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題

保守的な軍国化によって、内戦への機運が高まっているアメリカだが、MAGAと極左という対立図式は表面的なものにすぎない。その根本に横たわっているのは白人とユダヤ人という人種の対立であり、それはカーク暗殺事件によって露...
収録日:2025/09/24
追加日:2025/11/06
東秀敏
米国大統領制兼議会制研究所(CSPC)上級フェロー
5

宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由

宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由

徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題

半世紀ほど前、松下幸之助に経営者の条件について尋ねた田口氏は、「運と徳」、そして「人間の把握」と「宇宙の理法」という命題を受けた。その後50年間、その本質を東洋思想の観点から探究し続けてきた。その中で後藤新平の思...
収録日:2025/05/21
追加日:2025/10/24