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DATE/ 2018.01.10

JRと私鉄、意外と知らない「年収格差」

 鉄道ファンにとっては簡単な問題、JRから私鉄まで、全国で鉄道事業を営む会社がいくつあるかご存じでしょうか?また、その事業実態は?

 「乗り鉄」「撮り鉄」「録り鉄」など、多々ある鉄道ファンの究極形態としては「就鉄」、つまり鉄道会社への就職がありそうです。そして気になるのは、JRから私鉄まで鉄道事業を営む会社の平均年収です。

 そんな素朴な疑問に答えるよう、東洋経済ONLINEでは、国土交通省が公表する「鉄道統計年報」をもとに、全国で鉄道事業を営む206社の平均年収ランキングを記事にしています。それらを参照しながら、鉄道事業とその年収についてみていきましょう。

鉄道事業平均年収ランキング

順位 事業者/一人あたりの平均年収
1位 成田空港高速鉄道/1188万円
2位 立山黒部貫光/826万円
3位 阪急電鉄/825万円
4位 北大阪急行電鉄/794万円
5位 横浜市/786万円
6位 神戸高速鉄道/775万円
7位 東京急行電鉄/770万円
8位 大阪外環状鉄道/765万円
9位 JR東海/763万円
10位 神戸市/757万円

 ここでの平均年収の算出は、国土交通省が例年公表している鉄道統計年報(平成26年度版)を元にしています。

 その年収平均は、662万円になるとのこと。平成26年度の平均年収が415万円でしたので、その格差たるや驚くばかりの高水準といってよいでしょう。

 意外にもJRがベスト10に1社しかランキングしていないこと、そして私鉄の強さを伺い知ることができます。

私鉄とJRの平均年収ランキング

 私鉄とJR、それぞれのランキングもみてみましょう。まずは私鉄ベスト10から。

順位 事業者/一人あたりの平均年収
1位 阪急電鉄/825万円
2位 東京急行電鉄/749万円
3位 京王電鉄/744万円
4位 相模鉄道/720万円
5位 東京地下鉄/715万円
6位 小田急電鉄/695万円
7位 京浜急行電鉄/692万円
8位 京成電鉄/692万円
9位 京阪電気鉄道/685万円
10位 西武鉄道/662万円

 つぎにJR。

順位 事業者/一人あたりの平均年収
1位 JR東海/763万円
2位 JR東日本/704万円
3位 JR西日本/661万円
4位 JR九州/582万円
5位 JR四国/542万円
6位 JR貨物/534万円
7位 JR北海道/532万円

 私鉄とJRの格差実態から、エリアによる格差を分かりやすく知ることができます。これらの格差は事業全体に起因し、鉄道事業だけではなく、多角的な事業展開をしていることが大きく影響していることに注意が必要です。

鉄道事業実態

 日本での鉄道開設は 1872年です。よく知られている新橋=横浜間を嚆矢として、鉄道事業は官有,私有の2本立てで進められてきました。1906年に鉄道国有化法が公布され,全国的な幹線は日本国有鉄道(JR各社の前身)が,地方鉄道は民間会社がそれぞれ経営するようにして成り立ちました。

 民間鉄道会社は都市周辺の電気鉄道として、関東地区の東急,東武,西武,京浜,京王帝都,小田急,京成,相鉄,関西地区の阪急,近鉄,京阪,阪神,南海,名古屋地区の名鉄,九州地区の西鉄の 15社がよく知られています。

 そして、事業形態は大きく3つに分類することができます。自らの車両と線路で運営管理する「第1種鉄道事業者」、他社の線路を借りて事業を営む「第2種鉄道事業者」、保有する線路を貸して収入を得る「第3種鉄道事業者」になります。

 ちなみに、今回の平均年収のTOPにランキングされている成田空港高速鉄道は、成田空港周辺の路線およそ18キロメートルを保有し、そこに乗り入れるJR東日本と京成電鉄から線路使用料を得ている事業体になります。

 まとめとして、鉄道事業は全体的に高水準な平均年収であることが分かります。しかしそれは、氷山の一角で、下位ランキングのデータを総合すると、鉄道事業そのものというよりは、事業形態とその多角性が影響して、地域格差が歴然として残されていることを合わせて知るべきでしょう。

<参考サイト>
・東洋経済ONLINE:鉄道事業を営む206社の平均年収ランキング
http://toyokeizai.net/articles/-/175455
・国土交通省:鉄道統計年鑑
http://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_tk2_000038.html
・国税庁:平成26年分民間給与実態統計調査結果について
https://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2015/minkan/
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