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朝のラッシュ時の電車遅延…多い路線とその理由
電車は、生活や経済にとって大切なインフラです。とくに都市部に住む多くの人にとっては、通勤や通学に欠かせない存在でもあります。『定刻発車 : 日本の鉄道はなぜ世界で最も正確なのか?』(三戸祐子著、新潮文庫)においても、「世界で最も正確」といわれている日本の鉄道運行ですが、それでも朝のラッシュ時などにたびたび遅延が起こっていることも事実です。
国土交通省の交通政策審議会も「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について(答申)」で「混雑による乗降時間の増大やラッシュ時間帯における高頻度の列車運行等に伴い短時間の遅延が慢性的に発生している」ことを懸念しています。今回は首都圏のデータを中心に、電車の遅延が多い路線やその理由、そして対策についてまとめてみました。
<10分以上の遅延発生回数・路線別ランキング(2014年11月~2015年10月)>
1 JR 宇都宮・高崎線(上野~那須塩原・神保原) 3.0日
2 JR 埼京・川越線(大崎~武蔵高萩) 3.0日
3 JR 東海道線(東京~湯河原) 2.9日
4 JR 横須賀・総武快速線(大船~稲毛) 2.6日
5 JR 中央・総武線各停(三鷹~千葉) 2.4日
6 JR 中央快速・中央本線(東京~甲府) 2.3日
7 JR 京浜東北・根岸線 2.2日
8 JR 山手線 1.8日
9 東京メトロ 半蔵門線 1.7日
10 小田急 小田原線(支線含む) 1.6日
11 東京メトロ 有楽町線 1.3日
12 東京メトロ 千代田線 1.3日
13 JR 常磐快速・常磐線(上野~羽鳥) 1.3日
14 JR 青梅線 1.2日
15 東京メトロ 東西線 1.2日
16 東急 東横線 1.1日
17 東京メトロ 副都心線 1.1日
※資料にはグラフのみの記載で数値の明記がないため、小数点以下の日数は目盛りから判読しました。
1~7位までの7路線が1週間に2回以上、8~17の10路線は1週間に1回以上遅延していることになります。
資料によると、「小規模な遅延(10未満の遅延)」の発生原因は、鉄道事業者側の「部内原因」が約6%に対し、利用者に関連するものなどの「部外原因」が約94%となっています。なお、原因別の内訳では、乗車時間超過が47.2%、ドアの再開閉が16.0%と利用者起因が約63.2%を占めています。
一方、「大規模な遅延(30分以上の遅延)」の発生状況や原因については、「部内原因」が約23%、「部外原因」が約68%、そして「災害原因」が約8%となっています。このように、部内原因と災害原因が全体の約3分の1を、のこりの約3分2を部外原因が占めておいます。その内訳は、自殺が43.6%、線路立入等が21.8%と、こちらも人的要因が多くの割合を占めています。
ただし、遅延発生の最大要因は「利用者起因」「部外原因」ですので、やはり「鉄道利用者との協働」はかかせません。遠回りのようでいて、一人ひとりの乗客が乗車マナーを向上させることが、最大の遅延対策となるでしょう。
国土交通省の交通政策審議会も「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について(答申)」で「混雑による乗降時間の増大やラッシュ時間帯における高頻度の列車運行等に伴い短時間の遅延が慢性的に発生している」ことを懸念しています。今回は首都圏のデータを中心に、電車の遅延が多い路線やその理由、そして対策についてまとめてみました。
遅延の多い路線ランキング「ワースト17路線」
首都圏の遅延については、「遅延対策ワーキング・グループ最終取りまとめ」(交通政策審議会陸上交通分科会鉄道部会ほか)の資料編にグラフが掲載されており、45路線の1週間(平日5日間)当たり遅延発生回数がまとめられています。そのうち、1週間に1回以上の遅延が発生している「ワースト17路線」が以下になります。<10分以上の遅延発生回数・路線別ランキング(2014年11月~2015年10月)>
1 JR 宇都宮・高崎線(上野~那須塩原・神保原) 3.0日
2 JR 埼京・川越線(大崎~武蔵高萩) 3.0日
3 JR 東海道線(東京~湯河原) 2.9日
4 JR 横須賀・総武快速線(大船~稲毛) 2.6日
5 JR 中央・総武線各停(三鷹~千葉) 2.4日
6 JR 中央快速・中央本線(東京~甲府) 2.3日
7 JR 京浜東北・根岸線 2.2日
8 JR 山手線 1.8日
9 東京メトロ 半蔵門線 1.7日
10 小田急 小田原線(支線含む) 1.6日
11 東京メトロ 有楽町線 1.3日
12 東京メトロ 千代田線 1.3日
13 JR 常磐快速・常磐線(上野~羽鳥) 1.3日
14 JR 青梅線 1.2日
15 東京メトロ 東西線 1.2日
16 東急 東横線 1.1日
17 東京メトロ 副都心線 1.1日
※資料にはグラフのみの記載で数値の明記がないため、小数点以下の日数は目盛りから判読しました。
1~7位までの7路線が1週間に2回以上、8~17の10路線は1週間に1回以上遅延していることになります。
遅延発生の6割以上は利用者起因または部外原因?
『遅延の「見える化」について』(国土交通省 鉄道局総務課)では、「東京圏における遅延の原因について」45路線を対象にまとめた資料を発表しています。資料によると、「小規模な遅延(10未満の遅延)」の発生原因は、鉄道事業者側の「部内原因」が約6%に対し、利用者に関連するものなどの「部外原因」が約94%となっています。なお、原因別の内訳では、乗車時間超過が47.2%、ドアの再開閉が16.0%と利用者起因が約63.2%を占めています。
一方、「大規模な遅延(30分以上の遅延)」の発生状況や原因については、「部内原因」が約23%、「部外原因」が約68%、そして「災害原因」が約8%となっています。このように、部内原因と災害原因が全体の約3分の1を、のこりの約3分2を部外原因が占めておいます。その内訳は、自殺が43.6%、線路立入等が21.8%と、こちらも人的要因が多くの割合を占めています。
遅延対策のための「ハード・ツール・マナー」
遅延解消のために、国をはじめ各鉄道会社もさまざまな対策を講じています。ハード面では、改良車輌の導入や改札口の増設やホームドアの設置などがおこなわれています。また、ITツールを活用した遅延状況情報の提供や解析、各種のアプリによる遅延情報公開の即時性の確保や遅延証明書の発行なども取り組まれています。ただし、遅延発生の最大要因は「利用者起因」「部外原因」ですので、やはり「鉄道利用者との協働」はかかせません。遠回りのようでいて、一人ひとりの乗客が乗車マナーを向上させることが、最大の遅延対策となるでしょう。
<参考文献・参考サイト>
・『定刻発車 : 日本の鉄道はなぜ世界で最も正確なのか?』(三戸祐子著、新潮文庫)
・国土交通省:東京圏における今後の都市鉄道のあり方について
http://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/tetsudo01_sg_000261.html
・国土交通省:東京圏における今後の都市鉄道のあり方について(答申)
http://www.mlit.go.jp/common/001138591.pdf
・国土交通省:遅延対策ワーキング・グループ最終取りまとめ
http://www.mlit.go.jp/common/001138607.pdf
・国土交通省:遅延の「見える化」について
http://www.mlit.go.jp/common/001215328.pdf
・『定刻発車 : 日本の鉄道はなぜ世界で最も正確なのか?』(三戸祐子著、新潮文庫)
・国土交通省:東京圏における今後の都市鉄道のあり方について
http://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/tetsudo01_sg_000261.html
・国土交通省:東京圏における今後の都市鉄道のあり方について(答申)
http://www.mlit.go.jp/common/001138591.pdf
・国土交通省:遅延対策ワーキング・グループ最終取りまとめ
http://www.mlit.go.jp/common/001138607.pdf
・国土交通省:遅延の「見える化」について
http://www.mlit.go.jp/common/001215328.pdf
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