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DATE/ 2018.02.16

お店を脅かす「悪質クレーム」問題と対処法

 「お客様は神様です」。この言葉は演歌歌手の三波春夫さんが口にしたもので、その後、昭和時代を象徴するような接客の仕方として一躍流行語となりました。しかしその“神様”が今や“悪質クレーマー”となっているケースが後を絶たないようです。

悪質クレームが増えていると約5割の人が回答

 産経ニュースで、「『悪質クレーム』7割が遭遇 5万人調査、精神疾患・土下座強要も 厚労省に対策要望」というショッキングなタイトルの記事が配信されています。ここ最近の日本で身近な接客業と言えばコンビニエンスストアやスーパーマーケットなどのサービス業ですが、UAゼンセンの調査によると、約5万人から得た回答のうち、7割超となる3万6000人が何らかのクレームを受けた経験があるそうです。いわゆる「暴言」は約半数となる24,107件、「土下座の強要」もなんと1,580件もあり、モンスタークレーマー問題の大きさが分かります。

 この状況を静観してはならないということで、接客側も動きを見せています。UAゼンセンではこの悪質クレームに対する実態アンケートを2017年11月16日に加藤勝信厚生労働大臣宛てに提出。この設問には「迷惑行為は、近年増えていると感じていますか?」というものがあり、49.9%もの人が増えていると回答していることも問題の根深さを感じさせます。

悪質なクレーマーへの対応は?

 増え続ける悪質なクレーマーに対して、どのような対応を取ればいいのでしょうか。その対策を紹介しているのは島田法律事務所のサイトにある「これが悪質クレーム対応の問題だ!」です。その問題点を「お客様第一主義」にあるとしており、トップの経営者が“なぁなぁ”で全てを受け流してしまうと、現場の担当者が対応できない状況になってしまうと指摘しています。

 また、一定の“悪質とする基準”をつくり、そうしたお客さまの来店お断りをするなど、一定の顧客機会を失っても、従業員側のモチベーションを保てるとしています。お客は大事な存在であると同時に、それに対応する立場の人も等しく大事だという考え方は、理にかなったものでしょう。

「神様」だととらえるのはお客さま自身ではない

 冒頭の言葉を口にした三波春夫さんのオフィシャルサイトでも「お客様は神様です」の真意について、親族の方が記した文章があります。引用すると「演者にとってお客様を歓ばせるということは絶対条件です。だからお客様は絶対者、神様なのです」という言葉があります。

 つまり「神様」だととらえるのはお客さま自身ではなく、そのお客さまと向き合う側だということ。これを念頭に入れれば、お客さま自身、自分は「神様」だとして行動することはなくなり、悪質なクレーマーになることも少なくなるのではないでしょうか。

<参考サイト>
・産経ニュース:
「悪質クレーム」7割が遭遇 5万人調査、精神疾患・土下座強要も 厚労省に対策要望
http://www.sankei.com/affairs/news/171116/afr1711160049-n1.html
・UAゼンセン:
悪質クレーム(迷惑行為)対策に向け2万3985筆の署名簿などを加藤厚労大臣宛に提出
https://uazensen.jp/topics/2万3985筆の署名簿などを加藤厚労省大臣に提出/
・島田法律事務所:これが悪質クレーム対応の問題だ!
http://www.shimada-law.com/manager/claim/これが悪質クレーム対応の問題だ!/
・三波春夫オフィシャルサイト:「お客様は神様です」について
http://www.minamiharuo.jp/profile/index2.html
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