社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
「手の洗いすぎは良くない」ってホント?
風邪やインフルエンザにもっとも有効な予防法は「手洗い・うがい」だといわれています。しかしやりすぎてしまうとかえって風邪を引きやすくなる……などという話もちらほら。果たして本当のところはどうなのでしょうか。
人間の皮膚は「皮脂膜」という膜で覆われています。病原体の侵入を防ぐバリアといっていいでしょう。その皮脂膜をつくっているのが、皮膚に常に存在する「皮膚常在菌」です。実は石けんを使った一回の手洗いで、皮膚常在菌の約90%が洗い流されてしまうといわれています。
皮膚常在菌は12時間後に元の数に戻るものの、その間に何度も石けんで手洗いをしてしまうとバリアがない状態が続きます。結果、病原体が容易に侵入しやすくなるのです。
石けんで手をよく洗っていたらカサついた、という経験をした人は多いのではないでしょうか。手肌の乾燥は、感染症を防ぐバリアが失われている証拠です。
ある医薬品メーカーによれば、肌荒れを起こしている肌には、荒れていない肌にはなかった黄色ブドウ球菌(食中毒菌)が1300個ついていたそうです。
そこで、藤田氏によれば、手洗いは「流水で10秒間洗い流す」程度で十分だそうです。石けんで手を洗い慣れている人にとっては抵抗があるかもしれませんが、何かに触るたびに手を洗ったり、必要以上にゴシゴシと洗ったりといったやり方は見直すべきかもしれませんね。
確かに皮脂膜は弱酸性です。しかしたとえ弱酸性の石けんでも、洗うことにより皮膚常在菌や皮脂そのものをはがしてしまっていると藤田氏は指摘しています。
また「薬用」や「抗菌」、「殺菌」という表示についても、従来の石けんよりも効果があるかどうかは実証されておらず、科学的根拠はないのが実情です。
しかしこうした「無菌」を追求する志向に警鐘を鳴らす研究者は少なくありません。菌に触れる機会を減らそうとすればするほど免疫力は失われ、感染症にかかりやすくなってしまうと考えられているからです。昔はなかったはずの花粉症や、アレルギーを持つ子どもが急増しているのも、清潔すぎる環境が招いた結果だといわれています。強い体をつくるためには清潔に気を遣うよりも、まず免疫力を高めることのほうが大切なのです。
<免疫力を高めるのに効果的な食品例>
・硬水
・全粒穀物(玄米、五穀米、十割そばなど)
・ネバネバ食材(山芋、めかぶ、モロヘイヤなど)
・発酵食材(味噌、ヨーグルトなど)
・海藻類(わかめ、昆布など)
・豆類
・イモ類
・キノコ類 など
健康のため、これらの食材をたっぷり食べるよう心がけましょう。
「手の洗いすぎ」をはじめとする潔癖思考は、かえって体を弱くする環境をつくりがちだということがお分かりいただけたかと思います。
人と共存する菌への理解を深め、むやみに恐れないこと。それが本当の意味で、自分や家族を感染症から守る第一歩といえるのかもしれませんね。
「洗いすぎ」は肌を乾燥させ、病気のもとになる
東京医科歯科大学の名誉教授で感染免疫学が専門の藤田紘一郎氏は著書の中で、過度の手洗いは感染症にかかりやすい状態を招くと断言しています。人間の皮膚は「皮脂膜」という膜で覆われています。病原体の侵入を防ぐバリアといっていいでしょう。その皮脂膜をつくっているのが、皮膚に常に存在する「皮膚常在菌」です。実は石けんを使った一回の手洗いで、皮膚常在菌の約90%が洗い流されてしまうといわれています。
皮膚常在菌は12時間後に元の数に戻るものの、その間に何度も石けんで手洗いをしてしまうとバリアがない状態が続きます。結果、病原体が容易に侵入しやすくなるのです。
石けんで手をよく洗っていたらカサついた、という経験をした人は多いのではないでしょうか。手肌の乾燥は、感染症を防ぐバリアが失われている証拠です。
ある医薬品メーカーによれば、肌荒れを起こしている肌には、荒れていない肌にはなかった黄色ブドウ球菌(食中毒菌)が1300個ついていたそうです。
そこで、藤田氏によれば、手洗いは「流水で10秒間洗い流す」程度で十分だそうです。石けんで手を洗い慣れている人にとっては抵抗があるかもしれませんが、何かに触るたびに手を洗ったり、必要以上にゴシゴシと洗ったりといったやり方は見直すべきかもしれませんね。
「弱酸性」や「薬用」石けんは有効なのか
「手肌に近い成分=弱酸性」というイメージから、弱酸性の石けんやシャンプーが人気です。「なんとなく良さそう」と手に取る方も多いでしょう。確かに皮脂膜は弱酸性です。しかしたとえ弱酸性の石けんでも、洗うことにより皮膚常在菌や皮脂そのものをはがしてしまっていると藤田氏は指摘しています。
また「薬用」や「抗菌」、「殺菌」という表示についても、従来の石けんよりも効果があるかどうかは実証されておらず、科学的根拠はないのが実情です。
清潔すぎる環境が体を弱くする
あちこち除菌スプレーをまいたり、ウォシュレットでお尻を洗ったり……日本人は、世界が驚くほどキレイ好きです。最近は子どもたちの遊び場だった砂場も「汚い」といって遠ざける親が多くなったと耳にします。しかしこうした「無菌」を追求する志向に警鐘を鳴らす研究者は少なくありません。菌に触れる機会を減らそうとすればするほど免疫力は失われ、感染症にかかりやすくなってしまうと考えられているからです。昔はなかったはずの花粉症や、アレルギーを持つ子どもが急増しているのも、清潔すぎる環境が招いた結果だといわれています。強い体をつくるためには清潔に気を遣うよりも、まず免疫力を高めることのほうが大切なのです。
食べ物で免疫力を高めよう
体の免疫力の約7割をつくっているのが、腸の菌です。そのため、藤田氏は以下のような腸の菌の働きをよくする食品を摂ることを勧めています。<免疫力を高めるのに効果的な食品例>
・硬水
・全粒穀物(玄米、五穀米、十割そばなど)
・ネバネバ食材(山芋、めかぶ、モロヘイヤなど)
・発酵食材(味噌、ヨーグルトなど)
・海藻類(わかめ、昆布など)
・豆類
・イモ類
・キノコ類 など
健康のため、これらの食材をたっぷり食べるよう心がけましょう。
むやみに恐れないことが感染症から守る第一歩
いかがでしたか?「手の洗いすぎ」をはじめとする潔癖思考は、かえって体を弱くする環境をつくりがちだということがお分かりいただけたかと思います。
人と共存する菌への理解を深め、むやみに恐れないこと。それが本当の意味で、自分や家族を感染症から守る第一歩といえるのかもしれませんね。
<参考サイト>
・『手を洗いすぎてはいけない 超清潔志向が人類を滅ぼす』(藤田紘一郎著、光文社新書)
・『手を洗いすぎてはいけない 超清潔志向が人類を滅ぼす』(藤田紘一郎著、光文社新書)
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
国際社会における中国の動きに注目が集まっている。新冷戦ともいわれる米中摩擦が激化する中、2021年7月に中国共産党は創立100周年を迎えた。毛沢東以来、初めて「思想」という言葉を党規約に盛り込んだ習近平。彼が唱える「中...
収録日:2021/07/07
追加日:2021/09/07
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
「熟睡とは健康な睡眠」だと西野氏はいうが、健康な睡眠のためには具体的にどうすればいいのか。睡眠とは壊れやすいもので、睡眠に影響を与える環境要因、内面的要因、身体的要因など、さまざまな要因を取り除いていくことが大...
収録日:2025/03/05
追加日:2025/11/23
史料読解法…豊臣秀吉による秀次粛清の本当の理由とは?
歴史の探り方、活かし方(4)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈上〉
実際に史料をどうやって読み解いていけばいいのか。今回から具体的な史料の読み解き方をケース・スタディしていく。最初は『太閤記』に関する参考資料を用いて、太閤・豊臣秀吉と関白・秀次の関係を考える。そもそも『太閤記』...
収録日:2025/04/26
追加日:2025/11/22
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
岡本浩氏、長谷川敏彦氏の話を受けて、今回から鎌田氏による講義となる。まず指摘するのは、空海が説く『弁顕密二教論』の考え方である。この著書で空海は、仏教の顕教は「中論」「唯識論」「空観」など世界を分割して見ていく...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/20
ギャングの代わりに弁護士!? 壮絶なアメリカ労働史の変遷
内側から見たアメリカと日本(4)アメリカ労働史とトランプ支持層
労働経済を学んでいた島田氏は、ウィスコンシン大学留学中、労働者の教化運動に参加している。アメリカ産業史を学習する中、労働運動の実態を触れ、ウォルター・ルーサーとヘンリー・フォードの熾烈な闘いを知ったからだ。労働...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/11/18


