テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2018.04.06

若者の〇〇離れ…各世代はどう感じてる?

 「若者の○○離れ」というフレーズを耳にしたことはないでしょうか。新聞・テレビ・インターネット・雑誌・書籍など、さまざまなメディアで取り上げられています。

 今回は、「若者の○○離れ」に関する調査結果や各メディアでの取り上げられ方を参照しつつ、「若者の○○離れ」を各世代はどう感じているのかを考えてみたいと思います。

「若者の○○離れ」の世代別実感値

 DeNAトラベルが、10~70代の男女1184人を対象に、「若者の○○離れ」に関する調査を実施しました。このうち、「あなたが感じている『若者の○○離れ』」を選んでもらったところ、全世代で最も多い回答は「車離れ」(33.0%)でした。以下、「新聞離れ」(13.2%)、「読書離れ」と「結婚離れ」(ともに7.9%)、「お酒離れ」(6.6%)と続いています。

 さらにこの回答結果は、20代以下、30代、40代、50代、60代以上の5つの年代別でも発表されており、1位の「車離れ」は各年代の全てで1位でした。ただし、20代以下は24.4%、30代は28.1%と20%台なのに対し、40代は39.1%、50代は40.3%と40%前後の高い割合となっています。ちなみに、2位の「新聞離れ」は40代以外で1位でしたが、全て10%台(12.4~18.6%)でそれほど差はなく、40代でも3位(7.7%)でした。

 世代間の違いがよりわかりやすいのは3位、4位の結果でした。20代以下と30代は「テレビ離れ」「タバコ離れ」(いずれも20代以下12.8%、30代5.8%)と出ています。一方、50代と60代以上では「読書離れ」(50代6.7%、60代以上9.6%)、「結婚離れ」(50代7.8%、60代以上9.3%)と出ており、情報ソースとしてのメディアや嗜好品の選択、趣味やライフスタイルの違いといったものに、より顕著な世代間ギャップがあるように思われます。

ベスト5で考察する「若者離れ」の理由

 ではベスト5を取り上げて、「「若者の〇〇離れ」が進む理由」を尋ねた回答結果を元に、考察してみましょう。

 「車離れ」「お酒離れ」は「収入の減少」(各31.7%、24.4%)、「新聞離れ」「読書離れ」は「インターネット・スマホの発達」(共に62.8%)、「結婚離れ」は「多様な生き方への寛容化」(29.0%)が最も多い回答となりました。ちなみに2位は「結婚離れ」のみが「収入の減少」で、それ以外は全て「時代の変化」でした。

 さらに年代別にみると、20代以下と30代では「収入の減少」(20代以下33.7%、30代30.6%)が最も多かったのに対し、40代以上では2位でした。他方、40代以上の1位は「インターネット・スマホの発達」(40代26.0%、50代24.9%、60代以上30.2%)であったのに対し、20代以下と30代では2位でした。

 また3位は全世代で「時代の変化」でしたが、4位では20代以下と30代が「エンタメの多様化」(20代以下10.5%、30代10.7%)であった一方、40代と50代では「物欲の低下」(40代13.2%、50代11.3%)、60代以上では「多様な生き方への寛容化」(9.6%)という結果が出ています。

 これらの結果から「若者離れ」の理由には、車・お酒・結婚などお金がかかるものは、やはり収入の減少が多大な影響を及ぼしていることや、新聞・読書・テレビなどの旧来からあるメディアの「離れ」には、インターネット・スマホといった新しいメディアの登場が大きく関与していることが推察されます。そしてなにより、「若者」を考えるときに「時代の変化」がキーワードになることが実感できます。

本当に「若者の○○離れ」は深刻なのか?

 しかし、ここでちょっと立ち止まって考えてみてほしいことがあります。それは「若者の○○離れ」は、「本当に深刻なレベルで起こっているのか?」とういうことです。

 まず大前提として、1970年代前半の第2次ベビーブーム以降出生数自体が落ち込んでおり、それに伴い人口比における若者比率も低下しています。つまり、「若者の○○離れ」以前の問題として、対象となる若者「人口」や「人口比率」が減っているのです。

 『だから数字にダマされる』という本では、「車離れ」や「新聞離れ」以外にも、「海外旅行離れ」「恋愛離れ」「政治離れ」などを取り上げ、過去の数字と比較・検討しています。

 その中で、例えば「車離れ」では、「ミドル世代も『趣味は車・ドライブ』が減少」していることや、「ビール離れ」は「若者だけでなく、中年男性もアルコール離れ」していることなどを解説しています。

「若者離れ」とならないために

 もちろん調査結果は実数値ですし、時代の空気感・肌感覚といったものでも「若者の○○離れ」は実感値としてうなずけることも多いと思います。しかし本当の問題は、世代間人口比のもたらす格差であったり、社会の大きな変化による世代間ギャップがより顕著になったりしていることが、「若者の○○離れ」の深層にあることかもしれません。

 『若者離れ 電通が考える未来のためのコミュニケーション術』では、今までのような人口比=「量の影響力」で世代の意見を捉えるのではなく、「若者と特有の歓声やアイデアといった、「質の影響力」=前提打破力」に注目し、世代間でギャップを越えて向き合い対話することによって、組織や社会によりよい変化をもたらすことを呼びかけています。

 世代間ギャップはいつの時代にもあり、各世代の考え方に違いや特徴はあるものです。けれどそれを安易に「○○離れ」で済まさない、世代間努力も必要なのではないでしょうか。

<参考文献・参考サイト>
・『だから数字にダマされる』(小林直樹著、日経BPマーケティング編、日経BP社)
・『若者離れ 電通が考える未来のためのコミュニケーション術』(吉田将英著、奈木れい著、小木真著、佐藤瞳著、電通若者研究部編、エムディエヌコーポレーション)
・DeNA TRAVEL:33%の人が「若者の車離れ」を実感!車離れが進む理由は「収入の減少」と「時代の変化」。「若者の〇〇離れ」は無理に解決する必要はないという意見が多数!~DeNAトラベルが「若者の〇〇離れ」に関する調査を実施~
http://www.dena-travel.com/news/2018/1545/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,100本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

55年体制は民主主義的で、野党もブレーキ役に担っていた

55年体制は民主主義的で、野党もブレーキ役に担っていた

55年体制と2012年体制(1)質的な違いと野党がなすべきこと

戦後の日本の自民党一党支配体制は、現在の安倍政権における自民党一党支配と比べて、何がどのように違うのか。「55年体制」と「2012年体制」の違いと、民主党をはじめ現在の野党がなすべきことについて、ジェラルド・カ...
収録日:2014/11/18
追加日:2014/12/09
2

5Gはなぜワールドワイドで推進されていったのか

5Gはなぜワールドワイドで推進されていったのか

5Gとローカル5G(1)5G推進の背景

第5世代移動通信システムである5Gが、日本でもいよいよ導入される。世界中で5Gが導入されている背景には、2020年代に訪れるというデータ容量の爆発的な増大に伴う、移動通信システムの刷新がある。5Gにより、高精細動画のような...
収録日:2019/11/20
追加日:2019/12/01
中尾彰宏
東京大学 大学院工学系研究科 教授
3

マスコミは本来、与野党機能を果たすべき

マスコミは本来、与野党機能を果たすべき

マスコミと政治の距離~マスコミの使命と課題を考える

政治学者・曽根泰教氏が、マスコミと政治の距離を中心に、マスコミの使命と課題について論じる。日本の新聞は各社それぞれの立場をとっており、その報道の基本姿勢は「客観報道」である。公的異議申し立てを前提とする中立的報...
収録日:2015/05/25
追加日:2015/06/29
曽根泰教
慶應義塾大学名誉教授
4

BREXITのEU首脳会議での膠着

BREXITのEU首脳会議での膠着

BREXITの経緯と課題(6)EU首脳会議における膠着

2018年10月に行われたEU首脳会議について解説する。北アイルランドの国境問題をめぐって、解決案をイギリスが見つけられなければ、北アイルランドのみ関税同盟に残す案が浮上するも、メイ首相や強硬離脱派はこれに反発している...
収録日:2018/12/04
追加日:2019/03/16
島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
5

健康経営とは何か?取り組み方とメリット

健康経営とは何か?取り組み方とメリット

健康経営とは何か~その取り組みと期待される役割~

近年、企業における健康経営®の重要性が高まっている。少子高齢化による労働人口の減少が見込まれる中、労働力の確保と、生産性の向上は企業にとって最重要事項である。政府主導で進められている健康経営とは何か。それが提唱さ...
収録日:2021/07/29
追加日:2021/09/21
阿久津聡
一橋大学大学院経営管理研究科国際企業戦略専攻教授