社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2018.04.28

世界の幸福度ランキング、日本の順位は?

 日本は世界有数の先進国であり、経済大国です。しかし、そのわりに国民の幸福度が低く、世界ランキングが発表されるたびに日本及び日本人に対する悲観的な声が飛び交います。他方、「日本人はそんなに不幸じゃない」という幸福度への批判の声もあがります。

 幸福度が高い国とはどんな国なのか、そもそも幸福度とは何か、明日の日本を考えるためにも幸福度について調べてみました。

幸福度ランキングベスト5

 2018年3月、国連は世界の幸福度ランキングの最新版を発表しました。トップ5は、1位がフィンランド、2位がノルウェー、3位がデンマーク、4位がアイスランド、5位がスイス。今年も常連の北欧の国々が上位を占めました。

 2017年発表のランキングをみてみると1位から順に、ノルウェー、デンマーク、アイスランド、スイス、フィンランド。つまり、2018年も2017年もランクインした国は同じで順番が入れ替わっただけなのでした。

 さて、注目の日本ですが、なんと先進国のなかでは最悪レベルの54位。2017年は53位、2016年は51位だったので、50位代をずっとうろちょろしている感じです。ちなみに、2015年の発表では46位、2013年の発表では43位でした。

幸福度の基準とは?

 国連の発表する幸福度の基準は6つあります。「一人当たりのGDP」、「社会的支援」、「健康寿命」、「人生における選択の自由」、「他者への寛容さ」、「社会の汚職度」です。社会の汚職度とは今まさに日本にとって耳の痛い話ですね。

 さらに今年の調査では移民がテーマになっており、移民の幸福度の調査結果が発表されました。移民の幸福度と国の幸福度はおおよそ比例することが明らかになりました。

 興味深いのは国の幸福度の低い日本ですが、移民の幸福度は25位となかなかの高水準の結果となりました。おもてなし文化の手厚い日本らしさが表れているのかもしれません。

ブータンとフィジーの幸福

 一概に国連発表する幸福度が正しいとは言えません。多様な世界をひとつの指標ではかるのは不可能なことです。ひとつの指標というくらいに考えてよいと思います。

 ひとつ分かりやすい例をあげると、国連の幸福度ランキングでは、世界一幸せな国とも言われているブータンはかなり幸福水準が低いとされています。ブータン国民は納得いかないはずです。

国連が発表する幸福度とは別に、ワールドワイド・イディペンデント・ネットワークとギャラップ・インターナショナル・アソシエーションが共同調査し、毎年年末に発表する純粋幸福度という指標があります。この調査の方法は非常にシンプルで、対象者に「幸せかどうか」を問うだけです。

 最新の結果はというと、1位がフィジー、2位がコロンビア、3位がフィリピン、4位がメキシコ、5位がベトナムでした。国連の発表とはあまりに異なる結果となりました。日本は55カ国中、18位でアメリカやフランス、イギリス、ドイツなどよりも上位になっています。

自分にとって幸せとは何か

 やや極端な例示になりましたが、このように調査方法によって、回答は大きく異なります。ただし、日本の評価が低いからといって、国連のランキングをないがしろにしていいはずはありません。国連の発表もひとつの事実です。悲観しすぎることなく、重く受け止めるべきでしょう。

 なにより重要なことは、こうしたランキングに一喜一憂するのではなく、各指標の発表をよい機会ととらえて、日本人にとっての幸福とは何か、自分にとっての幸せとはなんなのかをきちんと見つめていくことだと思います。

<参考サイト>
・AFP:世界で最も幸せな国はフィンランド 国連調査、日本54位
http://www.afpbb.com/articles/-/3167398
・HUFFPOST:純粋幸福度
https://www.huffingtonpost.jp/yuma-nagasaki/happy-country-fiji_a_23324628/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
自分を豊かにする“教養の自己投資”始めてみませんか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍

習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍

習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴

国際社会における中国の動きに注目が集まっている。新冷戦ともいわれる米中摩擦が激化する中、2021年7月に中国共産党は創立100周年を迎えた。毛沢東以来、初めて「思想」という言葉を党規約に盛り込んだ習近平。彼が唱える「中...
収録日:2021/07/07
追加日:2021/09/07
小原雅博
東京大学名誉教授
2

熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン

熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン

熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法

「熟睡とは健康な睡眠」だと西野氏はいうが、健康な睡眠のためには具体的にどうすればいいのか。睡眠とは壊れやすいもので、睡眠に影響を与える環境要因、内面的要因、身体的要因など、さまざまな要因を取り除いていくことが大...
収録日:2025/03/05
追加日:2025/11/23
西野精治
スタンフォード大学医学部精神科教授
3

密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」

密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」

エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観

岡本浩氏、長谷川敏彦氏の話を受けて、今回から鎌田氏による講義となる。まず指摘するのは、空海が説く『弁顕密二教論』の考え方である。この著書で空海は、仏教の顕教は「中論」「唯識論」「空観」など世界を分割して見ていく...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/20
4

史料読解法…豊臣秀吉による秀次粛清の本当の理由とは?

史料読解法…豊臣秀吉による秀次粛清の本当の理由とは?

歴史の探り方、活かし方(4)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈上〉

実際に史料をどうやって読み解いていけばいいのか。今回から具体的な史料の読み解き方をケース・スタディしていく。最初は『太閤記』に関する参考資料を用いて、太閤・豊臣秀吉と関白・秀次の関係を考える。そもそも『太閤記』...
収録日:2025/04/26
追加日:2025/11/22
5

不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?

不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?

習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実

改革開放当時の中国には技術も資本もなく、工場を建てる土地があるだけだった。経済成長とともに市民が不動産を複数所有する時代となり、地価は高騰し続けた。だが、習近平政権による総量規制は不動産価格を低下させ、消費低迷...
収録日:2025/07/01
追加日:2025/10/16
垂秀夫
元日本国駐中華人民共和国特命全権大使