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【仕事と年収】青果の仲卸業者(41歳男性)の場合
青果市場の仲卸と聞いてピンとくる人は少ないかもしれません。仲卸業者は、卸売市場で卸売業者などが全国各地から集荷した野菜や果物を買い受け、八百屋さんやスーパーなどの小売業者に調整・仕分けして販売する仕事です。
今回は中部地方のとある中央卸売市場内にある青果仲卸業者で働く41歳男性に、月収、年収、賞与などのお金の話や、仕事について、具体的にお話をうかがいました。
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【年齢】41歳(男性)
【住まい】中部地方
【独身or既婚】独身
【職業】八百屋(X県Y市中央卸売市場内の青果仲卸)
・経歴を教えてください。
大学生の頃にコンビニや玩具店でアルバイトしていたのをきっかけに小売業に就職しました。家電量販店やスーパーマーケットに長く勤務していましたが、小売部門があった今の会社に転職、小売部門ではなく、本業の仲卸部門へ配属されて5年目です。
・年収/月収/賞与について教えてください。

年収240万円/月収20万/賞与(年0~2回)0~20万
※賞与はない場合も。あっても少額の場合もあります。
・貯蓄額はおいくらですか?
ほぼありません。
・年間休日は?
108日(休日出勤あり、これは同業他社も同じ)
野菜・果物は基本的に、農家→JAや出荷組合→《荷受(おおおろし)→仲卸》→小売店・飲食店→消費者、となっています。
※《》でくくった部分が築地に代表される全国各地の中央卸売市場・地方卸売市場に入っています。
荷受(にうけ)さんが全国各地のJAや出荷組合から集めてきた野菜・果物を、私たち仲卸(なかおろし)が買い取ってスーパーマーケットや街の八百屋さん、飲食店さんに販売しています。なので、ネクタイ締めたバイヤーさんや料理人さんと商談したり、フォークリフトで大量の野菜・果物をトラックに積み込んだりしています。
残業時間は、通常50時間くらい、12月は100時間くらい。ただし、これは弊社の場合で、同業他社は20~30時間程度、12月でも40時間以下だと思います。残業代は「みなし残業手当」として扱われます。
また、そうやっているうちに他社の人たちと自然に仲良くなります。社内の人には打ち明けにくい悩み事や愚痴なども、他社の仲の良い人に聞いてもらったりすることができます。極端な言い方をすると、社内で孤立してしまっても、社外の人たちとはつながっている独特の人間関係があります。
実際、私はなかなか会社になじめず、社内の人よりも先に社外の人と仲良くなりました。今も、特に懇意にさせていただいている人はほとんど社外の人です。会社はやめたいけど、市場はやめたくない、という感じです。
他に良いことと言えば、暗いうちから働き始め、明るい時間に帰宅する(私の場合、未明3時~14時くらい)ので、仕事が終わってからでも、銀行も役所も病院もまだ開いているのは便利ですね。
また、普段がこういうサイクルなので、いわゆる「昼まで寝てた」つもりでも、目覚めは朝7~8時くらいになり、午前中が有効に使えます。普通のお店が開く10時が待ち遠しいくらいです。
例えば、台風の日、ある会社は社長から作業中止の指示が出ていましたが、弊社は暴風の中でもトラックに積み込む作業を続行、社長からは後日「台風の中ご苦労だった」の一言だけで終わりました。この手のエピソードは枚挙に暇がありません。ちなみに、弊社から市場内の他社へ移った方は何人かいますが、他者から弊社へ移った人は誰もいません。
また、商習慣が独特です。発注すればその数だけ入荷する、というものもありますが、荷受さんに勝手に数を割り振られてしまう場合があります。そのため、入荷が少なくて調達に奔走する場合もあれば、反対に入荷が多すぎて売りさばくのに苦労したり、過剰在庫になってしまう場合もあります。
そして、この業界の年配の方には「商品を持っている方(売り手)がエライ」と考えて、「イヤなら売らない」と殿様商売をする方もいます。また、消費者視点を持たず、「胃に入れば一緒」なんていうオジサマもいまだ健在です。
暮正月・GW・盆は市場が休みになるのもどうかと思います。市場取引がない=新入荷がない、というだけで、私たち仲卸は出勤してきて、小売店さんや飲食店さん向けの商品を用意して発送しなければいけません。
しかし、市場が休みの期間は新入荷がないので、事前に在庫をたくさん抱えます。休みの間は、事前に仕入れた古い商品を発送せざるをえません。そのため、状態が悪く納品できないものや、輸送途中で状態が悪くなり返品されるものが多くなります。フードロスの一因です。
休日でも人の胃袋は休みませんし、稼働している小売店さんや飲食店さんがある以上、食糧供給という大事な役目を負っている市場はそこも考えるべきだと思います。
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仲卸業者の経営動向を調べてみると、平成26年の農林水産省の資料「卸売市場をめぐる情勢について」には、中央卸売市場における仲卸業者のうち経常損失を計上した業者の割合は、青果で4割とあり、業界全体で厳しい経営状況がうかがえます。
実際にこの方の年収を見ても、同年代の平均に比べてかなり低い水準となっています。しかし、今回かなり詳しく仕事内容を教えていただいた中で、この方はやりがいと問題意識を持ってお仕事をされていることを感じました。やはり、仕事は必ずしも「お金」だけではないのかもしれません。
<参考サイト>
・農林水産省│卸売市場をめぐる情勢について
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/sijyo/info/pdf/siryo2_01.pdf
今回は中部地方のとある中央卸売市場内にある青果仲卸業者で働く41歳男性に、月収、年収、賞与などのお金の話や、仕事について、具体的にお話をうかがいました。
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気になるその年収は…
今回お話をうかがったのはこちらの方。【年齢】41歳(男性)
【住まい】中部地方
【独身or既婚】独身
【職業】八百屋(X県Y市中央卸売市場内の青果仲卸)
・経歴を教えてください。
大学生の頃にコンビニや玩具店でアルバイトしていたのをきっかけに小売業に就職しました。家電量販店やスーパーマーケットに長く勤務していましたが、小売部門があった今の会社に転職、小売部門ではなく、本業の仲卸部門へ配属されて5年目です。
・年収/月収/賞与について教えてください。
年収240万円/月収20万/賞与(年0~2回)0~20万
※賞与はない場合も。あっても少額の場合もあります。
・貯蓄額はおいくらですか?
ほぼありません。
・年間休日は?
108日(休日出勤あり、これは同業他社も同じ)
仕事の内容は?残業はどれぐらい?
仕事については、八百屋と言っても市場内の八百屋なので、一般消費者に向かって「いらっしゃい、いらっしゃい、今日は大根安いよ!」などと売っているわけではありません。野菜・果物は基本的に、農家→JAや出荷組合→《荷受(おおおろし)→仲卸》→小売店・飲食店→消費者、となっています。
※《》でくくった部分が築地に代表される全国各地の中央卸売市場・地方卸売市場に入っています。
荷受(にうけ)さんが全国各地のJAや出荷組合から集めてきた野菜・果物を、私たち仲卸(なかおろし)が買い取ってスーパーマーケットや街の八百屋さん、飲食店さんに販売しています。なので、ネクタイ締めたバイヤーさんや料理人さんと商談したり、フォークリフトで大量の野菜・果物をトラックに積み込んだりしています。
残業時間は、通常50時間くらい、12月は100時間くらい。ただし、これは弊社の場合で、同業他社は20~30時間程度、12月でも40時間以下だと思います。残業代は「みなし残業手当」として扱われます。
この仕事の良い点は?
築地に比べたら1/10以下の規模ですが、Y市中央卸売市場には青果部門だけでも荷受2社と仲卸十数社が入っています。荷受さん同士・仲卸同士はライバルでもありますが、同時に仲間でもあります。商品が足りなくなって困った時に、ダメもとで市場内を一周して各社周ってみると、どうにか手に入ることがよくあります。また、そうやっているうちに他社の人たちと自然に仲良くなります。社内の人には打ち明けにくい悩み事や愚痴なども、他社の仲の良い人に聞いてもらったりすることができます。極端な言い方をすると、社内で孤立してしまっても、社外の人たちとはつながっている独特の人間関係があります。
実際、私はなかなか会社になじめず、社内の人よりも先に社外の人と仲良くなりました。今も、特に懇意にさせていただいている人はほとんど社外の人です。会社はやめたいけど、市場はやめたくない、という感じです。
他に良いことと言えば、暗いうちから働き始め、明るい時間に帰宅する(私の場合、未明3時~14時くらい)ので、仕事が終わってからでも、銀行も役所も病院もまだ開いているのは便利ですね。
また、普段がこういうサイクルなので、いわゆる「昼まで寝てた」つもりでも、目覚めは朝7~8時くらいになり、午前中が有効に使えます。普通のお店が開く10時が待ち遠しいくらいです。
この仕事の悪い点は?
荷受さんはある程度の規模のある会社ですが、仲卸は経営者世襲の零細企業がほとんどです。そのため、給料・賞与・待遇面や従業員の扱い方などは、経営者の性格や考え方次第です。例えば、台風の日、ある会社は社長から作業中止の指示が出ていましたが、弊社は暴風の中でもトラックに積み込む作業を続行、社長からは後日「台風の中ご苦労だった」の一言だけで終わりました。この手のエピソードは枚挙に暇がありません。ちなみに、弊社から市場内の他社へ移った方は何人かいますが、他者から弊社へ移った人は誰もいません。
また、商習慣が独特です。発注すればその数だけ入荷する、というものもありますが、荷受さんに勝手に数を割り振られてしまう場合があります。そのため、入荷が少なくて調達に奔走する場合もあれば、反対に入荷が多すぎて売りさばくのに苦労したり、過剰在庫になってしまう場合もあります。
そして、この業界の年配の方には「商品を持っている方(売り手)がエライ」と考えて、「イヤなら売らない」と殿様商売をする方もいます。また、消費者視点を持たず、「胃に入れば一緒」なんていうオジサマもいまだ健在です。
暮正月・GW・盆は市場が休みになるのもどうかと思います。市場取引がない=新入荷がない、というだけで、私たち仲卸は出勤してきて、小売店さんや飲食店さん向けの商品を用意して発送しなければいけません。
しかし、市場が休みの期間は新入荷がないので、事前に在庫をたくさん抱えます。休みの間は、事前に仕入れた古い商品を発送せざるをえません。そのため、状態が悪く納品できないものや、輸送途中で状態が悪くなり返品されるものが多くなります。フードロスの一因です。
休日でも人の胃袋は休みませんし、稼働している小売店さんや飲食店さんがある以上、食糧供給という大事な役目を負っている市場はそこも考えるべきだと思います。
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仲卸業者の経営動向を調べてみると、平成26年の農林水産省の資料「卸売市場をめぐる情勢について」には、中央卸売市場における仲卸業者のうち経常損失を計上した業者の割合は、青果で4割とあり、業界全体で厳しい経営状況がうかがえます。
実際にこの方の年収を見ても、同年代の平均に比べてかなり低い水準となっています。しかし、今回かなり詳しく仕事内容を教えていただいた中で、この方はやりがいと問題意識を持ってお仕事をされていることを感じました。やはり、仕事は必ずしも「お金」だけではないのかもしれません。
<参考サイト>
・農林水産省│卸売市場をめぐる情勢について
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/sijyo/info/pdf/siryo2_01.pdf
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