テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2018.07.12

習うは一生、人間だけが好奇心を軸に学習できる

 学びたいという欲求の源泉は好奇心。アインシュタインはかつて「重要なのは、疑問を持ち続けること。知的好奇心は、それ自体に存在意義があるものだ」と述べました。その好奇心を、成熟した後も長く持ち続けることができるのは、人間だけが持つ特質だ、と進化生物学者の長谷川真理子氏(総合研究大学院大学長)は言っています。

子犬や子猫の可愛らしさは「好奇心」の発露

 可愛らしい子犬や子猫の動画には、文句なく人気が集まり、ついついリピートして見たくなります。サルでもヒツジでも、子どもの頃はいろいろなところを掘りかえしたり、かぎ回ったりして、何が起こるだろうかと、常に観察し続けています。

 人間の子どもであれば、地面を掘りかえす代わりに「質問ぜめ」をしてきます。「あれは何?」「それは何?」に始まり、「どうして?」「なぜ?」が果てしなく続くほど、幼い頃の知識欲は限りを知りません。

 仲間とケンカやレスリングのようなことをしたり、高い所から飛び降りたりするのも、子どもなら動物であれ人間であれやりたがること。それは、自分の体を限界まで使ってみようとすること、言い換えれば「限界に対する好奇心」のあらわれなのだそうです。

 なぜ、子犬や子猫、そしてわたしたち人間は好奇心に突き動かされるのでしょうか。それは、その行為が楽しくてしょうがないからです。時には転んだり落ちたりして、痛い目にあうこともありますが、そういうことをやりたくてしょうがない。シンプルな衝動に動かされるのだと長谷川氏は言います。

人間だけが「好奇心」を軸に学習ができる

 ところがどんな動物も、大人になると、そういうことはしなくなり、「現状維持」で時を過ごすようになります。子猫と親猫、子犬と親犬をくらべてみれば、その差は明らかです。野生の状態にあってもそうであることを、長谷川氏はサルやチンパンジーの集団から観察してきました。

 人間だけが、子どもの頃の好奇心を、そのままのかたちではないものの、一部持ち続けることができます。それが「学習」という行動につながるのです。

 知らないよりは、知っているほうが面白い。自分が知ったことを誰かに説明できると、そのことがうれしく、心地いい。それは人間の本質的な特長です。人間社会は、その特長に基づいて技術を伝承し、さらに新しく塗り重ねることを続けて発展してきました。

「習う」は一生の得?徳?

 現代のテクノロジー万能社会において、知的好奇心は別のかたちでも発揮されている、と長谷川氏は見ています。学校時代にインプットした知識だけでは到底間に合わず、「浦島太郎」になってしまうのが現代社会だからです。

 現代人の多くは、社会の変化に取り残されないための学び直しを必要としています。しかし、新しい学習を可能にし、その習得をスムーズにするには、やはり生まれ持った好奇心が最も物を言います。

 「あれは、どうなっているのか」と不思議に思う心、好奇心に駆られることにより、「習う」は一生の得や徳になってくるのです。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

悪循環を壊すラストチャンス、攻めの経営への4つの兆候

悪循環を壊すラストチャンス、攻めの経営への4つの兆候

グローバル環境の変化と日本の課題(4)攻めの経営に向けた構造変化

我慢の経営から攻めの経営へ――この30年間で染み付いた日本企業の我慢の経営体質。これからのグローバル経済に対応するためには、攻めの経営に転じる必要がある。その呼び水となる兆候はすでに出てきている。今起きつつある日本...
収録日:2025/01/17
追加日:2025/03/25
石黒憲彦
独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)理事長
2

目標達成シートに注目!大谷翔平選手成功の鍵は考える習慣

目標達成シートに注目!大谷翔平選手成功の鍵は考える習慣

大谷翔平の育て方・育ち方(4)高校時代の師の教えと目標達成シート

「球場の一番高いマウンドに立つ人間は、みんなが一番嫌がる仕事をしなさい」――これは花巻東高校時代に佐々木洋監督からいわれた言葉だが、野球のことだけでなく、こうした人間性に関わる教えの数々がその後の大谷翔平選手を作...
収録日:2024/11/28
追加日:2025/03/24
桑原晃弥
経済・経営ジャーナリスト
3

「実質所得低迷」の構造的要因と「緊縮財政」の歴史的悲劇

「実質所得低迷」の構造的要因と「緊縮財政」の歴史的悲劇

お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(5)円安と実質所得低迷の構造的要因

日本国内でのお金の回りが芳しくない一方、海外への資金流出が強まっている。そこに日本経済の構造的課題と円安の要因が見え隠れする。今回はそれらを掘り下げるとともに、過去の緊縮財政が引き起こした悲劇も振り返りながらイ...
収録日:2024/12/04
追加日:2025/03/22
養田功一郎
三井住友DSアセットマネジメント株式会社 執行役員
4

三四郎はストレイシープ!? 漱石が描いた世間との矛盾とは

三四郎はストレイシープ!? 漱石が描いた世間との矛盾とは

いま夏目漱石の前期三部作を読む(4)『三四郎』で描かれた世間との矛盾

『三四郎』に登場する広田先生は「偉大なる暗闇」として描かれているが、高い知性を持ちながらも社会的評価が得られない知識人の孤高を絶妙に捉えている。そして、この対極として登場する庶民の人妻に三四郎は翻弄され、「スト...
収録日:2024/12/02
追加日:2025/03/23
與那覇潤
評論家
5

生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状

生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状

生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地

日進月歩の進化を遂げている生成AIは、私たちの生活や仕事の欠かせないパートナーになりつつある。企業における生成AI技術の利用に焦点をあてる今シリーズ。まずは世界的な生成AIの導入事情から、日本の現在地を確認しよう。(...
収録日:2024/11/05
追加日:2024/12/24
渡辺宣彦
日本マイクロソフト株式会社 執行役員常務 エンタープライズ事業本部長