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DATE/ 2018.07.11

ギャンブルと比較してみる宝くじの還元率は?

 宝くじはとりあえず毎回買っているという人も多いのではないでしょうか。また、公営ギャンブルとしての競馬や競輪、競艇は日本各地にあります。公営ギャンブルと並べて見ると、宝くじはやや特殊ですよね。

 ここでは、他のいわゆるギャンブルと比較しながら、宝くじとはどのようなものなのか、考えてみましょう。

ジャンボ宝くじの売上額は8,452億円、パチンコは23兆円超

 発売されるたびに話題になるジャンボ宝くじですが、全国での売上規模は年間8,452億円(2016年度)となっています、ここ数年では、よく売れる年でも1兆円に届くかどうか、といったところのようです。

 ちなみに公益財団法人日本生産性本部「レジャー白書」によると、競馬や競艇、競輪などの公営ギャンブルの売上高は5兆7510億円(2015年度)、さらに風俗営業法で「遊技」に位置づけられるパチンコの市場規模にいたっては、なんと23兆2290億円と推計されています。ここまでの金額になると、ちょっとイメージが湧かないですよね。とにかくたいへんな金額がギャンブルで動いているようです。

宝くじの還元率はおよそ45%

 宝くじは、まあ当たらないだろうけど、少しくらいは儲かるのではないかと考える人も多いのではないでしょうか。実際のところ、投資した金額のどれくらいが戻ってくる計算なのか、見てみましょう。

 支払いに対して戻ってくる割合を「還元率」といいます。宝くじの還元率は約45%、公営競技(地方競馬、競艇、競輪、オートレース)の還元率は約75%、パチンコは約85%程度です。宝くじに関しては所得税が非課税であるというメリットはありますが、それでも他のギャンブルに比べて還元率は明らかに低いです。45%ということは、単純に考えてほぼ半分以上は戻ってこない、ということになります。

宝くじの一部は公共事業に

 ここまで見たとおり、宝くじの還元率は低く、決して当たりやすいとは言えません。ではなぜ宝くじは毎回話題になり、それなりに売れているのでしょうか。

 まず、イメージのクリーンさが挙げられるでしょう。しかし、これはイメージだけの話ではなく、実際に売り上げの約40%は都道府県や政令指定都市に分配され公共事業等に使われます。実際に2016年度は売り上げの39.6%にあたる3,348億円が分配されています。しかし、この点でいえば、競馬の売り上げは畜産事業に還元されているので、宝くじだけが行っていることではありません。

宝くじは平等

 宝くじは単純にギャンブルとして考えた際のシンプルさが際立っています。たとえば、競馬にはさまざまな要素が絡みます。馬の血統、状態、戦績、騎手の実力や行われる環境の影響など。これは競馬へのロマンを生む要素でもあるといえるでしょう。競馬は研究に研究を重ねて、勝率を挙げることはある程度可能かもしれませんが、それだけ難しさと深みがあります。

 これに対して、宝くじはただ数字の記された紙を買うだけです。他に私たちができるのは、売り場を選ぶことくらいでしょうか。しかし、売り場を選んだとしても、実際に当たるかどうか直接関係はありません。また予想のしようもありません。つまり、あらゆるひとに平等な仕組みです。

 また、ジャンボ宝くじは年に数回と、タイミングが決まっています。ある意味その季節の風物詩とも言えるでしょう。特に賭け事にあまり触れない生活をしている人に、季節ごとにささやかな心の弾みをもたらすイベントだとも言えます。つまり、どんな仕事をしていて、どんな風に生きていようと、一律に平等に大金が当たる可能性が与えられる機会が、宝くじだと言えるのではないでしょうか。
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