社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
フレイルという老年症候群は、口から予防する
人生100年が夢ではなくなってきた現在、ただ平均寿命が延びるだけでなく、健康に生きられる年数が延びることは、誰しもの関心事項です。いま老年医学の世界で注目されているのは「フレイル」という状態。健常な状態と日常生活でサポートが必要な要介護状態との間にある、身体的・精神的・社会的に虚弱になった状況を指します。
注目されているのは、これまで「歳だから弱っても仕方がない」とみなされてきた状態が治療によって改善でき、また予防もできる点です。生き生きとした老後を送るために、私たちは何に気をつければいいのでしょうか。国家公務員共済組合連合会虎の門病院院長の大内尉義氏の講話を参考にしてみました。
フレイルを予防するポイントは「運動」「栄養」「社会参加」の三位一体だといわれています。筋肉を増やすためにはウォーキングなどの有酸素運動とともに筋トレも必要とされ、食事では十分なタンパク質の摂取が奨励されています。
これだけでも従来の「高齢者」イメージをくつがえしますが、さらに注目されるのは社会参加。人は高齢になるにつれ社会と接するのがおっくうになりがちですが、家に閉じこもってばかりいるとうつ傾向に陥りがちです。仕事や趣味、ボランティアなど、さまざまな活動に積極的に参加していくことが、重要なフレイル対策になると研究されています。
ものがかみにくくなると、自分のかめるものだけを好んで食べるようになるため、かむ機能はますます衰え、食事の質が低下して栄養不足に陥っていきます。それにより、かむ機能や飲み込む機能はさらに悪くなるという悪循環が続きます。これは、どこかで断ち切る必要があるのです。
歯科医を定期的に受診して、虫歯の治療や入れ歯のチェックは念入りにしてもらいましょう。ちゃんと「歯でものがかめる」「のみ込める」ためには、自分の歯の残り本数やあごのかみ合わせだけでなく、舌やのどなどの筋肉が協調することが大切です。
かむ力、舌を上あごにつける力、舌の動きなどの機能はすべて加齢とともに低下するものですが、自覚的に鍛えていくと効果はあります。例えば多くの病院や施設で取り入れられているのが「パタカラ体操」。「パ、パ、パ」「タ、タ、タ」「カ、カ、カ」「ラ、ラ、ラ」と連続して発声することで、舌の動きを速く保ち、食べるときに働く筋肉を鍛えることができます。
姥捨てを描いた深沢七郎の小説『楢山節考』には、主人公の“おりん”が、70歳を目前にしても丈夫な自分の歯を石で砕くシーンがありました。しっかり食べられる歯をそろえていることが全身の健康の証であり、健康長寿の秘訣であることは、昔からの庶民の知恵そのものです。
注目されているのは、これまで「歳だから弱っても仕方がない」とみなされてきた状態が治療によって改善でき、また予防もできる点です。生き生きとした老後を送るために、私たちは何に気をつければいいのでしょうか。国家公務員共済組合連合会虎の門病院院長の大内尉義氏の講話を参考にしてみました。
フレイル予防は「運動」「栄養」「社会参加」の三位一体
フレイルは、日本老年医学会が2014年に提唱した言葉です。多くの高齢者は健常な状態から、筋力が衰える「サルコペニア」という状態になり、握力や歩行速度が低下してきます。サルコペニアが進行すると転倒などをきっかけとして活動の低下が生じやすく、生活機能が全般に衰える「フレイル」となり、要介護状態に至るという理解に基づいています。フレイルを予防するポイントは「運動」「栄養」「社会参加」の三位一体だといわれています。筋肉を増やすためにはウォーキングなどの有酸素運動とともに筋トレも必要とされ、食事では十分なタンパク質の摂取が奨励されています。
これだけでも従来の「高齢者」イメージをくつがえしますが、さらに注目されるのは社会参加。人は高齢になるにつれ社会と接するのがおっくうになりがちですが、家に閉じこもってばかりいるとうつ傾向に陥りがちです。仕事や趣味、ボランティアなど、さまざまな活動に積極的に参加していくことが、重要なフレイル対策になると研究されています。
「オーラル・フレイル」に要注意
「オーラル・フレイル」は、口腔機能の低下がサルコペニアやフレイルにもたらす関係に着目して、東京大学高齢社会総合研究機構の飯島勝矢教授が提唱した概念です。ものがかみにくくなると、自分のかめるものだけを好んで食べるようになるため、かむ機能はますます衰え、食事の質が低下して栄養不足に陥っていきます。それにより、かむ機能や飲み込む機能はさらに悪くなるという悪循環が続きます。これは、どこかで断ち切る必要があるのです。
歯科医を定期的に受診して、虫歯の治療や入れ歯のチェックは念入りにしてもらいましょう。ちゃんと「歯でものがかめる」「のみ込める」ためには、自分の歯の残り本数やあごのかみ合わせだけでなく、舌やのどなどの筋肉が協調することが大切です。
かむ力、舌を上あごにつける力、舌の動きなどの機能はすべて加齢とともに低下するものですが、自覚的に鍛えていくと効果はあります。例えば多くの病院や施設で取り入れられているのが「パタカラ体操」。「パ、パ、パ」「タ、タ、タ」「カ、カ、カ」「ラ、ラ、ラ」と連続して発声することで、舌の動きを速く保ち、食べるときに働く筋肉を鍛えることができます。
姥捨てを描いた深沢七郎の小説『楢山節考』には、主人公の“おりん”が、70歳を目前にしても丈夫な自分の歯を石で砕くシーンがありました。しっかり食べられる歯をそろえていることが全身の健康の証であり、健康長寿の秘訣であることは、昔からの庶民の知恵そのものです。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
「見せかけの相関」か否か…コロナ禍の補助金と病院の関係
会計検査から見えてくる日本政治の実態(2)病床確保と補助金の現実
コロナ禍において一つの大きな課題となっていたのが、感染者のための病床確保だ。そのための補助金がコロナ患者の受け入れ病院に支給されていたが、はたしてその額や運用は適正だったのか。事後的な分析で明らかになるその実態...
収録日:2025/04/14
追加日:2025/07/18
なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景
民主主義の本質(1)近代民主主義とキリスト教
ロシアや中華人民共和国など、自由と民主主義を否定する権威主義国の脅威の増大。一方、日本、アメリカ、西欧など自由主義諸国における政治の劣化とポピュリズム……。いま、自由と民主主義は大きな試練の時を迎えている。このよ...
収録日:2024/02/05
追加日:2024/03/26
胆のう結石、胆のうポリープ…胆のうの仕組みと治療の実際
胆のうの病気~続・がんと治療の基礎知識(1)胆のうの役割と胆石治療
消化にとって重要な臓器「胆のう」。この胆のうにはどのような仕組みがあり、どのような病気になる可能性があるのだろうか。その機能、役割についてあまり知る機会のない胆のう。「サイレントストーン」とも呼ばれる、見つけづ...
収録日:2024/07/19
追加日:2025/07/14
3300万票も獲得した民主党政権がなぜ失敗?…その理由
政治学講座~選挙をどう見るべきか(5)政権交代と民主党
民主党は、2009年の衆議院選挙で過半数の議席を獲得し、政権交代に成功した。しかし、その後の政権運営に失敗してしまった。その理由についてはいまだ十分な反省が行われていないという。ではなぜ民主党は失敗してしまったのか...
収録日:2019/08/23
追加日:2020/02/12
印象派を世に広めたモネ《印象、日の出》、当時の評価額は
作風と評論からみた印象派の画期性と発展(2)モネ《印象、日の出》の価値
第1回印象派展で話題となっていたセザンヌ。そのセザンヌと双璧をなすインパクトを与えた作品があった。それがモネの《印象、日の出》である。印象派の発展において重要な役割を果たした本作品をめぐる歴史的議論や当時の市況を...
収録日:2023/12/28
追加日:2025/07/17