テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2018.09.28

加熱するコーヒーチェーン戦争で勝ち残るのは?

 ちょっとコーヒーを飲んでひと息つこう、そう思ったときにどのお店に入りますか? 

 今や街中には数多くのコーヒーショップがひしめきあい、価格重視の店や雰囲気重視の店など、店ごとにさまざまな特徴があります。さらに最近ではコンビニやファストフード店でも本格的なコーヒーが飲めるようになり、コーヒーチェーン戦争は熾烈を極めています。そんな中、今後はどんな店が生き残れるのでしょうか。

長年業界を引っ張ってきたのはスタバ、ドトール

 帝国データバンクの調査によると、売り上げ、店舗数ともに国内カフェ業界のトップに立つのはスターバックスコーヒージャパン。「スタバ」は強いブランド力を持ち、国内1300店舗を展開(2017年12月末時点)し、2017年は1700億円もの売上をあげ、業界の中でも特に大きい勢力を誇っています。

 次点につけたのがドトールコーヒーで、2017年の売上は725億円、店舗数は1100店舗(2018年7月末時点)を超えています。ドトールではコーヒー1杯220円とリーズナブルな価格で提供し、低価格帯のコーヒーショップの代表格ともされています。

 長年カフェ業界を牽引している2社ですが、実はスタバは顧客満足度No.1からの転落、ドトールも店舗数、売上が伸び悩むなど芳しくない状況が続いているのです。かつては圧倒的な存在感を保っていた2社ですが、その栄光に陰りが見え始めています。

 そんな中、この2社を差し置いてめざましい成長を遂げているのが、コメダ珈琲店です。2017年の売上げは243億円で前年比10.7%と、増収率では第1位に輝いています。2016年に上場してから着々と店舗を増やし、充実したモーニングやフードメニューで快進撃を続けているのです。

高価格帯コーヒーチェーンの台頭

 コメダ珈琲店のコーヒーの値段を見てみると1杯420円。ドトールと比べると倍近くの値段ですが、これだけの成長を見せる集客に成功しています。さらにいえば、コメダ珈琲店に限らず最近では高価格帯のコーヒーチェーンの人気が高まる傾向が強くなっています。

 高価格帯の代表格である喫茶ルノアールはコーヒー1杯500~700円(店舗によって異なる)。ドトールと比べると約2~3倍の値段であるにも関わらず、毎年店舗数を微増させ、18年3月期の売上げは59億円と5年前に比べて23%増と、堅実な伸びを見せています。

 また、星乃珈琲店もコーヒー1杯400~700円(店舗によって異なる)で、高価格帯のチェーン店のひとつといえるでしょう。2011年に誕生してから年30店舗のペースで新規出店を続け、現在は全国220店舗にまで規模を拡大し、18年2月期の売上げは前年比11%の144億円にのぼっています。

 この2店の共通点のひとつは「贅沢な空間づくり」。ルノアールは純喫茶の趣を大切にした内装と、広々とした席を確保することで、ゆったりと落ち着いた時間を提供しています。同じく星乃珈琲店はアンティークのソファや照明で高級感を出しながら、席の間には仕切りを置いたり距離をしっかりとったりすることで、周りの客を気にすることなくくつろげるようになっています。

「上質な空間」への需要が増えている

 インターネット上で「ルノアールは高い?安い?」という議論が話題を呼んだことがありました。一方は「コーヒー1杯220円で飲める時代に、500~700円も出さなきゃいけないなんて高すぎる」、もう一方は「他の店よりも落ち着いてくつろげることを考えればむしろ安い」という意見。この議論から「低価格路線が一定の支持を集める一方で、低価格路線から一歩進んだ『上質な空間・接客サービス』へのニーズが高まっている」ということが分かるのではないでしょうか。

 ドトールコーヒーは主力のドトールが伸び悩む中、コーヒー1杯1000円という超高価格帯路線の「神乃珈琲」を出店するという新たな取り組みを始めました。今後、各社がどのような取り組みをしていくのかが、命運を分ける鍵となっていくでしょう。

<参考サイト>
・帝国データバンク:喫茶店・カフェ経営業者 1180 社の経営実態調査
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p180801.pdf
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

分断進む世界でつなげていく力――ジェトロ「3つの役割」

分断進む世界でつなげていく力――ジェトロ「3つの役割」

グローバル環境の変化と日本の課題(5)ジェトロが取り組む企業支援

グローバル経済の中で日本企業がプレゼンスを高めていくための支援を、ジェトロ(日本貿易振興機構)は積極的に行っている。「攻めの経営」の機運が出始めた今、その好循環を促進していくための取り組みの数々を紹介する。(全6...
収録日:2025/01/17
追加日:2025/04/01
石黒憲彦
独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)理事長
2

最悪10メートル以上海面上昇…将来に禍根残す温暖化の影響

最悪10メートル以上海面上昇…将来に禍根残す温暖化の影響

水から考える「持続可能」な未来(1)気候変動の現在地

今や世界共通の喫緊の課題となっている地球温暖化。さらに、日本国内の上下水道など、インフラの問題も、これから大きな問題になっていく。地球環境からインフラまで、「持続可能」な未来をどうつくっていくのかについて、「水...
収録日:2024/09/14
追加日:2025/03/06
沖大幹
東京大学大学院工学系研究科 教授
3

なぜやる気が出ないのか…『それから』の主人公の謎に迫る

なぜやる気が出ないのか…『それから』の主人公の謎に迫る

いま夏目漱石の前期三部作を読む(5)『それから』の謎と偶然の明治維新

前期三部作の2作目『それから』は、裕福な家に生まれ東大を卒業しながらも無気力に生きる主人公の長井代助を描いたものである。代助は友人の妻である三千代への思いを語るが、それが明かされるのは物語の終盤である。そこが『そ...
収録日:2024/12/02
追加日:2025/03/30
與那覇潤
評論家
4

イーロン・マスクは何がすごい?生い立ちと経歴

イーロン・マスクは何がすごい?生い立ちと経歴

イーロン・マスクの成功哲学(1)マスクが「世界一」になるまで

2022年、フォーブス誌が発表した世界長者番付の一位となったイーロン・マスク。テスラの電気自動車やスペースXのロケット開発などを通じ、革新的なイノベーションを実現してきたことで知られるマスクは、いかにして現在のような...
収録日:2022/06/22
追加日:2022/08/23
桑原晃弥
経済・経営ジャーナリスト
5

このように投資にお金を回せば、社会課題も解決できる

このように投資にお金を回せば、社会課題も解決できる

お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(6)日本の課題解決にお金を回す

国内でいかにお金を生み、循環させるべきか。既存の大量資金を社会課題解決に向けて循環させるための方策はあるのか。日本の財政・金融政策を振り返りつつ、産業育成や教育投資、助け合う金融の再構築を通した、バランスの取れ...
収録日:2024/12/04
追加日:2025/03/29
養田功一郎
元三井住友DSアセットマネジメント執行役員