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日本で最も「混雑率の高い」路線とは?
オフピーク通勤が推奨される昨今、主要都市の電車の混雑具合はどのようになっているのでしょうか。国土交通省は2018年7月、通勤通学時間帯の都市鉄道の混雑率について、調査結果を発表しました。公表されたデータをもとに、特に混んでいる路線と、混雑率が高まった理由について考察します。
たとえばある朝のピーク時間帯(1時間)に、X駅~Y駅を走る6両編成の電車が14本あるとします。電車1本の定員が140人とすると、輸送力は6両×14本×140人=11,760人となります。この1時間の輸送力11,760人に対し、13,000人が電車を利用したとすると、13,000人÷11,760人×100≒110となり、混雑率110%と導き出されます。
つまり混雑率とは輸送人員÷輸送力、「ピーク時間帯1時間の平均値」で表されるのです。
国は主要31区間の平均混雑率を150%以下(「広げて楽に新聞を読める」程度)に、ピーク時における個別路線の混雑率を180%以下(「折りたたむなど無理をすれば新聞を読める」程度)にすることを目標としています。
【最混雑区間ワースト5】
1位:東京メトロ東西線(木場~門前仲町)199%(0)
2位:JR総武線 各駅停車(錦糸町~両国)197%(-1%)
3位:JR横須賀線(武蔵小杉~西大井)196%(+5%)
4位:JR南部線(武蔵中原~武蔵小杉)189%(-1%)
5位:JR東海道線(川崎~品川)187%(+3%)
同5位:日暮里・舎人ライナー(赤土小学校前~西日暮里)187%(-1%)
※()内は前年比
また、国土交通省は東京圏、大阪圏、名古屋圏それぞれの電車の混雑率も発表しています。
【三大都市圏主要区間の平均混雑率】
東京圏:163%
大阪圏:125%
名古屋圏:131%
日本の人口が集中している東京圏は163%と、断トツの混雑率。またさきほどのワースト5はすべて東京圏の路線となっているうえ、東京圏以外で150%を越す区間は福岡県の西日本鉄道貝塚線(名島~貝塚)のみだということです。
ひとつは小田急小田原線(世田谷代田~下北沢)。前年の混雑率は192%とこれまで混雑率が非常に高いことで知られた区間でしたが、今回、同区間の混雑率は151%。なんと前年比で41%の減少になったのです。2018年3月、朝のラッシュ時の列車本数を増加させた「複々線化」が功を奏したと思われます。
一方、その小田急線と入れ替わるように混雑率の高い区間として名前が挙がったのは、第3位のJR横須賀線(武蔵小杉~西大井)。前年比で5%も上昇しています。これは4位のJR南部線にも含まれている、武蔵小杉駅の利用者数が増加したことが要因だされています。
2010年3月に武蔵小杉駅に横須賀線のホームが設置されて以来、武蔵小杉駅周辺にタワーマンションが次々と建てられるほど都市開発が進み、ファミリー層を中心に移住する人が増えました。それにともない通勤客数も急増。2010年度のJR武蔵小杉駅の1日平均乗車人数が9万9617人だったのが、2017年には12万9637人にまで増加しました。今や朝のラッシュ時間は駅の改札内に入るだけで数十分は並ぶという混雑ぶりを見せています。
それは朝のピーク時間帯に実際にダイヤ通りに動いている列車が少ないことや、同じ路線でも「急行」や「各駅停車」が交互に走っている場合、「急行」や「各駅停車」で混雑率に差があるにも関わらず、それをまとめた平均値で出してしまっていることなどが理由に挙げられています。
また、たとえ乗車率が150%程度の車両でも出口や乗り換え階段が近い号車に利用客が集中して混雑率が高まるなど、号車によって混雑率が変わるというケースもあります。
小田急線の複々線化をはじめ、大手鉄道会社は混雑緩和のためにさまざまな手を打ってきましたが、大規模なテコ入れはこの先は現実的に厳しいと予測されています。今後オフピーク通勤を目指すなら、混雑率の数値だけでなく、その路線の事情を含めた多角的な視点から対策する必要があるでしょう。
「混雑率」とは?
混雑率は「輸送人数(利用者数)の輸送力に対する割合」で表されます。輸送力とは、その区間のダイヤで運行されている全列車の定員の合計ではじきだされた数値です。たとえばある朝のピーク時間帯(1時間)に、X駅~Y駅を走る6両編成の電車が14本あるとします。電車1本の定員が140人とすると、輸送力は6両×14本×140人=11,760人となります。この1時間の輸送力11,760人に対し、13,000人が電車を利用したとすると、13,000人÷11,760人×100≒110となり、混雑率110%と導き出されます。
つまり混雑率とは輸送人員÷輸送力、「ピーク時間帯1時間の平均値」で表されるのです。
国は主要31区間の平均混雑率を150%以下(「広げて楽に新聞を読める」程度)に、ピーク時における個別路線の混雑率を180%以下(「折りたたむなど無理をすれば新聞を読める」程度)にすることを目標としています。
混雑率180%超の路線、最混雑率区間ワースト5
国土交通省のまとめた混雑率のデータを見ると、混雑率の高かった区間(朝7~8時代)ワースト1位は、東京メトロ東西線(木場~門前仲町)の199%。次いでJR総武線各駅停車(錦糸町~両国)で197%、3位がJR横須賀線(武蔵小杉~西大井)の196%でした。【最混雑区間ワースト5】
1位:東京メトロ東西線(木場~門前仲町)199%(0)
2位:JR総武線 各駅停車(錦糸町~両国)197%(-1%)
3位:JR横須賀線(武蔵小杉~西大井)196%(+5%)
4位:JR南部線(武蔵中原~武蔵小杉)189%(-1%)
5位:JR東海道線(川崎~品川)187%(+3%)
同5位:日暮里・舎人ライナー(赤土小学校前~西日暮里)187%(-1%)
※()内は前年比
また、国土交通省は東京圏、大阪圏、名古屋圏それぞれの電車の混雑率も発表しています。
【三大都市圏主要区間の平均混雑率】
東京圏:163%
大阪圏:125%
名古屋圏:131%
日本の人口が集中している東京圏は163%と、断トツの混雑率。またさきほどのワースト5はすべて東京圏の路線となっているうえ、東京圏以外で150%を越す区間は福岡県の西日本鉄道貝塚線(名島~貝塚)のみだということです。
混雑率の増減が顕著だった2つの区間
今回の調査で、混雑率の増減が特に目立った路線が2つあります。ひとつは小田急小田原線(世田谷代田~下北沢)。前年の混雑率は192%とこれまで混雑率が非常に高いことで知られた区間でしたが、今回、同区間の混雑率は151%。なんと前年比で41%の減少になったのです。2018年3月、朝のラッシュ時の列車本数を増加させた「複々線化」が功を奏したと思われます。
一方、その小田急線と入れ替わるように混雑率の高い区間として名前が挙がったのは、第3位のJR横須賀線(武蔵小杉~西大井)。前年比で5%も上昇しています。これは4位のJR南部線にも含まれている、武蔵小杉駅の利用者数が増加したことが要因だされています。
2010年3月に武蔵小杉駅に横須賀線のホームが設置されて以来、武蔵小杉駅周辺にタワーマンションが次々と建てられるほど都市開発が進み、ファミリー層を中心に移住する人が増えました。それにともない通勤客数も急増。2010年度のJR武蔵小杉駅の1日平均乗車人数が9万9617人だったのが、2017年には12万9637人にまで増加しました。今や朝のラッシュ時間は駅の改札内に入るだけで数十分は並ぶという混雑ぶりを見せています。
混雑率の落とし穴
混雑率の計算方法は上記の通りですが、これには「実態がともなっていない」という指摘もあります。それは朝のピーク時間帯に実際にダイヤ通りに動いている列車が少ないことや、同じ路線でも「急行」や「各駅停車」が交互に走っている場合、「急行」や「各駅停車」で混雑率に差があるにも関わらず、それをまとめた平均値で出してしまっていることなどが理由に挙げられています。
また、たとえ乗車率が150%程度の車両でも出口や乗り換え階段が近い号車に利用客が集中して混雑率が高まるなど、号車によって混雑率が変わるというケースもあります。
小田急線の複々線化をはじめ、大手鉄道会社は混雑緩和のためにさまざまな手を打ってきましたが、大規模なテコ入れはこの先は現実的に厳しいと予測されています。今後オフピーク通勤を目指すなら、混雑率の数値だけでなく、その路線の事情を含めた多角的な視点から対策する必要があるでしょう。
<参考サイト>
・国土交通省:東京圏で混雑率180%超の路線が12路線から11路線へ
http://www.mlit.go.jp/report/press/tetsudo04_hh_000068.html
・東洋経済ONLINE:首都圏83区間「鉄道混雑率」最新ランキング
https://toyokeizai.net/articles/-/230136
・国土交通省:東京圏で混雑率180%超の路線が12路線から11路線へ
http://www.mlit.go.jp/report/press/tetsudo04_hh_000068.html
・東洋経済ONLINE:首都圏83区間「鉄道混雑率」最新ランキング
https://toyokeizai.net/articles/-/230136
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