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DATE/ 2018.10.06

健康長寿社会の要は「エイジマネジメント」

健康長寿は運動習慣のあるなしが左右する

 健康診断などで「あなたの血管年齢は○歳」と、実年齢もはるか上をいく数字が出てショックを受けた。あるいは、テレビの健康番組で40代にひけをとらない筋力を持つ80歳の笑顔にびっくり。こんな経験を持つ方は多いでしょう。

 このような実年齢と検査数値のギャップの背景には、運動習慣のあるなしが大いに関係している、と一般財団法人日本予防医学協会理事長の神代雅晴氏は言います。実際に、種々の健康関連の検査の結果、適切な運動を適切な時期に習慣として始めていれば、体力の低下を抑制することができるということが判明しているのです。

「エイジマネジメント」という考え方

 若い時期から年相応の運動を生活習慣として取り入れるということは、健康長寿実現のために非常に重要なことです。だからと言って、日常的に運動をしていない人が「自分はもう年をとっているし、もう手遅れ。今からの体力回復は無理」とあきらめる必要はありません。なぜなら、神代氏が紹介する「エイジマネジメント」の考え方では、人生100年時代というロングスパンの視点から、その時点になすべき健康管理を実践すれば、健康で活力ある状態を維持できるとしているからです。

 神代氏は働く人々の健康を守り、働く人々の生きがいや労働生産性の向上を図ることを目的とした産業保健活動の推進にながらく従事してきました。その活動の一環としてのエイジマネジメントでは、年をとったら体力低下、衰えは仕方ないとあきらめるのではなく、その時々に合った健康管理をして健康長寿社会に貢献することを目指し、またそのやり方を指導しているのです。

運動習慣を取り入れるべき節目年齢は男女で異なる

 エイジマネジメントでは、健康長寿の要となる要因として、運動習慣を持つこと、食生活のあり方を見直すこと、睡眠リズムを正しく取ること、適正なワーク・ライフ・バランスを考慮することを挙げています。正しい食生活と同じくらい重要なのが運動習慣で、エイジマネジメントの観点から、男性は20代から、女性は40代から特に健康管理を意識して運動を取り入れるべきだとされています。健康管理の意識年齢に男女差があるのは、男性では中高年期より20代・30代で生活習慣病に関わる異常値を示す人が多いため。また女性は、閉経後に異常値を示すケースが増えるためです。女性は遅くとも更年期に向かう手前の40代で運動習慣を身につけておく必要があるのです。

 ただし、再度繰り返しますが、もう既に60歳だから、70歳だし、とあきらめないこと。自分の健康生活を見直そうと意識したその時点でなすべき健康管理の取り組みがある、と考えるのがエイジマネジメントのありがたいところでもあります。

「1分間の片足立ち」で健康管理をスタート!

 神代氏は、健康管理への意識を高めるために、まず「1分間の片足立ち」で自身の状態をチェックすることを勧めています。目を開けた状態で、片足で立ち1分以上ふらつかずに立っていられるかを試してみて、もしこれができなかったら体力、種々の運動機能の低下と考えるべきです。このままでは日常の多くの場面で、転倒や墜落事故を起こしかねません。

 チェックしてちょっとでも「これはまずい」と感じたら、予防対策を考えましょう。すべての人がジムに通ってトレーナーの指導を受けられるわけではないので、神代氏は簡単手軽にいつでもできる運動として、相撲の「四股踏み」を推奨しています。これは股関節のストレッチ効果があり腸腰筋を鍛えることにもなるのだそうです。身体のしなやかさと強さをアップして、バランス感覚が磨かれる動作です。

 健康長寿社会をはつらつと生きていくには、精神の持ちようとしては「無理せず自然のリズムに任せて」がよいのかもしれませんが、こと体力に関しては、きちんとしたマネジメント、自己管理が必要ということですね。
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小原雅博
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