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仕事で悩んだ時に背中を押してくれる言葉
背中を押してくれる「言葉」の輝き
ツイッターやSNSの普及で、「いい言葉」や「いい話」に出会う機会が増えた。倫理や道徳と肩を張らなくても、人は背中を押してくれる言葉や実話を求めているのかもしれない。古今東西の名言が競うなか、いぶし銀の「言葉」を放つ人がいる。「経営の神様」松下幸之助だ。その経営哲学は、「人間大事」の4文字から出発した。このように証言するのは、松下氏の晩年23年間を秘書として仕え、PHP研究所の社長も務めた江口克彦氏(現参議院議員)だ。
「いいものを安くたくさん」は人への礼節
「人間大事」を経済に当てはめると、商品や仕事はすべて「人間のため」に奉仕すべきだということになる。「素晴らしい人間」のために存在する商品は、できるだけ良いものであり、手の出る価格で、どんな時も不足しないストックが必要だ。それを支えるために企業は存在すると考える。人間相手だから、暴利はむさぼらないし、がんばって働く社員を能力で「切り捨てる」こともしない。「人間大事」の原点が「お客様大事」「社員大事」につながる。これらの使命感は、松下翁の生涯を通じて揺らぐことがなかった。
「社員大事」の精神で苦境を乗り切る
創業からわずか10年余り、昭和恐慌の最も苦しかった時期に松下幸之助は「社員大事」の精神を発揮して苦境を乗り切り、会社を一段と成長させた。1929(昭和4)年の世界恐慌が日本に波及して企業の倒産が相次ぐなか、「倒産か、社員半減か」の決断を迫られる局面を迎えたのである。当時の専務だった井植歳男氏が人員整理案を携えて、西宮の自宅で静養中だった社長の病床を訪れる。
「大将、ついにうちも解雇せななりません。名簿を持ってきました」
「一人も解雇するな、1円も給料を下げるな」
幸之助氏は布団の上に正座すると、解雇者名簿に目を通し、涙を流した。会社を大きくすれば世の中のためになると思ってここまでやってきた。一人ひとりの社員を採用してきたのは、そのために役立ってくれ、引いては国にも貢献してくれと願ってのことだ。不況になったからといって人員整理するのは会社のためにもならないし、気の毒に絶えない。そして、井植氏に次の指示が飛んだ。
「ええか。一人も解雇してはならん! 給料も1円も下げてはならん!」
「その代わりに工場は半日操業。ただし、従業員総動員で残りの半日を販売に当てる。役員も、技術も、製造も、全員がマーケットに出て倉庫の商品を売れ!」
「人間の本質はダイヤモンドだ!」
幸之助の指示に固唾を飲んで待っていた従業員一同は「解雇はない。給料も下がらない」と聞いて、感涙にむせぶ。そして一丸となって在庫商品を売りまくり、増産態勢を築いていく。周囲がしょぼくれていた時期だけに、その活気あふれる姿勢は「積極経営」として昭和史に刻まれた。後に三洋電機の副社長となった後藤清一氏の著書『叱り叱られの記』では、この時の問答の様子が生々しく記録されている。当時「店員」と呼ばれていた社員たちを数字あわせのために排除することなく尊重した姿勢、「人間の本質はダイヤモンドだ」と言い続けた精神は、今こそ大切に見直されるべきではないか。
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