社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2018.11.22

8割が不正解!東京タワーの色は何色?

 2018年9月30日、放送大学の地上波放送が終了したことで、テレビ電波塔としての歴史に幕を下ろした東京タワー。今後も変わらず東京のシンボルとしてその姿をとどめていくということですが、あの独特のカラーリング、実は「赤と白」ではないということをご存じでしょうか?

正確には「オレンジと白」

 赤っぽい部分は、実は「黄赤(インターナショナルオレンジ)」と呼ばれる色。つまり赤ではなくオレンジ色です。東京タワーを運営する日本電波塔株式会社が実施した「東京タワーに関する認識調査」によると、8割の人が東京タワーを「赤」または「朱」と答えたそう。景色の一部として遠くから見ているとわかりづらいですが、晴れの日に近くで見ると、確かに赤よりもオレンジに近い色合いをしているのが分かるでしょう。

 ではなぜあのような配色なのでしょうか。それは航空法と航空法施行規則に定められているからです。黄赤と白が交互に帯状に塗装される配色を「昼間障害標識」といい、飛行機から認識しやすい色として採用されています。

思わず「へぇ~」となる東京タワートリビア

・鉄骨の一部は戦車でできている!?

 高さ150メートルの大展望台より上の部分の一部の鉄骨には、アメリカ軍が朝鮮戦争で使用した戦車を再利用しているといわれています。その確たる証拠は残されていないものの、タワー建設当時、日本は良質な鋼鉄に恵まれていなかったこと、戦車などの軍需品は非常に頑丈で、アメリカとしてもスクラップにして捨てるより売ったほうがメリットがあったことから、可能性は高いと考えられています。

・電卓なしで描いた設計図は1万枚!?

 無骨な鉄塔ながら末広がりの美しさに魅せられる人は多いでしょう。東京タワーを設計した内藤多仲(たちゅう)氏は、特段美しさにこだわったわけではなく、徹底的にシンプルかつ安全で安定した塔を目指した結果であり、あのフォルムは「数字のつくった美しさ」だと語っています。タワーづくりのために描かれた設計図は、なんと1万枚。しかも当時は電卓がなく、すべて手計算ではじきだされているのです。

・当時のとび職の給料は大卒初任給の3.3倍!?

 当時、東京タワーの建設には日本でも腕の立つとび職人たちが携わりました。その給料は大卒の初任給が当時12,000円であるのに対し、東京タワーのとび職人は40,000円。約3.3倍の差が。とはいえ工期はたったの1年半、組み立てはすべて手作業という難工事。しかも工事中に職人1名が落下し、命を落とす事故も発生しています。タワー建設はまさに命がけだったのです。

・ライトアップにかかる電気代はわずか21,000円!?

 夜の東京を彩るライトアップ(ランドマークライト)を日没から24時まで(現在は工事の関係上明け方まで)点灯した場合の金額は約21,000円程度だといいます。何十万円もかかっているのでは……と考えていた人も多いのでは。

 ちなみに、ライトアップは「夏バージョン」と「冬バージョン」があるのに加え、毎週土曜日の20時~22時の2時間限定で行われるライトアップや、ワールドカップの応援などイベントに合わせたライトアップも行われています。

東京スカイツリーが白でOKな理由

 さて、それでは新しい東京のランドマークとなっている東京スカイツリーは、なぜ白(正確にはスカイツリーホワイト)一色なのでしょうか。

 それは、東京スカイツリーは日中も航空障害灯を点灯しているため、航空において安全面が保証されているからです。航空法では「高光度航空障害灯」または「中光度白色航空障害灯」の設置があれば、あの黄赤・白の「昼間障害標識」は省略できるとあるのです。

開業60周年、現在塗装工事中

 東京タワーは、2018年12月23日で開業60周年を迎えます。塗装は基本的に職人さんによる手塗りで5年に1度(塗料の向上により次回から7年に1度)塗り直されており、今年も3月から塗装工事が進められ、2019年夏に終了する見込みだそうです。

 オリンピック開催の前に、皆さんも真新しい「オレンジと白」の装いを一度、間近で見てみてはいかがでしょうか。

<参考サイト>
・東京タワーWEBサイト
https://www.tokyotower.co.jp/index.html
・東京スカイツリーWEBサイト
http://www.tokyo-skytree.jp
・東京タワーがテレビ電波塔の役目を終えた。水族館も閉館、今後の予定は?
https://www.huffingtonpost.jp/2018/10/01/tokyotower-syuryou_a_23546851/
・東京タワーの色は「赤」ではなかった! 還暦を迎える東京タワーの秘密8選!
https://getnavi.jp/life/223115/
・東京タワーはどうしてあの色なの? - デザイン・設計のヒミツを広報さんに聞いてみた
https://news.mynavi.jp/article/20130916-k01/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ

「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ

「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造

宇宙とは何かを考えるうえで中国の古典である『荘子』・『淮南子(えなんじ)』に由来する「宇宙」という言葉が意味から考えてみたい。続いて、地球から始まり、太陽系、天の川銀河(銀河系)、局所銀河群、超銀河団、そして大...
収録日:2020/08/25
追加日:2020/12/13
岡朋治
慶應義塾大学理工学部物理学科教授
2

日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは

日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは

歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本

「歴史を探索していく」とは、どういうことなのだろうか。また、「歴史を活かしていく」とはどういうことなのだろうか。歴史作家の中村彰彦氏に、歴史を探り、活かしていく方法論を、具体的に教えてもらう本講義。第一話は、歴...
収録日:2025/04/26
追加日:2025/11/14
3

脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは

脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは

エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質

「ワット・ビット連携」の概念がある。これは神経と血管の関係にも似ており、両者が密接に関係するところから、それをもとに人間の本質について考察していくことになる。また、中村天風の思想から着想を得て、人間の心には霊性...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/13
4

なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ

なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ

編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?

「何回説明しても伝わらない」「こちらの意図とまったく違うように理解されてしまった」……。そんなことは、日常茶飯事です。しかしだからといって、相手を責めるのは大間違いでは? いやむしろ、わが身を振り返って考えないと...
収録日:2025/10/17
追加日:2025/11/13
5

なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み

なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み

何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み

なぜ「何回説明しても伝わらない」という現象は起こるのか。対人コミュニケーションにおいて誰もが経験する理解や認識の行き違いだが、私たちは同じ言語を使っているのになぜすれ違うのか。この謎について、ベストセラー『「何...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/02
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授