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DATE/ 2018.11.30

健康なら割引?保険会社が運動を促す理由

 保険好きと言われる日本人。生命保険文化センターの平成28年度「生活保障に関する調査」
によると、日本人の生命保険の加入率は約80%とも言われています。そんな「保険大国」で今流行しているのが、運動習慣や健康診断の結果などに応じて保険料を割り引くという商品です。いったいどんな内容なのか、そして割引になる仕組みはどうなっているのでしょうか。

健康習慣次第で保険料が30%も割引!?

 テレビで積極的にCMを打っているのが住友生命の「Vitality」。オンラインチェックや健康診断など現状を確認する、あるいは予防検診を受ける、健康を改善するために一定以上の歩数を歩く、フィットネスジムへ通うなど様々な項目に応じてポイントが加算されます。ポイントごとにランク付けされ、最高ランクを維持し続けると保険料が最大30%オフとなる仕組みになっています。

 第一生命の「健診割」は健康診断書等を提出することによって契約時に保険料が割引となり、健康状態によってはさらに保険料が割引に。健康診断書等を提出するだけで割引が適用されるのは生命保険業界初とうたわれています。東京海上日動あんしん生命の「あるく保険」は、歩くと保険料の一部が返ってくるというシステム。1日平均の歩数が8000歩以上となる計測単位期間に応じて、健康増進還付金がもらえるという「にんじん」が用意されています。

 各社がこうした商品を次々と導入するのはなぜなのでしょうか。各保険商品は複雑な計算に基づいて価格がはじき出されていますが、その際にキモとなってくるのは死亡率や病気になる確率。死亡の確率が低い加入者であれば生命保険の保険料は安く、確率が高ければその分保険料は高くなります。保険会社が経営を成り立たせていくためには当然の仕組みです。

健康を促すことで保険会社のイメージアップも

 前述したような商品は、加入者は〇〇歳の平均的な人に比べて健康だから病気になる確率が下がる、だから保険料を下げても元が取れる、そういった計算のもとに作られています。健康なら割り引くという意味で訴求力がありますし、健康を維持すれば割引やキャッシュバックがあるというシステムは加入者の健康を促すという点でイメージアップにもつながるでしょう。

 超高齢社会の日本では、今後高齢者の健康格差が社会的問題になってくることも予想されます。実年齢は75歳でも体年齢は40歳のAさんと、実年齢は60歳でも体年齢は80歳のBさんでは、Aさんの方が保険料が安くなる、そんな「格付け」が自然となる日がやってくるかもしれません。

<参考サイト>
・生命保険に加入している人はどれくらい?|公益財団法人 生命保険文化センター
http://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/provision/8.html
・未来を変えていく、健康増進型保険 住友生命 「Vitality」 | 住友生命
http://vitality.sumitomolife.co.jp/#About
・ジャスト商品説明(3大疾病・介護等の保障)|商品ラインアップ|第一生命保険株式会社
http://www.dai-ichi-life.co.jp/examine/lineup/products/just/index.html
・あるく保険 スペシャルサイト| 医療保険 | 東京海上日動あんしん生命保険
http://www5.tmn-anshin.co.jp/arukuhoken_special/index.html
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