テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2019.05.18

今の私立大学生の仕送り額や生活費の平均は?

 現在、大学無償化へ向けての審議が進んでいます。実施は2020年4月が想定されているとのこと。たしかに大学はお金がかかりすぎることで、経済的に余裕のない世帯から教育を受ける機会を奪っているという状況があります。では現在、大学生が生活していくにはどのようなお金がかかっているのでしょうか。ここでは、特に私立大学に通う学生について、経済的な状況を見てみましょう。

入学の年にかかる費用は年収の3割

 東京私大教連(東京地区私立大学教職員組合連合)は、2018年に関東1都5県の私立大学14大学を対象として「私立大学新入生の家計負担についてのアンケート」を行いました。有効回答件数は4181件。ここに記された情報によると、「入学の年にかかる費用(自宅外通学者)」は296万2918円となっています。また、私立大学に子どもを進学させる世帯の平均年収は939万6000円。つまり年収の31.9%が入学の年にかかることが明らかになっています。

 内訳を見ると、受験費用253,300円。住居費595,100円、初年度納付金1,333,418円、仕送り額(4月~12月)が781,000です。家賃や敷金礼金といった住居費に関しては、都心部の大学とそれ以外の大学でやや差があることは想定できます。しかし、初年度納付金が大きなウェイトを占めていることはどの地域の大学でも共通と考えていいでしょう。また、こういった費用をまかなうために「借入れ」をした家庭は17.0%、金額は199万円で過去最高となっています。

仕送りによる1日の生活費は677円

 「仕送り額の平均」は、新生活準備や教材購入費用がかかる5月で99,700円、6月以降の月平均が83,100円です。この金額はいずれも過去もっとも低い水準となっています。6月以降の仕送り額が最も高かったのは1994年の124,900円。この時と比べて現在は41,800円(33.5%)減少しています。

 この仕送り額は家賃(平均62,800円)を含んでいるので、仕送りに占める家賃の割合は75.6%となります。つまり、大学生の仕送りによる生活費は20,300円、一日あたり、677円(30日計算)です。これは過去もっとも低い水準となっています。ちなみにピーク時は1990年度の2460円。この時から比較すると現在は2割という低水準です。いくら学生は贅沢できないとはいえ、1日677円での生活はほぼ不可能です。大学生はアルバイトすることが前提であることは間違いないでしょう。

なぜ仕送りは減っているのか

 私立大学に送り出す世帯の平均年収939万円という数字を見ると、それなりに豊かな層という感じがします。それでも、仕送り額は年々減っています。この点はどう考えたらいいのでしょうか。ひとつには、大学生の子どもがいる世帯は同時に親の介護を行っている可能性があります。また同時に、老後の資金に対する不安が高く、あまり支出にまわせないのかもしれません。少なくとも1990年代のように、団塊の世代が働き盛りだった時代とは、かなり様相が異なっていると言えるでしょう。

<参考サイト>
私立大学新入生の家計負担調査 2018年度│東京私大教連
http://tfpu.or.jp/wp-content/uploads/2019/04/2018kakei-hutan-chousa20190403.pdf
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

なぜ『ホトトギス』に注目?江藤淳の「リアリズムの源流」

なぜ『ホトトギス』に注目?江藤淳の「リアリズムの源流」

AI時代に甦る文芸評論~江藤淳と加藤典洋(2)江藤淳の「リアリズムの源流」

文芸評論を再考するに当たり、江藤淳氏の「リアリズムの源流」を振り返ってみる。一般的に日本で近代小説が始まった起源は坪内逍遥だといわれるが、江藤氏はそれに疑問を呈す。そして注目したのが、夏目漱石の「坊ちゃん」であ...
収録日:2025/04/10
追加日:2025/07/02
與那覇潤
評論家
2

ヨーロッパとは?地図で読み解く地政学と国際政治の関係

ヨーロッパとは?地図で読み解く地政学と国際政治の関係

地政学入門 ヨーロッパ編(1)地図で読むヨーロッパ

国際政治の戦略を考える上で今やかかせない地政学の視座。今回のシリーズではヨーロッパに焦点を当て、地政学の観点から情勢分析をする。第1話目では、まず地政学の要点をおさらいし、常に揺れ動いてきた「ヨーロッパ」という領...
収録日:2025/02/28
追加日:2025/05/05
小原雅博
東京大学名誉教授
3

アジア的成熟国家モデルづくりへ、日本が目指すべき道とは

アジア的成熟国家モデルづくりへ、日本が目指すべき道とは

日本の財政と金融問題の現状(4)日本が目指すべき成熟国家への道

機関投資家や経営者の生の声から日本の金融市場の問題点を見ていくと、リスクマネーを供給するための市場づくりや人材育成等の課題が浮き彫りになる。良質なスタートアップ企業を育てるにはどうすればいいのか。今こそアジア的...
収録日:2025/04/13
追加日:2025/07/01
木下康司
元財務事務次官
4

「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?

「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?

キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか

キリスト教とは何か。「文明の衝突」が世界中で現実化する中、この問題は日本人にとっても重要なものになっている。上智大学神学部教授・竹内修一氏は、「キリスト教とは何か」という問いは、同時に「イエスとは誰なのか」も意...
収録日:2016/12/26
追加日:2017/02/28
竹内修一
上智大学神学部教授
5

最悪のシナリオは?…しかしなぜ日本は報復すべきでないか

最悪のシナリオは?…しかしなぜ日本は報復すべきでないか

第2次トランプ政権の危険性と本質(8)反エリート主義と最悪のシナリオ

反エリート主義を基本線とするトランプ大統領は、金融政策の要であるFRBですらも敵対視し、圧力をかけている。このまま専門家軽視による経済政策が進めば、コロナ禍に匹敵する経済ショックが世界的に起こる可能性がある。最終話...
収録日:2025/04/07
追加日:2025/06/28
柿埜真吾
経済学者