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若者にはわからない?懐かしの「ネット文化」
ネット文化が誕生し成長した平成時代
実は日本ではじめてインターネットサービスプロバイダがサービスを開始したのは、平成4年にあたる1992年。日本のインターネット文化は約30年前に誕生し、平成とともに歴史を刻んできました。インターネットが普及する以前にも、端末同士の通信手段としてパソコン通信がありました。ただしパソコン通信では同じ通信会社のユーザー同士しかやりとりできず、通信会社が提供するコンテンツしか利用できません。これに対し、世界中の通信回線とつながれるシステムとして誕生したのがインターネットです。
つまりインターネットはまだまだ新しい通信手段ですが、それでも30年といえばけっこうな年月ですよね。もはやネット黎明期の文化は10代・20代の若者には通用せず、SNSで当時を懐かしむ行為を「インターネット老人会」と呼ぶこともあります。
「老人会」で語られるのは、ウェブサイトに設置したカウンターがキリのいい数字である状態を指す「キリ番」や、リンクがはたらかないようにウェブサイトのアドレス「http://」の「h」を抜いて記述する「h抜き」など。初期の文化が多く、30代でもついていけないことがしばしばあります。
インターネットの高速化からSNSの隆盛へ
20世紀末から21世紀初頭のいわゆるミレニアム期になると、インターネットは急速に普及しました。その理由のひとつが、1999年にNTTドコモが開始した携帯電話用のインターネットサービス「iモード」です。これによってモバイル端末から手軽にネット接続できるようになりました。そんなiモードも2019年9月には新規受付を終了しており、時代の移り変わりが感じられます。さらに2001年にはADSL、2003年には家庭用の光回線が登場して通信速度が飛躍的に向上しました。こうして快適なネット環境が整うと、2004年にmixi、GREE、AmebaなどのSNSが次々とサービスを開始し、現在のSNS隆盛の基礎となったのです。
近年ではSNSといえばX(旧Twitter)、Instagram、LINEなどが人気ですが、かつてはmixiがSNS最大手でした。若者はこの事実にピンとこないかもしれませんね。
ネットスラングやケータイ小説などの文化
ネット生まれの俗語であるネットスラングにも興亡があります。1999年に開設された匿名掲示板サイトの2ちゃんねる(2017年より5ちゃんねる)からは多くのネットスラングが生まれ、消え去りました。たとえば「(笑)」の簡略化として多用された「藁」は、現在ではさらに簡略化されて「w」となり、「藁」は使われなくなっています。またスレッドが多い2ちゃんねるは目的の内容を探しにくいため、近年では本サイトよりまとめサイトをチェックする人が増加中。閲覧スタイルも変化しています。ネットスラングとは少し異なりますが、ネット上で守るべきエチケットを意味する「ネチケット」もあまり聞かれなくなりましたね。最近は「ネットマナー」と表現されることが多いです。
このほか、懐かしいと思ってしまうネット文化にケータイ小説を上げる方もいるかもしれません。2000年代に流行したケータイ小説は、素人がいわゆる「ガラケー」で書き、あまり小説を読まない女子中高生が夢中になって読んだ作品群です。作者のリアルな体験が描かれているとされ、『Deep Love』や『恋空』など映画化、ドラマ化、漫画化されたヒット作もありました。しかし2009年にスマホのiPhoneが登場すると、若者たちがこぞってガラケーから乗り換えたことや、多くのケータイ小説サイトがスマホに未対応だったことが重なり、ケータイ小説はあっという間に廃れてしまったのです。
若者文化と密接につながったネット文化は回転が速く、流行がすぐに入れ替わります。現在流行しているSNSやネットスラングにも、あと数年で失われたネット文化になるものがあるでしょう。
<参考サイト>
・デジタルアーツ株式会社 日本におけるインターネットの歴史
https://www.daj.jp/20th/history/
・デジタルアーツ株式会社 日本におけるインターネットの歴史
https://www.daj.jp/20th/history/
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