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ビジネスマンの「スニーカー通勤」アリ?ナシ?
ビジネスマンの間で「リュック」が増加中なのは、満員電車に乗るとすぐわかります。その足元で静かに人気を集めているのが、「スニーカー通勤」です。なぜスニーカー通勤が増えているのか、これからどうなるのかなど、調べてみました。
その時点での意識を、「週に4~5日はスーツを着用する」20代から50代の男性を対象に調べたアンケートがあります(調査元は、靴の輸入・販売を手がけるロックポート ジャパン株式会社)。
当時、「スニーカー通勤したいですか」の問いに、「とてもしたい」と答えたのは2割以上。「したい」「どちらかというとしたい」を足すと、5割強になります。「どちらとも言えない」様子見族が3割ほどいて、「どちらかというとしたくない」から「絶対にしたくない」の拒否派は2割弱でした。
一方で、スニーカー通勤が可能だった会社は全国で4割以上(西日本は5割近く)。それでも、実際には「ビジネスシューズを週に4日以上履く」人が96.8%。「スニーカー通勤をしたくて、会社も禁止してはいないのに、履いていない」のが、ほとんどのビジネスマンでした。
職場で許容されているのにスニーカー通勤をしたくないと回答した人の理由は、1位「スニーカーはスーツに合わない(51.4%)」、2位「ビジネスマンとして革靴を履くことはマナーだ(37.1%)」。この強固な思いは、どのようにくつがえされてきたのでしょうか。
健康面でいうと、「20代~50代のビジネス世代は、60代以上よりスポーツ実施率(週に一度以上スポーツをしている割合)が低い」という驚きの結果も発表され、「このままではヤバいかも」と密かに運動不足を懸念していた層を直撃します。
モデルによる『FUN+WALK STYLE』は、こうすればスニーカーでもビジネス現場にマッチすると提案するファッションショー。「フォーマルスタイル」と「カジュアルスタイル」の男女それぞれ2組の着こなしが紹介された後は、2017年から福井県庁が取り組んできた『スニーカービズ』の実績が伝えられました。一般企業からは、アサヒ飲料、アシックスジャパン、高島屋、ドコモ・ヘルスケアの事例が続々と紹介されました。
この日登壇したのは人ばかりではなく、ご当地キャラの数々も。1日の歩数にあわせて、これらのキャラがどんどん変身したり、1千歩ごとにたまるポイントが割引クーポンに交換できたりする「FUN+WALK」アプリ発表のためでした。アプリはGoogle Play、App Storeからスマホにインストールできるようになっています。
ロート製薬は、2019年1月から1日の歩数などに応じて社内通貨「ARUCO(アルコ)」がもらえる仕組みを導入し、会社が運営するレストランでの利用や休暇の取得ができるようになりました。住友生命保険やアサヒ飲料も、スニーカー通勤を「解禁」していることが報じられています。
最近、目を引いたのは、日航が新たに設立したLCCがユニホームに白と黒のスニーカーを取り入れたというニュース。2020年夏に就航する「ZIPAIR(ジップエア) Tokyo」の国際線で導入される予定で、動きやすさを重視した制服にあわせて採用されました。
さらにジョンソン・エンド・ジョンソンが、スニーカーでの就職活動を解禁し、他社への波及を呼びかけています。絆創膏ブランド「バンドエイド キズパワーパッド」のキャンペーンとして「#スニ活」を提案したのです。「靴ずれが減ると、バンドエイドは売れなくなるかもしれませんが…」と、あえて提唱した姿勢に賞賛が寄せられています。
折から、SNSでは女性の「仕事でヒールやパンプスを履かなきゃいけないという風習をなくしたい」とグラビアアイドル・女優・ライターの石川優実さんが「#KuToo」のハッシュタグを発信。2019年6月には18,856人の署名とともに要望書を厚生労働省に提出しています。
セレクトショップのユナイテッドアローズが発売する「ドレススニーカー」やコールハーンの「グランドエボリューション」などは、正面から見ると、とてもスニーカーとは思えない仕上がりです。さらにナイキ、ニューバランス、アディダスといったトップ・メーカーでは、ブランド公式のカスタムサービス(オーダーメイド)を始めており、スーツ用にカスタマイズした一足を発注する手もあります。
相手あってのビジネスですから、不快感や違和感を与えないマッチングが何より求められます。売れ筋が黒やネイビー、ブラウンなどの落ち着いた色合いなのも納得。日本のビジネス・スタイルは、足元から進化していくでしょうか。
スーツを着るビジネスマンの保守的な足元意識
スニーカー通勤を牽引したのは、実はお役所。2017年10月に「FUN+WALK PROJECT(歩きやすい通勤プロジェクト)」の一環として、スポーツ庁がスニーカー通勤を提唱したのが、ことの始まりでした。その時点での意識を、「週に4~5日はスーツを着用する」20代から50代の男性を対象に調べたアンケートがあります(調査元は、靴の輸入・販売を手がけるロックポート ジャパン株式会社)。
当時、「スニーカー通勤したいですか」の問いに、「とてもしたい」と答えたのは2割以上。「したい」「どちらかというとしたい」を足すと、5割強になります。「どちらとも言えない」様子見族が3割ほどいて、「どちらかというとしたくない」から「絶対にしたくない」の拒否派は2割弱でした。
一方で、スニーカー通勤が可能だった会社は全国で4割以上(西日本は5割近く)。それでも、実際には「ビジネスシューズを週に4日以上履く」人が96.8%。「スニーカー通勤をしたくて、会社も禁止してはいないのに、履いていない」のが、ほとんどのビジネスマンでした。
職場で許容されているのにスニーカー通勤をしたくないと回答した人の理由は、1位「スニーカーはスーツに合わない(51.4%)」、2位「ビジネスマンとして革靴を履くことはマナーだ(37.1%)」。この強固な思いは、どのようにくつがえされてきたのでしょうか。
「健康」は東京オリンピックが次代に残すレガシー
2018年3月、鈴木大地スポーツ庁長官を中心とする「FUN+WALK PROJECT」のキックオフイベントが時事通信ホールで開催されました。登壇した関係者は、もちろん全員がスニーカーで足元を固め、「国民の健康こそ、2020年東京五輪大会のもたらす大きなレガシーである」と、意識の切り替えを促しました。健康面でいうと、「20代~50代のビジネス世代は、60代以上よりスポーツ実施率(週に一度以上スポーツをしている割合)が低い」という驚きの結果も発表され、「このままではヤバいかも」と密かに運動不足を懸念していた層を直撃します。
モデルによる『FUN+WALK STYLE』は、こうすればスニーカーでもビジネス現場にマッチすると提案するファッションショー。「フォーマルスタイル」と「カジュアルスタイル」の男女それぞれ2組の着こなしが紹介された後は、2017年から福井県庁が取り組んできた『スニーカービズ』の実績が伝えられました。一般企業からは、アサヒ飲料、アシックスジャパン、高島屋、ドコモ・ヘルスケアの事例が続々と紹介されました。
この日登壇したのは人ばかりではなく、ご当地キャラの数々も。1日の歩数にあわせて、これらのキャラがどんどん変身したり、1千歩ごとにたまるポイントが割引クーポンに交換できたりする「FUN+WALK」アプリ発表のためでした。アプリはGoogle Play、App Storeからスマホにインストールできるようになっています。
スニーカー就活もパンプス追放も?
こうした動きを受け、企業が自ら後押しする動きも活発化しています。ロート製薬は、2019年1月から1日の歩数などに応じて社内通貨「ARUCO(アルコ)」がもらえる仕組みを導入し、会社が運営するレストランでの利用や休暇の取得ができるようになりました。住友生命保険やアサヒ飲料も、スニーカー通勤を「解禁」していることが報じられています。
最近、目を引いたのは、日航が新たに設立したLCCがユニホームに白と黒のスニーカーを取り入れたというニュース。2020年夏に就航する「ZIPAIR(ジップエア) Tokyo」の国際線で導入される予定で、動きやすさを重視した制服にあわせて採用されました。
さらにジョンソン・エンド・ジョンソンが、スニーカーでの就職活動を解禁し、他社への波及を呼びかけています。絆創膏ブランド「バンドエイド キズパワーパッド」のキャンペーンとして「#スニ活」を提案したのです。「靴ずれが減ると、バンドエイドは売れなくなるかもしれませんが…」と、あえて提唱した姿勢に賞賛が寄せられています。
折から、SNSでは女性の「仕事でヒールやパンプスを履かなきゃいけないという風習をなくしたい」とグラビアアイドル・女優・ライターの石川優実さんが「#KuToo」のハッシュタグを発信。2019年6月には18,856人の署名とともに要望書を厚生労働省に提出しています。
これならOK!「スーツに合うスニーカー」
さまざまな広がりを見せる「スニーカー通勤」ですが、メーカー側では通勤を意識したモデルを増やしています。はるやま商事では、スーツにも合う「レザースニーカー」を開発するとともに、アシックスの「テクシーリュクス」シリーズを販売しています。セレクトショップのユナイテッドアローズが発売する「ドレススニーカー」やコールハーンの「グランドエボリューション」などは、正面から見ると、とてもスニーカーとは思えない仕上がりです。さらにナイキ、ニューバランス、アディダスといったトップ・メーカーでは、ブランド公式のカスタムサービス(オーダーメイド)を始めており、スーツ用にカスタマイズした一足を発注する手もあります。
相手あってのビジネスですから、不快感や違和感を与えないマッチングが何より求められます。売れ筋が黒やネイビー、ブラウンなどの落ち着いた色合いなのも納得。日本のビジネス・スタイルは、足元から進化していくでしょうか。
<参考サイト>
・FUN+WALK PROJECT
https://funpluswalk.jp/
・読売新聞:ビジネスにスニーカー、違和感なく履きこなすには
https://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/20180411-OYT8T50080/
・朝日新聞 :スニーカー通勤、あなたもいかが 大企業が続々「解禁」
https://www.asahi.com/articles/ASM285FLCM28PLFA00Z.html
・朝日新聞 :日航新LCC、制服にスニーカー採用 動きやすさを重視
https://www.asahi.com/articles/ASM4C4FGBM4CULFA00F.html
・BAND-AID:「#スニ活」キャンペーン
https://www.band-aid.jp/campaign/sunikatsu
・FUN+WALK PROJECT
https://funpluswalk.jp/
・読売新聞:ビジネスにスニーカー、違和感なく履きこなすには
https://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/20180411-OYT8T50080/
・朝日新聞 :スニーカー通勤、あなたもいかが 大企業が続々「解禁」
https://www.asahi.com/articles/ASM285FLCM28PLFA00Z.html
・朝日新聞 :日航新LCC、制服にスニーカー採用 動きやすさを重視
https://www.asahi.com/articles/ASM4C4FGBM4CULFA00F.html
・BAND-AID:「#スニ活」キャンペーン
https://www.band-aid.jp/campaign/sunikatsu
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