社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2019.08.28

日本に来る「中国人観光客」の特徴とは?

 外国人観光客と一口に言っても、国・地域によって訪日客数も趣向も大きく異なります。訪日客数が最も多い国はだいたい想定がつくと思います。そう、中国です。中国は日本の観光業に大きな利益をもたらしています。

 では、中国人観光客にはどのような特徴があるのか。そもそも、年間どれぐらいの数の人が日本に訪れているのか。最近の中国人観光客事情をお伝えします。

1年間でどのくらいの中国人が訪日するのか

 今や観光客といえば中国人というくらいに観光地のいたるところで中国人観光客を見かけます。実際のところ、中国から年間どれくらいの人が日本を訪れているのか。日本政府観光局の統計によると、2018年はおよそ838万人。ダントツの1位です。2位の韓国は750万人程、3位の台湾は475万人程でした。

 欧米で最も多いのがアメリカで152万人程、オーストラリアが55万人程、イギリスが33万人程、ロシアは9万人程です。これらの国々と比較してみても、訪日する中国人がどれほど多いのか、一目瞭然ですね。

中国人の買物代はなんと〇〇万円

 中国人といえば「爆買い」です。日本政府観光局が調査した「訪日外国人1人当たり旅行支出」を見てみると、やはり中国人の買物代は飛び抜けていました。

 外国人観光客の「1人当たり旅行支出」の平均額は15万円程です。中国人は22万円ほどで、平均額を大きく上回っていますが、スペインは23万円程、オーストラリアは24万円程なので、中国の「1人当たり旅行支出」がズバ抜けているというわけではありません。

 すごいのはやはり「買物代」です。外国人観光客の買物代の1人当たりの平均支出額が5万円程なのに対して、中国人はなんと11万円。2位のベトナムが6万円ほどなので、倍くらいの差をつけています。この突出具合は中国ならではの特徴と言っていいでしょう。

中国人が満足した購入商品の1位とは

 中国人の買物代が圧倒的なのは分かりました。気になるのはその内訳です。購入した品目の1位は「化粧品・香水」でした。購入率79.5パーセントで、購入者単価は5万円程。2位が「お菓子」。購入率70.1パーセントで、購入者単価は1万円程。3位は「医薬品」で、購入率はガクンと落ちて49パーセント。購入者単価は2万3千円程でした。

 「満足した購入商品」という質問項目でも「化粧品・香水」が独走し、2位が「菓子類」、さらに「医薬品」が続きます。中国人の爆買いといえば家電を第一に思い浮かべますが、観光庁の調査結果からは「化粧品・香水」の需要がとても高いことがわかります。

日本に求めているのは安心・安全

 日本貿易振興機構によると、中国における化粧品の輸入額の2018年の1位は韓国、2位が日本でした。韓国の化粧品は価格面で優位性が高く、中国国内では韓国ドラマなどのコンテンツが普及しており、中国人にとって韓国ブランドは身近な存在になっています。ただし、日本勢も奮闘し、最近ではトップの韓国との差を縮め、2019年1~5月期はトップに躍りでました。

 日本の化粧品が支持される理由は、中国人の肌質と相性が良いことに加えて、「安心・安全なイメージ」があるからだそうです。「中国の消費者の日本製品等意識調査」(2018年12月)では、日本は「安心・安全なイメージのある国」、そして「購入したいと思う製品・サービスの原産国」の「化粧品・美容」のカテゴリーで1位を獲得しました。「安心・安全なイメージ」を武器に大きくシェアを拡大しつつあります。

<参考サイト>
・月別・年別統計データ(訪日外国人・出国日本人)│日本政府観光局
https://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/visitor_trends/
・訪日外国人消費動向調査│観光庁
http://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/syouhityousa.html
・2018 年における訪日外国人の消費動向【国籍・地域別】│観光庁
http://www.mlit.go.jp/common/001285945.pdf
・市場の拡大とともに競争が激化する中国の化粧品市場│日本貿易振興機構(ジェトロ)
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2019/92392a8c5ada1cbb.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
雑学から一段上の「大人の教養」はいかがですか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み

なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み

何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み

なぜ「何回説明しても伝わらない」という現象は起こるのか。対人コミュニケーションにおいて誰もが経験する理解や認識の行き違いだが、私たちは同じ言語を使っているのになぜすれ違うのか。この謎について、ベストセラー『「何...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/02
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
2

「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方

「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方

戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題

保守的な軍国化によって、内戦への機運が高まっているアメリカだが、MAGAと極左という対立図式は表面的なものにすぎない。その根本に横たわっているのは白人とユダヤ人という人種の対立であり、それはカーク暗殺事件によって露...
収録日:2025/09/24
追加日:2025/11/06
東秀敏
米国大統領制兼議会制研究所(CSPC)上級フェロー
3

「境地は裏切らない」とは?禅の体験から見えてきたもの

「境地は裏切らない」とは?禅の体験から見えてきたもの

徳と仏教の人生論(6)物事の本質を見極めるために

10年の修行で自我を手放し宇宙と一体化する境地に達すると、自分中心からホリスティックな視点に変わり、物事の表と裏の共通点が見えてきて、その本質がつかめるという田口氏。人生は常に新たな命題を解き明かし続ける旅である...
収録日:2025/05/21
追加日:2025/11/08
4

なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る

なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る

学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち

たかが「1」、されど「1」――今、数の意味が理解できない子どもがたくさんいるという。そもそも私たちは、「1」という概念を、いつ、どのように理解していったのか。あらためて考え出すと不思議な、言葉という抽象概念の習得プロ...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/10/06
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
5

40代前半に訪れる「中年の危機」、鍵は「人生の成長戦略」

40代前半に訪れる「中年の危機」、鍵は「人生の成長戦略」

人生100年時代の「ライフシフト概論」(3)キャリアの危機〈下〉

40代前半で訪れる「中年の危機」を脱するためには、会社中心の人生から「未来は自分で作る」という自分を中心とした人生への意識転換が必要だ。そのためのカギは、「Will・Can・Create」の3つから自分の「人生の成長戦略」を考...
収録日:2022/06/15
追加日:2022/09/24
徳岡晃一郎
株式会社ライフシフト 代表取締役会長CEO 多摩大学大学院名誉教授・特任教授