テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2019.10.05

上場企業1,841社の「平均年収」とは?

 2018年決算の上場企業平均年間給与額が、東京商工リサーチから発表されています。2591社の平均年間給与は606万2,000円(中央値593万5,000円)で、前年より7万円(1.1%)増加。民間企業平均の432万2,000円(国税庁調べ。平成29年分)と、2017年の段階で167万円の差があります。

8年連続増加の好成績だが、格差は広がる?

 実際、上場企業の平均年間給与は、2011年以来8年連続で伸びつづけています。業績好調を背景に、上場企業の平均年間給与は上昇をたどっているものの、中小企業は人材確保による人件費アップを避けられず、規模による収益格差は広がっていると、東京商工リサーチでは分析しています。

2011年 563.7万円
2012年 570.1万円
2013年 571.6万円
2014年 579.1万円
2015年 589.3万円
2016年 595.5万円
2017年 599.2万円
2018年 606.2万円

 経団連の集計によると、今春の大手企業(売上高500億円以上の東証1部114社)の賃上げ率は2.43%で、6年連続の2%超。景気回復とともに政府の賃上げ要請を受けての実績ですが、3年ぶりに前年を下回ったことにも注目。足元では景気の先行き不透明感が強まっており、賃金引き上げに慎重な企業もありました。

業種別で、やっぱり強い/弱いのは?

 業種別にみると、建設業(718.7万円、前年比1.6%増)が4年連続でトップ、また不動産業(696.4万円)も大きく持ち直しています。人手不足を踏まえて人材確保のため、多くの業種で待遇改善が進んでいるのも、昨年度の特徴でした。

<業種/平均年間給与/前年比>
建設業/718.7万円/1.6%
水産・農林・鉱業/693.6万円/▼0.14%
金融・保険業/692.7万円/▼0.19%
不動産業/696.4万円/3.1%
電気・ガス業/672.5万円/▼0.12%
運輸・情報通信業/659.5万円/0.7%
卸売業/623.5万円/0.18%
製造業/629.2万円/1.1%
サービス業/540.5万円/0.28%
小売業/473.8万円/0.5%

 伸び率の最高は、唯一3%台の増収となった不動産業。民放ドラマでも描かれたように女性が増えて、以前よりもソフトなイメージになったのが幸いしたか、都市部を中心に活発な市況が業績に反映したものです。

 卸売業(1.8%増)、建設業(1.6%増)、製造業(1.1%増)も好調。10業種中マイナス成長となったのは、金融・保険業(▼0.19%)、水産・農林・鉱業(▼0.14%)、電気・ガス業(▼0.12%)の3業種のみ。減少率の最も高い金融・保険業は2年連続で前年を下回り、金融機関の収益環境の深刻さを浮き彫りにしています。

グローバル企業と純国産企業が肩を並べる?

 個別企業の平均年間給与トップは、GCA(株)の2,063.3万円。日米欧をまたぐグローバルM&Aのアドバイザリー・ファームですが、前年の1,559万円より大幅に増加し、唯一2,000万円台の数字を出しました。ベスト10では、不動産業や大手総合商社の躍進が目立ちます。

<会社名/平均年間給与/業種/所在地>
GCA/2,063.3万円/サービス業/東京都
ヒューリック/1,636万円/不動産業/東京都
三菱商事/1,540.9万円/卸売業/東京都
伊藤忠商事/1,460.9万円/卸売業/東京都
三井物産/1,419.9万円/卸売業/東京都
日本商業開発/1,368.5万円/不動産業/大阪府
ファナック/1,347.4万円/製造業/山梨県
丸紅/1,322万円/卸売業/東京都
日本M&Aセンター/1,319.5万円/サービス業/東京都
住友商事/1,304.1万円/卸売業/東京都

 ベスト10が民間平均の3倍以上の年収を確保しているのは例年通り。そんなうらやましい上位グループのうち、地方に本社を置く企業として、不動産業の日本商業開発が顔を出してきました。独自の不動産投資手法「JINUSHIビジネス」を基本戦略に、大阪から海外(米国)展開もスタートしています。また、製造業で唯一、しかも連続でランクインしているのが山梨県のファナック(株)。工場自動化設備に特化したメーカーとして、工作機械や産業用ロボットで世界をリードしています。本社・研究所・工場などの設備を富士山直下に置いていることでも有名です。

 令和改元で景気復活を願う層と、いよいよ曲がり角の到来と予測する層。オリンピックに向けて、景気と年収増は加速してくれるのでしょうか。

<参考サイト>
・東京商工リサーチ:2018年決算 「上場企業2,591社の平均年間給与」調査
https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20190527_01.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,100本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

55年体制は民主主義的で、野党もブレーキ役に担っていた

55年体制は民主主義的で、野党もブレーキ役に担っていた

55年体制と2012年体制(1)質的な違いと野党がなすべきこと

戦後の日本の自民党一党支配体制は、現在の安倍政権における自民党一党支配と比べて、何がどのように違うのか。「55年体制」と「2012年体制」の違いと、民主党をはじめ現在の野党がなすべきことについて、ジェラルド・カ...
収録日:2014/11/18
追加日:2014/12/09
2

5Gはなぜワールドワイドで推進されていったのか

5Gはなぜワールドワイドで推進されていったのか

5Gとローカル5G(1)5G推進の背景

第5世代移動通信システムである5Gが、日本でもいよいよ導入される。世界中で5Gが導入されている背景には、2020年代に訪れるというデータ容量の爆発的な増大に伴う、移動通信システムの刷新がある。5Gにより、高精細動画のような...
収録日:2019/11/20
追加日:2019/12/01
中尾彰宏
東京大学 大学院工学系研究科 教授
3

マスコミは本来、与野党機能を果たすべき

マスコミは本来、与野党機能を果たすべき

マスコミと政治の距離~マスコミの使命と課題を考える

政治学者・曽根泰教氏が、マスコミと政治の距離を中心に、マスコミの使命と課題について論じる。日本の新聞は各社それぞれの立場をとっており、その報道の基本姿勢は「客観報道」である。公的異議申し立てを前提とする中立的報...
収録日:2015/05/25
追加日:2015/06/29
曽根泰教
慶應義塾大学名誉教授
4

BREXITのEU首脳会議での膠着

BREXITのEU首脳会議での膠着

BREXITの経緯と課題(6)EU首脳会議における膠着

2018年10月に行われたEU首脳会議について解説する。北アイルランドの国境問題をめぐって、解決案をイギリスが見つけられなければ、北アイルランドのみ関税同盟に残す案が浮上するも、メイ首相や強硬離脱派はこれに反発している...
収録日:2018/12/04
追加日:2019/03/16
島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
5

健康経営とは何か?取り組み方とメリット

健康経営とは何か?取り組み方とメリット

健康経営とは何か~その取り組みと期待される役割~

近年、企業における健康経営®の重要性が高まっている。少子高齢化による労働人口の減少が見込まれる中、労働力の確保と、生産性の向上は企業にとって最重要事項である。政府主導で進められている健康経営とは何か。それが提唱さ...
収録日:2021/07/29
追加日:2021/09/21
阿久津聡
一橋大学大学院経営管理研究科国際企業戦略専攻教授