社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
ゲノムとは何か?遺伝学的にみた「人類みな兄弟」の真実
2000年6月にヒトゲノムの解読計画がほぼ終わったと発表され、話題となりました。このことにより遺伝子の研究は一層進化し、さまざまな病気の原因解明や新しい薬の開発が進んでいるのですから、今や「ゲノム」は私たち人類の明るい未来を象徴するキーワードの一つとなっているといえるでしょう。
しかし、よく耳にするようにはなったものの、いざ「ゲノム」って何?と聞かれると答えに窮する人もいるのではないでしょうか。そもそもゲノムとは何か、また、解析研究の進んでいるヒトゲノムとはどういったものなのでしょう。
私たちの体は細胞で成り立っていますが、その細胞には核があり、その核の中にあるのが染色体です。この染色体の中に、デオキシリボ核酸という物質(いわゆるDNA)が存在していて、そこにタンパク質の設計図が書かれている部分が遺伝子です。さらに、その遺伝子の情報とタンパク質以外の情報をすべてひっくるめた遺伝情報の全体を「ゲノム」と呼んでいるのです。
そもそもゲノムには染色体に書き込まれた遺伝情報がすべて反映されているわけですから、ヒトゲノムの情報量は膨大です。その膨大な情報量を持った32億個のゲノムの0.1パーセントであるならば、割合は少なくても数にすれば数百万個になるわけです。そして、この数百万個が持つ情報の差異が、たとえば、個々人の「太りやすい、太りにくい」「ある病気にかかりやすい、かかりにくい」という違いに影響している可能性があるので、やはりゲノム研究は人類の大いなる関心の対象だと言えるでしょう。
たとえば、もし曽祖父と曾祖母がいとこ同士で結婚した場合、その父親か母親のどちらかが兄弟だったということになります。するとその一代前は同一の両親ということになり、こうしたことがあちこちで何代にも渡って繰り返されれば、祖先は自ずと重なってきます。逆にこうしたことがなければ、祖先は膨大に膨れ上がって、当時の人口をはるかに超える数のヒトがいたことになってしまいます。しかし、そうはなっていません。つまり、これは先述した重なり現象によるもので、実は人類に限らず有性生殖、すなわち父親と母親、雄と雌から生まれる生物全般に言えることなのです。
このように生物学的にみると、私たち人類はさかのぼれば皆、親戚と言えるわけで、また、遺伝学上から見ても前述したようにヒトとチンパンジーはゲノムの99パーセントを共有しており、これもまた、「さかのぼれば親戚同士」の証です。さらに言えば、チンパンジーだけでなく多くの生物がヒトと共通のゲノムを有するため、どんどんさかのぼれば「生物の大きな共通性を生みだす源にたどりつく」と斉藤氏は言います。
かつて、チャールズ・ダーウィンはさまざまな生物が共通祖先から枝分かれを繰り返しながら進化してきたとする「生命の樹」仮説を打ち立てましたが、どうやら遺伝学上から見ても「人類、生きとし生けるもの皆、兄弟」という言葉は、ある真実を告げているように思えます。
しかし、よく耳にするようにはなったものの、いざ「ゲノム」って何?と聞かれると答えに窮する人もいるのではないでしょうか。そもそもゲノムとは何か、また、解析研究の進んでいるヒトゲノムとはどういったものなのでしょう。
そもそもゲノムとは?
ゲノムは遺伝子とほぼ同じと思ってしまいがちですが、実はゲノムという言葉は、遺伝子(gene)、及び染色体(chromosome)を意味する2つのドイツ語を合成してできた言葉です。ヒトゲノムは文字どおりヒトが持っているゲノムということになります。私たちの体は細胞で成り立っていますが、その細胞には核があり、その核の中にあるのが染色体です。この染色体の中に、デオキシリボ核酸という物質(いわゆるDNA)が存在していて、そこにタンパク質の設計図が書かれている部分が遺伝子です。さらに、その遺伝子の情報とタンパク質以外の情報をすべてひっくるめた遺伝情報の全体を「ゲノム」と呼んでいるのです。
ヒトゲノムの99.9パーセントが共通部分
国立遺伝学研究所集団遺伝研究室教授で遺伝学者の斎藤成也氏によれば、ヒトゲノムは約32億個あるといわれ、その核の部分(核ゲノム)のちょっとした違い(SNP:Single Nucleotide Polymorphism)が人間の個々人の差となっているのですが、この違いのある部分はゲノムのうちのわずか0.1パーセント。つまり、99.9パーセント以上、私たちは共通のゲノムを持っているということになるのです。それだけでなく、チンパンジーとも99パーセント共通のゲノムを持っていることが分かっています。そもそもゲノムには染色体に書き込まれた遺伝情報がすべて反映されているわけですから、ヒトゲノムの情報量は膨大です。その膨大な情報量を持った32億個のゲノムの0.1パーセントであるならば、割合は少なくても数にすれば数百万個になるわけです。そして、この数百万個が持つ情報の差異が、たとえば、個々人の「太りやすい、太りにくい」「ある病気にかかりやすい、かかりにくい」という違いに影響している可能性があるので、やはりゲノム研究は人類の大いなる関心の対象だと言えるでしょう。
赤の他人もさかのぼれば皆、親戚!?
ところで、このようにわれわれ人類は遺伝子の観点から見て「ほとんど同じ」なのですが、生物学的に見ても、さかのぼれば赤の他人ではなく皆、親戚同士になるのだそうです。たとえば、もし曽祖父と曾祖母がいとこ同士で結婚した場合、その父親か母親のどちらかが兄弟だったということになります。するとその一代前は同一の両親ということになり、こうしたことがあちこちで何代にも渡って繰り返されれば、祖先は自ずと重なってきます。逆にこうしたことがなければ、祖先は膨大に膨れ上がって、当時の人口をはるかに超える数のヒトがいたことになってしまいます。しかし、そうはなっていません。つまり、これは先述した重なり現象によるもので、実は人類に限らず有性生殖、すなわち父親と母親、雄と雌から生まれる生物全般に言えることなのです。
このように生物学的にみると、私たち人類はさかのぼれば皆、親戚と言えるわけで、また、遺伝学上から見ても前述したようにヒトとチンパンジーはゲノムの99パーセントを共有しており、これもまた、「さかのぼれば親戚同士」の証です。さらに言えば、チンパンジーだけでなく多くの生物がヒトと共通のゲノムを有するため、どんどんさかのぼれば「生物の大きな共通性を生みだす源にたどりつく」と斉藤氏は言います。
かつて、チャールズ・ダーウィンはさまざまな生物が共通祖先から枝分かれを繰り返しながら進化してきたとする「生命の樹」仮説を打ち立てましたが、どうやら遺伝学上から見ても「人類、生きとし生けるもの皆、兄弟」という言葉は、ある真実を告げているように思えます。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。
『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
叩き潰せ、正しいのは自分だけ…ロイ・コーンの教えとは
[深掘り]世界を壊すトランプ関税(1)トランプ大統領の動機と思考
トランプ政権が発表した関税政策は、世界を大きな混乱に落とし込んでいる。はたして、トランプ大統領の「動機」や「思考」の淵源とはいかなるものなのか。そして世界はどうなってしまうのか。
島田晴雄先生には、...
島田晴雄先生には、...
収録日:2025/04/15
追加日:2025/04/25
共生への道…ジョン・ロールズが説く「合理性と道理性」
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(5)共存・共生のための理性
フェイクが含まれた情報や陰謀論が跋扈する一方、多様性が尊重されるようになり多元化する人々の価値観。そうした現代社会で、いかにして私たちはともに公共性を保って生きていけるのか。多様でありながらいかに共存・共生でき...
収録日:2024/09/11
追加日:2025/04/25
水にビジネスチャンス!?水道事業に官民連携の可能性
水から考える「持続可能」な未来(8)人材育成と水道事業の課題
日本企業の水資源に関するリスク開示の現状はどうなっているか。革新的な「超越人材」を生み育てるために必要な心構えとは何か。老朽化する水道インフラの更新について、海外のように日本も水道事業に民間資本が入る可能性はあ...
収録日:2024/09/14
追加日:2025/04/24
太陽系は銀河系の中で塵のように小さな存在でしかない
ブラックホールとは何か(1)私たちが住む銀河系
銀河の中心にある巨大なブラックホールは一体何なのか。それを考えるためには、宇宙にある数多の銀河の構造について正しく理解する必要がある。私たちが住むこの太陽系は、天の川銀河という巨大な銀河のごくごく小さな一部分で...
収録日:2018/10/31
追加日:2019/03/26
実は考古学者と人類学者で違う!? 渡来系弥生人の定義
弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化(6)弥生人のDNA
後の二重構造説の見直しにつながっていく「ヤポネシアゲノムプロジェクト」は、これまで手薄だった弥生人のDNA分析によって、古代人の分布について新たな見方を示した。そして、鳥取県にある青谷上寺地遺跡の調査では、現代日本...
収録日:2024/07/29
追加日:2025/04/23