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DATE/ 2019.11.25

いつから「水」は買うようになったのか?

水も買うのが当然の時代に

 みなさんは水に関心をお持ちでしょうか。近年、スーパーやコンビニのドリンクコーナーには必ず陳列されていますし、レストランでもメニューに載っていることが多いので、自然と注意を向ける機会も多いですよね。

 お店で見かける瓶やペットボトルに詰められた飲料水は、農林水産省の品質表示ガイドラインによって「ミネラルウォーター類(容器入り飲用水)」と呼ばれ、次の4種類に分類されています。

・ナチュラルウォーター:特定の水源から採水された地下水が原水で、沈殿・濾過・加熱殺菌以外の処理を行っていないもの。
・ナチュラルミネラルウォーター:ナチュラルウォーターのうち、地層中の無機塩類が溶解したもの。二酸化炭素が溶解して発泡性を持つものを含む。
・ミネラルウォーター:ナチュラルミネラルウォーターが原水で、品質安定のためにミネラルの調整や複数のナチュラルウォーターの混合をしているもの。
・ボトルドウォーター:上記3種以外の飲用水。

 ミネラルウォーターと聞いてまずイメージする水は、実際にはナチュラルミネラルウォーターかもしれませんね。今回はわかりやすく一般的な「ミネラルウォーター」の呼び方で統一します。

 ミネラルウォーターはその名の通りにミネラルを含むものもあるほか、異物が少ない澄んだ水も多いことから、健康意識が高い人を中心に人気があります。サントリーの調査では、全体の72.4%が「ミネラルウォーターを買うのは普通のこと」と回答しています。

 しかし、かつては水道水を飲むのが一般的でした。日本人はいつ頃からなぜミネラルウォーターを買うようになったのでしょうか。

水を買うようになったのはいつ頃から?

 日本のミネラルウォーターの歴史は意外と古く、原型は明治中期の1880年代に誕生しました。この頃は主に外国人向けとして横浜や神戸の居留地で販売されたといいます。1884(明治17)年には兵庫県川西市の平野鉱泉が「理想的な鉱泉」と認められて「平野水」として販売されました。この平野水が、現在の三ツ矢サイダーの源流です。

 日本人にも一般的になったのは、昭和中期の1970年代前半頃。ウィスキーの水割りが流行したことから、業務用のミネラルウォーターがニッカウヰスキーやサントリーから次々発売されました。そして、1983(昭和58)年にハウス食品から「六甲のおいしい水」が発売されると、家庭でもミネラルウォーターを飲むことが広まったといわれます。

 1990年代に入るとマンションの貯水タンクの汚染が報道され、安全で安心できる水としてミネラルウォーターの需要はさらに高まりました。また、1996(平成8)年には国産小容量ペットボトルの販売が解禁され、より気軽に手に取りやすくなったミネラルウォーターは順調に消費量を伸ばします。

 消費者の意識が大きく変わったのは、2011(平成23)年の東日本大震災でしょう。これを機にミネラルウォーターを災害時の飲料水として備蓄する人が急増しました。先日の巨大台風の際にも、ミネラルウォーターを備蓄した方は多いのではないでしょうか。こうして、ミネラルウォーターのひとりあたりの年間消費量は2004年に12.7リットルだった数値が2018年には31.7リットルと、実に約2.4倍にも増加したのです。

ミネラルウォーター市場の今後の課題

 ミネラルウォーター市場は着実に成長を続けており、日本ミネラルウォーター協会の概算では、国産品と輸入品をあわせて実に約1000商品が流通していると推測されています。このような規模の広がりは、今後も続くのでしょうか。

 ミネラルウォーターの売り上げが伸びた要因のひとつには、猛暑や相次ぐ自然災害が上げられます。特に2018年は記録的な猛暑が続いたうえに大阪や北海道で大きな地震があったことから、急激に販売数を伸ばしました。しかし、災害はいつ起きるかわからないもの。偶然の要素が強いため、備蓄の需要が一定数あるとしても成長を伸ばす要因にはなりにくいと考えられます。

 またミネラルウォーターは天然の水を採取するという特性上、供給量に限界があります。このため、今後も売上を伸ばすには高まる需要に応えられるだけの供給体制を整えられるかが鍵となるでしょう。この問題を解決するため、サントリー食品インターナショナルは2020年に新しい生産拠点を増設すると発表しており、他社にも同様の動きが見られることから一層の充実が期待されます。

 今後、より重要になるのは、消費者の健康志向とエコ意識にマッチする各商品のブランディングと考えられます。ミネラルウォーターはミネラル成分を強調することで健康志向に訴えられるだけでなく、採水地や容器を通じて企業の環境に対する姿勢を示すこともできる商品です。商品や企業の「物語」をさらに演出することで、ミネラルウォーターの市場は拡大する可能性が高まるでしょう。

<参考サイト>
・一般社団法人日本ミネラルウォーター協会 Q&A
Q-6)ミネラルウォーターが日本で造られるようになったのはいつ頃からですか。
Q-11)販売されているミネラルウォーターはどのくらいありますか。
https://minekyo.net/publics/index/7/
・統計資料 > ミネラルウォーターの1人当り消費量の推移
https://minekyo.net/publics/index/5/
・サントリー食品インターナショナル サントリーウォーターレポート
https://www.suntory.co.jp/softdrink/news/pr/article/SBF0905.html#sankoh
・一般社団法人全国清涼飲料連合会 ミネラルウォーターの品質表示ガイドライン
http://www.j-sda.or.jp/manufacturing/regulations_and_guidelines02_mineralwater.php
・三ツ矢サイダー 三ツ矢豆知識
https://www.asahiinryo.co.jp/mitsuya-cider/sp/academy/
・食品産業新聞社 ミネラルウォーター需要 相次ぐ災害や猛暑で拡大、6年連続で市場成長
https://www.ssnp.co.jp/news/beverage/2019/04/2019-0425-1741-14.html
(10MTV編集部)

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