社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2020.01.25

次世代ネットワーク「5G」で何が変わるのか?

 2020年はオリンピックイヤーですが、日本において通称「5G」、第5世代移動通信サービスがスタートする年でもあります。世界レベルでは、2019年にサービスインしている国もあることから、日本は少し遅れてのスタートとなります。

 ニュースなどでよく耳にする5Gですが、何が変わるのか、何ができるのか、どれだけ理解しているでしょうか。

5Gとは

 「5G」のGとは「Generation」の頭文字であり、携帯電話などの通信に用いられる5世代目の通信規格になります。

 これまで、10年周期で通信規格がアップデートされ、1980年代に登場した第1世代のアナログ回線から始まり、1990年代にはデジタル回線の2G、2000年代の3G、2010年代の4Gと世代更新とともに通信速度がUPし、ゲームや動画などの大容量データのコンテンツもスマホだけでストレス無く楽しめるようになりました。

5Gの3つの特長

 では、5世代目の通信規格は、速度を含めて、どんな特徴があるのでしょうか?

 第一の特徴は「高速性」です。

 現行の通信規格・4Gは、受信時「最大1576Mbps」の速度です。実効値としては、数十~百数十Mbps程度になります。5Gの規格上の最大速度は、「20Gbps=2万Mbps」、桁違いの規格速度といってよいでしょう。すでにサービスを開始している他国での実効値が500Mbps~700Mbpsといった速度が確認されています。この数値だけでも、4Gの数倍の速度であることから、家庭などに引かれている光ファイバー回線と同等のパフォーマンスが移動通信サービスで実現することになります。

 第二の特長は「低遅延性」です。

 インターネットを介しての処理は、通信速度と距離、インフラの性能も関係して、応答に遅れ=遅延が発生します。固定回線に比べ、携帯電話回線などの移動通信は、処理の関係から遅延が大きく、4G規格で、十数ミリ秒、そうでない場合には百数十ミリ秒の遅延が発生します。5Gでは、この遅延が大幅に短くなります。理論上「1ミリ秒=1000分の1秒」になるため、遅延はかなり感じにくくなるでしょう。遅延があることで実現が難しかった、リアルタイムに近い通信も可能になるはずです。

 第三の特長は「多数同時接続性」です。

 初詣や花火大会など、多くの人が集まるイベントでは携帯がつながりにくく感じた経験は誰しもあるのではないでしょうか。それは、携帯電話基地局に同時多数接続の限界があるからです。5Gでは、100万件の同時接続が可能になります。これは、4Gの30~40倍のパフォーマンスとなり、これまでの30倍の混雑に耐えられることから、「つながりにくさ」の問題はかなりクリアされることが期待できます。

5Gの期待と現実

 4Gから画期的に性能がアップしている3つの特長から期待されることは、ビッグデータを活用したAI・IoTの領域で、サーバーから即応した情報処理にあります。日常世界に敷設された多様なセンサーからの情報をリアルタイムに近い感覚で分析処理が可能になります。具体的には、光回線に依存しないロケーションでの、画像認証などID管理、自動運転支援、遠隔地医療支援、セキュリティ強化への貢献です。

 これまでに実現しているサービスがより充実すること以上に期待されるのは、これまでにないサービスやビジネスが創出される可能性にあります。4Gでは実現できなかった超高精細映像の高速伝送は、VR・AR技術と連動してスポーツやゲームといったコンテンツサービスを大きく変えることでしょう。

 現段階で理想や期待で5Gを語ることは簡単ですが、現実的には個人が持てるスマホなどガジェット類や、パフォーマンスを最大化するためのインフラ基盤はまだまだこれからになります。実際には、わかりやすく体感できるエンタメ領域に先行して、目に見えない生活基盤の領域から徐々に革新的なサービスが実現していくことになりそうです。

<参考サイト>
・NTTdocomo:5Gでできること
https://www.nttdocomo.co.jp/special_contents/5g/
・KDDI loT:5Gとは?
https://iot.kddi.com/5g/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み

なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み

何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み

なぜ「何回説明しても伝わらない」という現象は起こるのか。対人コミュニケーションにおいて誰もが経験する理解や認識の行き違いだが、私たちは同じ言語を使っているのになぜすれ違うのか。この謎について、ベストセラー『「何...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/02
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
2

『孟子』に学ぶ、リーダーが過酷な境遇に追い込まれる意味

『孟子』に学ぶ、リーダーが過酷な境遇に追い込まれる意味

徳と仏教の人生論(5)陰陽と東洋思想を知ることの意味

宇宙や人生の本質について考察を深めていく今回の講義。前回に続く、宇宙がもう1つの宇宙のような存在をつくりたくて人間を創造したという話は非常に興味深い。陰陽(陰と陽)の両面を理解し、自然の摂理に根差した東洋思想を深...
収録日:2025/05/21
追加日:2025/11/07
3

「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方

「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方

戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題

保守的な軍国化によって、内戦への機運が高まっているアメリカだが、MAGAと極左という対立図式は表面的なものにすぎない。その根本に横たわっているのは白人とユダヤ人という人種の対立であり、それはカーク暗殺事件によって露...
収録日:2025/09/24
追加日:2025/11/06
東秀敏
米国大統領制兼議会制研究所(CSPC)上級フェロー
4

なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る

なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る

学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち

たかが「1」、されど「1」――今、数の意味が理解できない子どもがたくさんいるという。そもそも私たちは、「1」という概念を、いつ、どのように理解していったのか。あらためて考え出すと不思議な、言葉という抽象概念の習得プロ...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/10/06
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
5

成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ

成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ

経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本

組織のまとめ役として、どのように接すれば部下やメンバーの成長をサポートできるか。多くの人が直面するその課題に対して、「経験学習」に着目したアプローチが有効だと松尾氏はいう。では経験学習とは何か。個人、そして集団...
収録日:2025/06/27
追加日:2025/09/10
松尾睦
青山学院大学 経営学部経営学科 教授