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DATE/ 2024.06.09

「賞味期限」表示がないものとその理由

 みなさん、「食品ロス」を知っていますか。売れ残りや食べ残しなどの理由でまだ食べられるのに廃棄されてしまう食品のことです。

 消費者庁によると、日本における年間の食品ロスの量は「世界中で飢餓に苦しむ人々に向けた世界の食糧援助量(平成29年で年間約380万トン)の1.7倍に相当」するのだそうです。これは由々しき問題ですね。

 どうすれば食品ロスは減らせるのか。じつは身近なことで、今すぐにでもできることがあります。それは、「賞味期限」とは何かを知ることです。

「賞味期限」と「消費期限」はどう違う?

 「賞味期限」とは一言でいえば、「おいしく食べることができる期限」のことです。「賞味期限」と似た言葉に「消費期限」があります。「消費期限」は「その期限を過ぎたら食べない方が良い年月日の表示」です。

 今まで「賞味期限」が切れたという理由で廃棄してしまった経験はありませんか。「賞味期限」の場合、その期限を過ぎたからと言って食べられなくなるわけではありません。ただし、開封したら期限にかかわらず早めに食べるようにしましょう。

「賞味期限」はどのように決められている?

 ところで賞味期限がどのように決められているか知っていますか。設定するのは製品を製造しているメーカーです。3段階の工程を経て設定します。その3段階とは、少し小難しい名称になりますが、第1に「理化学検査」、第2に「微生物検査」、第3に「官能評価」です。

 「理化学検査」とは、ネバネバ具合を数値化した「粘度」や濁り具合を測定する「濁度」、「pH」、「糖度」など食品の性質や成分を検査する工程です。「微生物検査」は文字通り、大腸菌数など微生物を測定するもの。「官能評価」では実際に人が食べて評価します。

「賞味期限」表示がないものとのその理由は?

 賞味期限の表示は食品衛生法、JAS法の規定に基づいています。食べ物によっては、賞味期限の表示がないものもあることを知っていますか。その対象となるのは、アイスクリームやガム、塩や砂糖、アルコール類など。理由は単純で劣化しにくいからです。

 けれども、最近では食の安全への関心の高まりもあって、アイスクリームを販売する明治は「明治 エッセル スーパーカップ」シリーズに賞味期限を表示することを発表しています。

 このように賞味期限の知識があれば、賞味期限が切れた食品について「廃棄する」「廃棄しない」を各自選択できるようになります。つまり、食品ロスを減らすことにつながるのです。もちろん、期限内に消費することがベスト。繰り返しになりますが、開封したら期限にかかわらず早めに食べるようにしてください。

<参考サイト>
・加工食品の表示に関する共通Q&A(第2集:消費期限又は賞味期限について)│消費者庁
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/qa/common_02/
・明治、アイスに賞味期限表示 強い消費者ニーズに対応│日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54703330S0A120C2XQH000/
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